「料理研究家」は海外には存在しない?
「良妻賢母」で、マンガ「サザエさん」に登場する「舟さん」のような女性が、日本では長く「理想のお母さん」として愛されてきました。21世紀に入り、平成から次の世に進もうという現在になっても、長く育まれてきたイメージというのは揺らぐことはありません。多かれ少なかれ、マスコミは「ホッとする家庭料理」を理想の日本の食卓として紹介し続けており、おしゃれでスタイリッシュなワインのあるテーブル風景や本格的な世界各国の料理レシピを伝えることがあっても、それはやはりハレの日のもの。普段着の食卓を彩るレシピ本や料理番組こそ、不動の人気を誇り、需要がなくなることはありません。逆に言えば、このような国民性があるからこそ「主婦っぽい料理家」がたくさん活躍できる土壌が誕生したともいえます。
日本ではごく一般的な職名ともいえる「料理研究家」「料理家」という言葉ですが、例えば、英語だと同様の意味を持つ言葉は厳密には存在しません。「cooking expert」?「cooking professional」? いいえ、実はもっとも近い言葉は「chef」だと言われています。
レストランでお金をとって料理を提供する人も、家庭で家族のために料理をする人も、シェフ。主婦の延長線上にある勘の良い料理上手が、自らの経験を最大限に生かし、世の悩める主婦たちを救うアイデアレシピや調理方法をメディアやSNSで次々に発表できる日本というのは、実は料理業界で活躍できるチャンスの多い国といえるかもしれません。
大人気の料理家は、実は「素朴な主婦」を演じる名女優
しかし、海外の料理番組や料理本に詳しい人は、これに異を唱えるかもしれません。
「アメリカでは知らない人がいないほど有名な、雑誌名にもなっている主婦がいるじゃない?」「イギリスの人気料理番組の審査員を務める厳しい料理批評家は、80代の現役主婦だと聞いたけど?」「オーストラリアに料理道具の物販まで展開するスーパー主婦がいたはず」。確かに、そうです。日本にも、その名を聞けば誰もが知っているというレベルの著名な主婦顔の料理研究家は確かにいます。
ですが、「チャンスはこれからつかむ予定」という、人気料理家の“卵”であるみなさんは、彼らが単に運が良かっただけだと思っているようでは、今後も幸運が訪れても気づかないうちに目の前を通り過ぎてしまうかも。彼らは、本当は違うんです。メディアに重宝され長く活躍し続けている人気料理家というのは、どれだけおっとりした優しい主婦然とした振る舞いをしているように見えても、実はいい意味で相当のビジネスウーマンであることがほとんどです。それをさほど感じさせないようにしている時点で、すでにプロフェッショナルです。