
先生の人柄と居心地よさで、長く支持されるレッスン
かつての花街のなごりで古き良き風情が残る、東京・神楽坂。東京メトロ東西線の神楽坂駅で下車して神楽坂通りを進み、細い路地へ入ると見えてくる黄色いビルの一室に、「サロン ピルゥファス」はあります。一歩足を踏み入れると、料理教室を主宰して30年以上になる斉藤かすみさんが穏やかな笑顔で出迎えてくれ、居心地のいい空間が広がっています。取材日はデザートの色に合わせ、グリーンとホワイトを基調としたカラーでコーディネートされたテーブルが目にも爽やか。「料理だけでなく教室で過ごす時間が毎月の楽しみ」という生徒の声にもうなずけます。斉藤さんのレッスンでは、フレンチイタリアンのレシピを家に持ち帰って作れるよう、さまざまな配慮がなされています。手に入りにくい材料を身近なものでどう代用するか教えてくれるのはもちろん、家庭で作る時のイメージが湧きやすいよう、細かいポイントを理論的に説明してくれます。丁寧なレッスンが多くの心を掴み、生徒の中には20年以上通っているという人も。今回は、長年に渡り支持されるレッスンの魅力に迫ります。
家庭での料理が楽しくなるポイント満載
斉藤さんのレッスンはデモンストレーション形式で、前菜、メイン、デザートという3品を学びます。取材日のメニューは、前菜に「冷製のコンソメとカリフラワーのクリーム」、メインに「ポークコートのグリル モカクリームソース」、デザートに「グリーンピースのアイスクリームとマカロンの一皿」。どれも材料はバターの代わりに水あめを使うなど、ヘルシーで素材の味を生かしたオリジナルレシピが学べます。レッスンは3品の調理を並行して進めていき、最後に先生が料理をサーブ、生徒は着席して3品をフルポーションで味わうという流れ。3品それぞれの調理に取り掛かる際、まずは「どうしてこの材料を使うのか」「材料が手に入りにくければ身近なもので代用するにはどうしたらいいか」を解説してくれます。また、ポイントとなる工程では、生徒一人一人に調理途中のボウルやお皿を回して状態を確認する場面も。デザートのマカロンなら焼く前の生地に触れて、どれだけ柔らかいかを確かめていました。理論的な説明だけでなく実際に触れて感覚を掴むことが、家でレシピを再現するときに役立つようです。
前菜の「冷製のコンソメとカリフラワーのクリーム」では、コンソメの材料であるチキンブイヨンを市販のチキンコンソメで代用する方法や、表面に浮いた油はラップで取ると便利といった豆知識を紹介。さらに、コンソメスープの食材からは一番だけでなく二番までスープを取ることができ、二番を取った後の出柄はキーマカレーやミートソースに利用できるということも教えてくれました。食材を余すことなく家庭でおいしくいただくコツに、生徒たちも興味津々。「家でやってみよう」と、それぞれが熱心にメモを取っていたのが印象的でした。
前菜の「冷製のコンソメとカリフラワーのクリーム」は、透き通るコンソメスープがポイント。「コショウは香りを付けるためのもので、コンソメスープには直接入れません。シノワに敷いた布へ砕いた粒コショウを入れ、そこへコンソメスープを濾していきます。こうすると、見た目が透き通り美しく仕上がります」。
メインの「ポークコートのグリル モカソース」では、骨付き豚ロースの火の入れ方を解説。肉をオーブンで10分焼き、取り出して7分休ませるという工程を4回繰り返していきます。オーブンの外で休ませている間に、余熱で中まで火が通っていくそう。じっくりと低温で焼き上げられた骨付き豚ロースは、とても柔らかく仕上がります。
デザートの「グリーンピースのアイスクリームとマカロンの一皿」では、手に入りやすい冷凍のグリーンピースを使用したアイスクリームと、ミントのマカロンを作ります。「アイスクリームは、グリーンピースの風味が残るように粗目のザルで濾すのがおすすめです」と、使う調理器具についても詳しく教えてくれました。
料理が出来上がったら、いただく前に撮影タイムを設けてくれます。斉藤さんはカメラマンとコラボして料理の写真教室も開催しているそうで、料理を美しく撮影するための背景ボードがいくつも用意されています。それぞれの料理が映えるベストな背景ボードを、自然光の入る窓際にセッティングし、しばし撮影タイム。生徒たちは「おいしそう」「素敵」と言いながらスマートフォンを手に、この日のメニューを撮影していました。
さらに、料理はもちろんのこと、フランスの文化を発信したいというのも斉藤さんの想い。試食時にはレッスンで作ったメニューに加え、季節のチーズも提供してくれます。取材日は、フランスの農家が夏季限定で製造する放牧チーズ「サレールA.O.P」が登場。チーズの特徴を説明しながらサーブしてくれます。フランスのライフスタイルや、食のトレンドに触れることができるのも魅力的です。