人気料理家が企業やメディアに愛される理由【ビジネスマナー塾】

テレビや雑誌など、メディアで大活躍を続ける料理家と、実力もルックスも申し分ないのになぜかチャンスに恵まれない……という料理家と、両者の違いというのは何なのでしょうか? ざっくりいえば、運と縁。しかし、実は人気の料理家というのは意外に、テレビ局や出版社、代理店、メーカーやブランドなど、いわゆる「企業の人」との付き合いが上手という人が多いもの。チャンスまであと一歩!という惜しいところにいる人のために、今回は企業に愛される料理家の秘密について考えてみましょう。

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2018年11月13日

「料理研究家」は海外には存在しない?

「良妻賢母」で、マンガ「サザエさん」に登場する「舟さん」のような女性が、日本では長く「理想のお母さん」として愛されてきました。21世紀に入り、平成から次の世に進もうという現在になっても、長く育まれてきたイメージというのは揺らぐことはありません。多かれ少なかれ、マスコミは「ホッとする家庭料理」を理想の日本の食卓として紹介し続けており、おしゃれでスタイリッシュなワインのあるテーブル風景や本格的な世界各国の料理レシピを伝えることがあっても、それはやはりハレの日のもの。普段着の食卓を彩るレシピ本や料理番組こそ、不動の人気を誇り、需要がなくなることはありません。逆に言えば、このような国民性があるからこそ「主婦っぽい料理家」がたくさん活躍できる土壌が誕生したともいえます。

日本ではごく一般的な職名ともいえる「料理研究家」「料理家」という言葉ですが、例えば、英語だと同様の意味を持つ言葉は厳密には存在しません。「cooking expert」?「cooking professional」? いいえ、実はもっとも近い言葉は「chef」だと言われています。

レストランでお金をとって料理を提供する人も、家庭で家族のために料理をする人も、シェフ。主婦の延長線上にある勘の良い料理上手が、自らの経験を最大限に生かし、世の悩める主婦たちを救うアイデアレシピや調理方法をメディアやSNSで次々に発表できる日本というのは、実は料理業界で活躍できるチャンスの多い国といえるかもしれません。

大人気の料理家は、実は「素朴な主婦」を演じる名女優

しかし、海外の料理番組や料理本に詳しい人は、これに異を唱えるかもしれません。

「アメリカでは知らない人がいないほど有名な、雑誌名にもなっている主婦がいるじゃない?」「イギリスの人気料理番組の審査員を務める厳しい料理批評家は、80代の現役主婦だと聞いたけど?」「オーストラリアに料理道具の物販まで展開するスーパー主婦がいたはず」。確かに、そうです。日本にも、その名を聞けば誰もが知っているというレベルの著名な主婦顔の料理研究家は確かにいます。

ですが、「チャンスはこれからつかむ予定」という、人気料理家の“卵”であるみなさんは、彼らが単に運が良かっただけだと思っているようでは、今後も幸運が訪れても気づかないうちに目の前を通り過ぎてしまうかも。彼らは、本当は違うんです。メディアに重宝され長く活躍し続けている人気料理家というのは、どれだけおっとりした優しい主婦然とした振る舞いをしているように見えても、実はいい意味で相当のビジネスウーマンであることがほとんどです。それをさほど感じさせないようにしている時点で、すでにプロフェッショナルです。

 

仕事が切れない人気料理家の条件① 最低限のビジネスマナー

では、「一見ふつうなのにずっと人気が衰えない料理家」の特徴とは、どういったものでしょうか。

何よりも企業やメディアから重宝されるのは、最低限のビジネスマナーを身につけていることでしょう。それをご紹介するのがこの連載の役割ではありますが、ざっくり言えば、メールや電話のやりとりがスムーズ、話がしやすく分かりやすい、期日を守る、予算を守る、自分の長所を押し付けず相手の要望を満たす仕事を常にする、など。最近であれば、デジタルカメラやパソコンなど最低限のデジタルガジェットの素養があることや、企画書作成のうまさ、SNS使いの上手さなども、料理研究家に求められる要素になってきています。

「私には何といっても料理の腕がある!」という人もいるでしょう。しかし、ものすごく料理が上手い、というだけでは、実は料理研究家もレストランのシェフも務まりません。最低限のビジネスマナーが必要なのは言わずもがなで、さらに前者であれば一般家庭(料理が下手な人たち)の日常における残念な状況を想像する力や、噛み砕いて料理を教える能力が必要です。後者であればデザイン、表現、ワイン、トレンドキャッチ、経営センスなど多岐にわたる運営能力がないと、単なる独りよがりの店になってしまい、早晩廃業になってしまいます。

誤解を恐れずに言うならば、料理研究家が料理上手というのは、当たり前のことなのです。料理が大好きで食と向き合って生きる道を選んだけれど、一般企業に勤めていたってある程度の業績はあげられただろうし、他の業界の人たちとも興味を持って話し合える、そんな料理研究家こそ、仕事が切れない人になっていくといえるでしょう。

仕事が切れない人気料理家の条件② 仕事と趣味の境界が理解できている

人気があってうらやましいなと思う料理家がいたら、一度その人の書籍なり番組をつぶさに眺めてみてください。よく観察していくと、実は、似たような仕事内容がけっこう多いことに気がつくはずです。何年も経てば次第に変化してはいるものの、ヒット作の前後には、それに連なる仕事がたくさん見受けられるものですが、これはどういうことでしょう?

理由のひとつに、その料理家が「依頼された仕事内容に忠実である」ということがあります。企業からある商品の開発を頼まれた時、あるいはメディアから書籍の制作を依頼された時、スタート時点でクライアント(企業やメディア)がまったくのノープランであることはまずあり得ません。商品の売り上げ増を狙って人気料理家にレシピや案出しを依頼するなら、根拠となった過去の事例が必ずあるでしょうし、書籍であれば売れなければ大損です。料理家がこれまでに築いた何かしらの“業績”に目をつけ、それらをベースに仕事を依頼している場合が多いのです。

人気料理家というのは毎日がそういった依頼や相談の連続ですから、「また同じような依頼がきた」「他社で似たような案件をやったばかり」と感じることもあるでしょう。しかし、よほどのことがない限り、否定したりしません。逆に、「実は某社で同様の案件を手がけました。かぶらないように少し仕様を変えて提案は出来ますがどうします?」などと真摯に伝え、少し方向変換した新アイデアやレシピを考え出すものです。そこにあるのはプロ意識。プロ意識とは「どんな仕事をすれば相手の利益になるか」を考える力です。「好きな料理を仕事にできて幸せ」と笑顔で話す人は、実は「好き、という気持ちをマンネリ化させない天才」です。

仕事が切れない人気料理家の条件③ 面倒がかからない人

これは料理家に限った話ではないかもしれません。現代において、企業やメディアが一緒に仕事をしたいと思う相手というのは、ライトに楽しく、サステナブルな関係が築ける人でしょう。「腹を割って何でも話し合い、時には丁々発止でやり取りしながら強い関係を築いていく」という昔気質の人間関係も、もちろん現在でも生きてはいます。が、これからの料理家は、身近な生徒から国内の企業やメディア、さらには海外に暮らす生産者とでも広く浅く、さまざまな仕事をしていくことが求められています。そんな時、お互いに「面倒が少ないこと」は、実は重要な条件です。

面倒が少ないとは、言い換えれば手がかからない人であることです。ひとつ提案を依頼したら的確な案がひとつと方向性の違うサブアイデア2つが添えられて戻ってくるとか、料理経験の少ない担当者に出す企画書に、料理道具や食材についての簡単な説明がさりげなく添付されていたとか、「気の利く人だな」と思われるのは“面倒レスな人材”としての第一歩です。

前述したビジネススキルと重なりますが、「短く要領を得たメールが書ける」「何度も問い合わせや確認をしない」なども重要です。特に企業とやり取りするビジネスメールのルールは、気づかないうちに失敗をしてしまいがち。肝心なことを突然、LINEやメッセンジャーで問い合わせるなど、うっかりやってしまっていませんか? 企業とのやり取りでは、メール履歴は後から詳細を確認するための文書でもありますので、ふだんはスマホでほとんどのやり取りを済ませている人も相手の状況に合わせるようにした方が良いでしょう。

仕事が切れない人気料理家の条件④ ドジ・失敗をしない人

「なんて厳しい条件!」と思われる人もいるかもしれません。人気ドラマの主人公の女医ではあるまいし、失敗しない人はこの世にはいません。が、準備不足による失敗は、実は仕事の現場では周りには丸バレしてしまいます。

例えば、広告に使う料理写真の撮影現場などでは、その日のために企業のクライアント、代理店スタッフ、制作会社スタッフ、フォトグラファー、スタイリスト、さらには多くのアシスタントやロケバススタッフなどが集まっているものです。料理家にはリラックスして仕事してほしい、という配慮から、一見現場は和やかに思えるものですが、よく周りを観察してみてください。制作会社のスタッフは時間通りに撮影が終了するかやきもきしているものです。代理店スタッフは、クライアントが満足しているかどうか常にピリピリと神経をとがらせているはずですし、フォトグラファーやスタイリストはそんな周りの思いを実はひしひしと感じつつ、料理家を緊張させまいと、敢えてのんびり振る舞っているかもしれません。

そんな中、料理家の料理の仕上がりが全員の注目を集めるわけですから、緊張するのも無理はありません。しかし、失敗するのが恐ければ、撮影までに何十回も繰り返しておけば良いですし、準備をしていれば忘れ物や思い違いはないはずです。

意地悪なクライアントから「大丈夫なのか?」と問われても、自信を持って「大丈夫、まったくご心配には及びませんので、楽しんで見ていてください」と、周りの雰囲気を和ませるように朗らかに言える人ほど、実際の腕前以上に高い評価が得られたりします。

 

仕事が切れない人気料理家の条件⑤ ライフスタイルが素敵な人

聞いただけでは到底ビジネスマナーとは思えない条件ながら、「ライフスタイルがナチュラルで素敵」というのは、企業やメディアから愛される重要なポイントです。

かつて、昭和の時代に活躍した大御所料理家たちは違いました。簡単に自らの生活をさらすようなことはせず、おいしくて家族が喜ぶ健康的な食事のレシピをひたすら研究して紹介するのが、文字通り料理研究家の仕事だったのです。

しかし時代は変わりました。企業やメディアに勤める人々が、現在、消費者に向けて打ち出したいものは、料理そのものだけではありません。どんな旬の食材を用いてどんな調味料や料理道具を使って料理にするか。どんな器に盛り付け、どんなクロスやカトラリー、花やワインを合わせてそれらを味わう時間を楽しむか。一皿の料理の前後に広がる美しいライフスタイルこそ、最強のコンテンツであり、売れるアイテムです。

人気の料理研究家というのは、たとえレシピの試作に悪戦苦闘する日々が続いているとしても、そういったことを冗談混じりに話したとしても、前面に出すことはしません。「毎日忙しくて」と言いつつ、おいしい手作りのスープを朝のインスタグラムで投稿し、週末には自分と家族やペットのために旬の果物を使ってケーキを焼くような、そんな「余裕」を醸し出しているものです。周りの人々は、料理家のそんな“気配”を嗅ぎ取って、さらに仕事を発注したくなる……。その結果、人気はますます高まることになるのです。

 

まとめ

料理が好きで、料理上手を自認している人ほど、時に話題の料理家のレシピを試した結果「おいしいけれどごく普通。なんでこの料理家がこんなに人気なのか、わからない」と口にしたりします。

が、それは料理に対して真剣すぎるあまりに大切なことを見失っているのではないでしょうか。そもそも、なぜ料理が好きになったのか。それは「料理をしていると楽しいから」だったはずです。誰かにほめられるとか心身没頭できるとか、食材をいじるだけで癒されるとか、要するに味わい以外の様々な要因が、その人を料理好きへと育てていったはずなんです。

人気の料理家というものは、そんな何気ない楽しさを料理初心者に伝える能力に長けています。また、そんな能力には多くの人々がビジネスの勝機を信じて飛びつくものです。一言に料理の仕事といってもさまざまですが、人々から愛され求められる料理家になると心に決めたなら、技の精進はもちろんのこと、その他で何が必要か、折に触れて立ち止まり考えてみるといいかもしれません。

 

 

写真/Unsplash

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