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少女小説と同時発売されたデビュー作

インタビュー
2019年02月14日
お菓子研究家として、スイーツやデザートのレシピ本のほか、料理やラッピング、エッセイ、絵本など、個性的かつバラエティ豊かな書籍を手掛けている福田里香さん。料理家の枠に収まらないそのユニークな活動履歴について、たっぷりお話を聞きました。 >>あの人気料理家も登場! これまでの記事はこちら

白馬の王子様は、姿を変えてやってくる

初めてレシピを提供した本が出版されてから、四半世紀が経った2018年秋。マンガ家の雲田はるこさんとの共著で、おやつを題材にしたコミック『R先生のおやつ』(文藝春秋)が発売に。ワクワクするような雲田さんのイラストとシズル感ある写真で紹介されたお菓子のレシピを、福田さんが担当したこの本は、見事クリーンヒット!
「雲田さんと組んだおかげで、達成できた数字。この歳になって、自分の名前が表紙にある本がマンガ本コーナーに置かれるなんて、感慨深いです。最初の本が文庫で、今になってみれば、むしろそれがラッキーだった。人と違う形で料理の世界に入ってよかったというのが、徐々にわかってきました。白馬の王子様と同じで、待っていてもチャンスは来ない。そして、王子様のように、思い描いていたような理想的な形でやってくるとは限りませんね」
現実主義なようでいてロマンチスト。少女のようなかわいらしさと大人の成熟さが同居する福田さん。このバランスを上手にとり続けることで、乙女心をくすぐる数々のお菓子や書籍が、生み出されてきたのだと感じました。

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撮影/平松唯加子 取材・文/江原裕子

福田里香(フクダ リカ)
菓子研究家。福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部芸能デザイン学科(現・空間演出デザイン学科)卒業後、老舗果物専門店・新宿高野に勤務。独立後は、書籍や雑誌を中心に、イベントなどでも幅広く活躍。最新刊は民藝運動にまつわる88のお菓子を紹介した『民芸お菓子』(Discover Japan)。名作マンガをイメージしたお菓子のレシピとエッセイを収めた『まんがキッチン』(アスペクト/文春文庫)、マンガやアニメ、映画、ドラマなどの食のシーンの法則を綴ったエッセイ集『ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50』(太田出版)など、著書多数。

2018年に出版した4冊のうちの3タイトルがこちら。左から、撮影スケジュールを決めず、主役の野菜が一番いい状態の日に料理し、福田さんがiPhoneで撮影まで手掛けたレシピ本『新しいサラダ』(KADOKAWA)。いちじく好きが高じて作った『いちじく好きのためのレシピ~ジャムにケーキ、焼き菓子、それからサラダやお肉と合わせる料理まで』(文化出版局)。インタビューでも紹介した、マンガ家の雲田はるこさんとの共著『R先生のおやつ』(文藝春秋)。

1994年に同時発売された初の著書、『お菓子の手帖』『果物の手帖』(ともにソニー・マガジンズ、現エムオン・エンタテインメント)は、思い出深いタイトル。「本ができた後、当時、東急百貨店東横店にあった(高級キッチン用品専門店の)ウィリアムズ・ソノマに売り込みに行ったんです。取り扱いにはサンフランシスコ本部の許可が必要で、見本誌を送ったらOKが出て、ウィリアムズ・ソノマの料理本と並んで店頭に置かれました。自分で行動するのは大事です」

20年以上愛用しているという「チェリーピッター」。ジャムなどの空き瓶にセットしてレバーを押すと、種だけが瓶の中に落ちる仕組み。果汁が飛び散ることなく使い勝手は抜群だそう。生のさくらんぼをたっぷり使う、チェリーパイやジャム作りの必需品です。