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人気料理家に学ぶ 仕事が切れない秘訣

スキルアップ
2018年11月13日
テレビや雑誌など、メディアで大活躍を続ける料理家と、実力もルックスも申し分ないのになぜかチャンスに恵まれない……という料理家と、両者の違いというのは何なのでしょうか? ざっくりいえば、運と縁。しかし、実は人気の料理家というのは意外に、テレビ局や出版社、代理店、メーカーやブランドなど、いわゆる「企業の人」との付き合いが上手という人が多いもの。チャンスまであと一歩!という惜しいところにいる人のために、今回は企業に愛される料理家の秘密について考えてみましょう。 >>ビジネスシーンでの正しいお詫びの仕方は? >>正しい自己紹介の方法、できている? >>ビジネスマナー「正しい電話応対」は?

仕事が切れない人気料理家の条件① 最低限のビジネスマナー

では、「一見ふつうなのにずっと人気が衰えない料理家」の特徴とは、どういったものでしょうか。
何よりも企業やメディアから重宝されるのは、最低限のビジネスマナーを身につけていることでしょう。それをご紹介するのがこの連載の役割ではありますが、ざっくり言えば、メールや電話のやりとりがスムーズ、話がしやすく分かりやすい、期日を守る、予算を守る、自分の長所を押し付けず相手の要望を満たす仕事を常にする、など。最近であれば、デジタルカメラやパソコンなど最低限のデジタルガジェットの素養があることや、企画書作成のうまさ、SNS使いの上手さなども、料理研究家に求められる要素になってきています。
「私には何といっても料理の腕がある!」という人もいるでしょう。しかし、ものすごく料理が上手い、というだけでは、実は料理研究家もレストランのシェフも務まりません。最低限のビジネスマナーが必要なのは言わずもがなで、さらに前者であれば一般家庭(料理が下手な人たち)の日常における残念な状況を想像する力や、噛み砕いて料理を教える能力が必要です。後者であればデザイン、表現、ワイン、トレンドキャッチ、経営センスなど多岐にわたる運営能力がないと、単なる独りよがりの店になってしまい、早晩廃業になってしまいます。
誤解を恐れずに言うならば、料理研究家が料理上手というのは、当たり前のことなのです。料理が大好きで食と向き合って生きる道を選んだけれど、一般企業に勤めていたってある程度の業績はあげられただろうし、他の業界の人たちとも興味を持って話し合える、そんな料理研究家こそ、仕事が切れない人になっていくといえるでしょう。

仕事が切れない人気料理家の条件② 仕事と趣味の境界が理解できている

人気があってうらやましいなと思う料理家がいたら、一度その人の書籍なり番組をつぶさに眺めてみてください。よく観察していくと、実は、似たような仕事内容がけっこう多いことに気がつくはずです。何年も経てば次第に変化してはいるものの、ヒット作の前後には、それに連なる仕事がたくさん見受けられるものですが、これはどういうことでしょう?
理由のひとつに、その料理家が「依頼された仕事内容に忠実である」ということがあります。企業からある商品の開発を頼まれた時、あるいはメディアから書籍の制作を依頼された時、スタート時点でクライアント(企業やメディア)がまったくのノープランであることはまずあり得ません。商品の売り上げ増を狙って人気料理家にレシピや案出しを依頼するなら、根拠となった過去の事例が必ずあるでしょうし、書籍であれば売れなければ大損です。料理家がこれまでに築いた何かしらの“業績”に目をつけ、それらをベースに仕事を依頼している場合が多いのです。
人気料理家というのは毎日がそういった依頼や相談の連続ですから、「また同じような依頼がきた」「他社で似たような案件をやったばかり」と感じることもあるでしょう。しかし、よほどのことがない限り、否定したりしません。逆に、「実は某社で同様の案件を手がけました。かぶらないように少し仕様を変えて提案は出来ますがどうします?」などと真摯に伝え、少し方向変換した新アイデアやレシピを考え出すものです。そこにあるのはプロ意識。プロ意識とは「どんな仕事をすれば相手の利益になるか」を考える力です。「好きな料理を仕事にできて幸せ」と笑顔で話す人は、実は「好き、という気持ちをマンネリ化させない天才」です。

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写真/Unsplash