仕事の失敗やミスより怖いのは、「お詫びで失敗」すること
フリーで働く料理家で、なおかつ料理教室を主宰している人というのは、「何よりも料理が好き」という気持ちはもちろんのこと、「人と接するのが好き、人の喜ぶ顔を見るのが好き」という社交家タイプがたくさんいます。多くの人々と日常的に接する中で、多くの友人たちに囲まれ、いつもイベントに顔を出し、教室では「先生」と呼ばれて慕われている。そんな、一見、人間関係にまったく不自由を感じていなさそうな人が、「ビジネスシーンでミスした場合、どうやってお詫びしていいかわからない」と語ることがあります。
プライベートであれば、楽に人とコミュニケートができ、少し人間関係がギクシャクすることがあっても、電話やメールでフォローをし、さらには少し距離を置いていても、SNSでお互いの動向を眺めているうちにいつしか元の関係に戻っていた……という問題解決が可能でしょう。しかしビジネスシーンともなると、何かミスや失敗があった後にお互いの意思疎通も危ぶまれるとき、正しいフォローや、時としてはお詫びがないと、そのまままったく担当者と音信不通になってしまったり、二度とその企業から仕事がこなくなったりするなど不本意な事態に陥ってしまうことも。
プライベートでもビジネスでも、仕事の礎(いしづえ)となるのは人間関係であり、そこに絶対的な方程式などはありませんが、「お詫び」だけは注意をしなければなりません。もちろんその前にミスや失敗をしないように気を付ける必要もありますが、お詫びのタイミングや方法をしくじると、プライベートとは比べものにならないくらい、大問題に発展してしまうこともあるからです。
最も怖い結末は、相手にされなくなってしまうこと
ビジネスシーンのミスや失敗にもさまざまな種類がありますが、プライベートと異なるのは、そのほとんどが「当事者以外の人々にも迷惑がかかることが多い」という点。企業経験のあるなしに関わらず、これは想像力を駆使すれば想像ができることでしょう。この連載のバックナンバー「正しい仕事の断り方」の回でも触れましたが、例えば招待されたイベントをドタキャンすると、そのために関係者が主催者に対して立場がなくなったりクレームを言われたり、といったことが考えられます。「大勢参加するイベントだし、一人くらいいなくてもいいでしょう」と考えた本人の想像のはるか彼方で、何人もの人々がその穴埋めに奔走していることだってあります。
正面切ってクレームをつけてくれるビジネス相手がいたら、少々ひるんでしまうかもしれませんが、必ずそこで相手の話にきちんと耳を傾けてみてください。フリー稼業というものは、料理家にスタイリスト、カメラマン……と多くの職業がありますが、多数の同業者の中から選ばれて仕事の発注があるわけです。他にも仕事を受けてくれる人がひしめき合っているにもかかわらず、「はい、次」と匙を投げずにクレームをつけてくるのであれば、まだお詫びをする余地があるということかもしれません。