天然酵母のパン作りと世界各国のパン文化が学べる
ここ数年、女性に人気の習い事調査では必ずといっていいほどランキングするパン教室。需要の高まりと共に、パン教室の数も年々増え続けています。今回取材した「パンと家庭料理 パポタージュ」は、ホシノ天然酵母を使ったパン作りのレッスンをメインに、パンに合う世界各地の家庭料理も学べる教室です。主宰者の折口清美さんは、天然酵母パンのおいしさに衝撃を受け、料理教室やブーランジェリーが主催するパン教室やセミナーに多数通い、パンの知識と技術を広く深く習得したという生粋のパンマニア。現在は指導者の立場ですが、生徒だった頃の経験を踏まえた、学ぶ側にやさしいきめ細やかなレッスンが人気です。
食べたら間違いなくおいしいけれど作るのは難しそう、というイメージを持たれることの多い天然酵母パン。折口さんは実習形式を採用し、生徒たちに実際にパン生地に触れてもらいながら、レシピ本を読んだだけでは理解しづらい生地の正しいこね方や成形、発酵具合の見極めなどを、ていねいに指導していきます。
「せっかくの手ごねパンなので材料にはこだわっていますが、やりすぎてしまうと作り手がしんどくなるので、手が伸ばせる範囲で質の良いものを選び伝えることを心掛けています。今はいろいろな情報が入ってくる分、何を信じていいかわからなくなりがちなので、食材については常に意識してリサーチしています」
正しくポイントを押さえたうえでの反復練習が、上達への近道
この日は、トレンドのパンを学べる新メニュークラスで、ポーランドおよびその周辺諸国で親しまれ、ニューヨークで人気に火が付いたという話題のチョコレートパン「バブカ」を作りました。バブカはチョコレートペーストを生地に巻き込んで焼くローフ型のパンですが、折口さんのレシピでは甘さを抑えたうえにラムレーズンを加え、大人っぽい味に仕上げています。さらに、本来のバブカの作り方も口頭でしっかりと伝えながらも、折り込み成形によるアレンジバージョンでレッスンが行われました。
また、作ったパンに合わせる料理が学べるのも、折口さんのパン教室ならでは。この日は、旬の味わいを引き出す「秋鮭のコンフィ」「もち麦と紫キャベツのタブレ」「エリンギのポタージュスープ」の3品を作りました。試食のときに、スープやサラダを用意するパン教室は少なくありませんが、レシピを知って作り方が学べるのはうれしい限りです。
生地をこねるときの手の角度、発酵の時間と温度、打ち粉のタイミングや量など、計量から焼成まで実に多くの気を付けるべきポイントがあるパン作り。でも、見方を変えると、そこにしっかりと気を配れば、自宅でも専門店のようなおいしいパンが焼けるということ。参加した生徒の様子を見ていると、パン作りの経験値と完成度はほぼ比例していて、上手なパン作りには反復練習が大切だということがまさに、この日のレッスンを通じて実感できます。
常に進化し続けるカリキュラム
「わかりやすくてていねいなレッスン」を掲げている料理教室は多数ありますが、折口さんの指導技術は折り紙付き。難しいと思われがちな天然酵母のパン作りをきちんと習得してもらうため、レッスンは折口さんの目が届く少人数制で行われ、重要なポイントでは生徒ひとりひとりの手の動きや生地の状態をその都度チェック。自分のペースではなく生徒の動きに合わせてレッスンを進め、「ここは理解できましたか?」「何か質問があったら聞いてくださいね」と随時確認しています。
また、限られたレッスン時間内で効率よくパン作りが学べるようにと、仕込みに時間がかかる生地は事前に準備して成形や焼成などについて伝え、レッスンでは別の材料で生地作りを体験し、作った生地は持ち帰って自宅での復習用に。さらに試食用のパンは折口さんが別に焼いておき、生徒たちは目と舌でも目標とするパンの形を実感できます。パン教室歴8年で培ったノウハウを活かしたこれらのプログラムからは、パン講師としてのプロ意識と生徒への心の底からの配慮が見てとれます。
レッスンは、好きなときに受講できる単発レッスンが主体、また天然酵⺟のパン作りをじっくり学べる半年間の複数回コースがあり、さらに初心者向けの基本酵母のクラス、世界のパンと料理が学べるクラス、製法や⾷材にトレンドを取り⼊れたワンランク上のパンと料理のクラスなど、⽣徒の好みや製パンの習熟度、ライフスタイルなどによって、多彩な中から選べるようになっています。レッスン内容はもちろん、クラスの設定についても、時流や需要に合わせて定期的に見直している折口さん。これらのレッスンはすべて折口さんがひとりで指導しているため、どのクラスを選んだとしても同じ人から指導してもらえることも、生徒が安心して通い続けられる理由のひとつでしょう。
先生はこんな人
天然酵母パンのおいしさに目覚め、パン好きが高じて自らが教える立場へと転身した折口さん。パン好きであることは今も変わりませんが、パンをひとつのツールととらえ、パンを通じた出会いや人と触れ合う時間も含めて大切なものになっていると話します。
「パンの技術を伝えるのが絶対ですが、作り方を教えて終わりではなく、同時に皆さんに喜んでいただけるパンに合わせた料理のご紹介や、安全な食材のこと、和やかな空間作りのヒントなど、プラスアルファの部分も⼤事にしたいと思っています。教室では、私がたくさんの先生たちに教わってきたことを今度は人に伝えて喜んでもらう、そういった循環の橋渡しができるのも楽しいです。今でもパン教室や料理教室に通って勉強は続けていて、料理で得た技法をパンに取り入れたりもしています」
生徒の声
- 「半年コースを受けた後、今は気になる単発レッスンの日を選んで参加しています。平日は仕事で忙しいので、週末にレッスンに参加するのが癒しになっています。自宅でもパン作りをするようになりましたが、成形の力加減が難しく、先生のレシピなので味はおいしく再現できるのですが、反面、パンがうまく膨らないことも。やっぱり実際に生地に触って先生にコツを教えてもらえるから、教室はいいなぁと思います。今まで教わったパンはどれもおいしかったですが、ベーコンやたくさんのナッツを入れたアレンジパン・ド・ミが特にお気に入りです」(内島綾さん)
- 「もともとドライイーストの機械ごねパンを作っていたのですが、手ごねで自然なものを作りたいと思い、通うようになりました。もう市販のパンは買えないですね。我が家では毎週末、独立した子どもたちが私が焼いた1週間分のパンを取りに来るのですが、チョコレートパンが好きなので今日のパンも喜ばれると思います。自然な材料だけを使う折口先生のパンは、食べて安心で味もやわらかい。先生もやさしいパンと同じく雰囲気がすてきで、教え方もていねいで親切だから、通い続けられるし通いたくなるんです。毎回のパンに合う料理も楽しみです」(鶴見広美さん)
- 「趣味でコーヒーの焙煎をやっていて、コーヒーに合う天然酵母のパンを習いたいと思って通うようになりました。今日習ったようなよそゆきっぽいパンもいいなと思うのですが、最初に習ったシンプルなパンもコーヒーによく合うんです。パンのことはまだそれほど詳しくありませんが、シンプルなパンでも違いが出るのはすごいことなんだろうなと思いますし、先生はパンや材料に関して豊富な知識をお持ちだなと感じます。『市販のものとは全然違う』と、家族が喜んで食べてくれるのもうれしい限りです。先生のお人柄がパンに出ているようで、 我が家の食卓が温かくなりました」(川手しづ代さん)
- 「趣味でパンを焼いたり、パン屋さんでアルバイトをしたり、パン教室にもいろいろ通いましたが、まだまだ教わることがいっぱいあるなぁと思います。なかでも折口先生はパンに関する知識がとても豊富なので、楽しく通わせてもらっています。手作りパンは、いろいろとディテールにこだわれるのがいいですね」(Hさん)