ビジネスシーンでの正しいお詫びの仕方【ビジネスマナー塾】

企業勤務経験が少ないフリーの料理家はしばしば、「ビジネスシーンでの立ち居振る舞いに自信がない」と考えることがあります。けれど、ビジネスの場といっても基本は人間関係の積み重ね。相手に真摯に向かう姿勢があれば、たいがいのことはなんとかなるものですが、ひとつだけ気を付けなければならないことがあります。それが、「お詫びの仕方」。何かあったときに即座にどういった行動がとれるかで、その後の仕事に大きく影響が出ることもあります。今回は、ビジネスシーンにおける正しい謝罪方法についてお伝えします。

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2018年10月9日

仕事の失敗やミスより怖いのは、「お詫びで失敗」すること

フリーで働く料理家で、なおかつ料理教室を主宰している人というのは、「何よりも料理が好き」という気持ちはもちろんのこと、「人と接するのが好き、人の喜ぶ顔を見るのが好き」という社交家タイプがたくさんいます。多くの人々と日常的に接する中で、多くの友人たちに囲まれ、いつもイベントに顔を出し、教室では「先生」と呼ばれて慕われている。そんな、一見、人間関係にまったく不自由を感じていなさそうな人が、「ビジネスシーンでミスした場合、どうやってお詫びしていいかわからない」と語ることがあります。

プライベートであれば、楽に人とコミュニケートができ、少し人間関係がギクシャクすることがあっても、電話やメールでフォローをし、さらには少し距離を置いていても、SNSでお互いの動向を眺めているうちにいつしか元の関係に戻っていた……という問題解決が可能でしょう。しかしビジネスシーンともなると、何かミスや失敗があった後にお互いの意思疎通も危ぶまれるとき、正しいフォローや、時としてはお詫びがないと、そのまままったく担当者と音信不通になってしまったり、二度とその企業から仕事がこなくなったりするなど不本意な事態に陥ってしまうことも。

プライベートでもビジネスでも、仕事の礎(いしづえ)となるのは人間関係であり、そこに絶対的な方程式などはありませんが、「お詫び」だけは注意をしなければなりません。もちろんその前にミスや失敗をしないように気を付ける必要もありますが、お詫びのタイミングや方法をしくじると、プライベートとは比べものにならないくらい、大問題に発展してしまうこともあるからです。

 

最も怖い結末は、相手にされなくなってしまうこと

ビジネスシーンのミスや失敗にもさまざまな種類がありますが、プライベートと異なるのは、そのほとんどが「当事者以外の人々にも迷惑がかかることが多い」という点。企業経験のあるなしに関わらず、これは想像力を駆使すれば想像ができることでしょう。この連載のバックナンバー「正しい仕事の断り方」の回でも触れましたが、例えば招待されたイベントをドタキャンすると、そのために関係者が主催者に対して立場がなくなったりクレームを言われたり、といったことが考えられます。「大勢参加するイベントだし、一人くらいいなくてもいいでしょう」と考えた本人の想像のはるか彼方で、何人もの人々がその穴埋めに奔走していることだってあります。

正面切ってクレームをつけてくれるビジネス相手がいたら、少々ひるんでしまうかもしれませんが、必ずそこで相手の話にきちんと耳を傾けてみてください。フリー稼業というものは、料理家にスタイリスト、カメラマン……と多くの職業がありますが、多数の同業者の中から選ばれて仕事の発注があるわけです。他にも仕事を受けてくれる人がひしめき合っているにもかかわらず、「はい、次」と匙を投げずにクレームをつけてくるのであれば、まだお詫びをする余地があるということかもしれません。

もちろん、相手に非がある可能性もあります。しかし、前述したように、想像もし得ない部分で誰かが迷惑をこうむっているかもしれません。怒る相手に対峙するのは勇気と体力が要ることですが、怒りをぶつけてくる分には、まだ人間関係をつなぎとめる余地があるということ。あなたのほうで「もうこんな相手(企業)は願い下げ」ということであれば話は別ですが、業界というものは横の結びつきが強いものです。例えこれっきりになるとしても、穏便に、気分を害していることさえ相手に察知されることなく関係を終わらせる方が得策です。

しかし、あなたの側にはまったく思い当たることがないのに、いつしか仕事がこなくなったり、懇意にしていた企業が自分と似たようなタイプの他の料理家にばかり仕事を依頼するようになっているのを見つけてしまったら? これこそ、ビジネスシーンでの怖い例です。対価と代償によって関係が生じるビジネスの場では、プライベートとは違い、ミスや失敗に対して「反応さえ見せずに関係終了」ということがあります。企業では、怒る代わりに、あなたに似たタイプの人材にその仕事を依頼して、仕事に穴を開けず、続けられるように対応するのです。

お詫びや謝罪が許されないパターンとは?

成功しているフリーの人というのは、驚くほどに義理堅いことが多いものです。特に売れっ子であればあるほど。
例えば、スケジュールの組み方。「先に決まった方が優先」とルールを決めている人も多く、仕事が入っている日に、他からとても魅力的な仕事の依頼が来るというようなことは料理家でなくてもフリーであればざらにあります。しかしそのような時も、先に決まった仕事と天秤にかけるのではなく、先約に絶対に支障が出ないと確信できる場合以外は、後からきた内容がどれほどやりたい仕事であっても先に決まった仕事を優先するのがビジネスのルールです。逃した仕事を悔やむ必要はありません。なぜなら、そういう仕事の仕方をしている人には必ず、再び似たようなチャンスがめぐってくるから。逆に、どうしても逃したくないと焦るあまり、架空の理由を作って先約を断ってしまったら? バレなければいいかもしれませんが、狭い業界です。どこかでそういう事実は伝わってしまうもの。そして、先約があるのに次の仕事欲しさに断ってしまったことが判明してしまったら、その場合はお詫びどころではすみません。先約をくれた相手だけでなく、業界内でうわさがめぐり、仕事が回ってこなくなる可能性も。それほど、義理を破ることというのは不信感を持たれてしまう最たる例なのでご注意を。

ビジネスシーンで、お詫びも効かないほどの致命的なミスにつながることといえば、不義理のほか、連絡下手という場合もあります。メールや電話という非常に便利なビジネスツールがあるにもかかわらず、必要なタイミングで必要な連絡を欠いてしまったことはありませんか。「ただでさえ忙しいのに、さらに慣れないビジネスメールや電話なんて無理」と思うかもしれませんが、仕事の前後というのは、たくさんの確認事項が生じるものです。自分から連絡するのが苦手という人であれば、緊急時にいつでもつながる連絡先を伝えておくなり、状況が変更する前後に、たとえ先方から返事がなくてもこちらから一報、現状を報告するメールをするなりして、相手が常に安心していられるように気配りが出来ます。

「売れっ子は義理堅い」と言いましたが、同時に「売れっ子は連絡が密」という方式も当てはまるかもしれません。世に伝わっているのは、誰もが認める素晴らしい才能であったりしますが、実は誰とでも気持ちよく仕事ができる才能こそ、フリーとして活躍できる何よりの強味です。

では次に、せっかくお詫びをしてもかえって逆効果となる例について考えてみましょう。

 

お詫びの失敗例① 誠意が感じられない  

お詫びをする目的はなんでしょうか? 「相手が怖いから」「怒らせると厄介だから」「とりあえず」、といった理由でお詫びをしているのであれば、よほど手練れの人でない限り、残念ながらせっかくお詫びをしていても、その気持ちはどこかで相手に伝わっています。気づかないうちに気持ちのこもらない常套句ばかり繰り返していたり、どこかで聞いたような中身のない言葉の羅列に過ぎないメールであったり、あるいはタイミングがまったくとんちんかんであったり……。自分で自分の気持ちを聞くような心をもって、誠意あるお詫びが出来る状態にまで自らを調えることも大切です。

お詫びの失敗例② 言い訳ばかりで責任逃れをしている 

真面目な人、優等生タイプの人にありがちなのは、お詫びをしながら同時に自分を正当化しようと努力してしまうこと。自分を弁護するのは大切なことですが、お詫びしながら弁護、というのは、傍から見ると言い訳にしか見えないことが多々あります。例えば、お詫びの際に「経緯を説明させていただきますと……」という言葉を使い、延々と状況説明が続く場合。先方が聞きたがっているならば話は別ですが、結果として相手に迷惑をかけてしまっている場合、お詫びする側の事情というものは伝えない方がよいこともあります。逆に、シンプルに真摯に「申し開きのしようもありません、すみません」とお詫びした後日に、詫びた側にものっぴきならない事情があったと相手に伝わったりすると、怒りも静まることも。どれだけ言い分があったとしても、まずは自分の非を認めお詫びが出来ることが、ビジネスパーソンとしての力量だと言えます。

また、お詫びしながら無意識に相手を責めてしまっている人も要注意です。「以前にも申し上げたとおり、………………」「〇〇様よりご指示をいただいたようにしておりましたところ…………」など、お詫びの文章は長くなればなるほど「真意はどこにあるのか」が、読む人に見えづらくなるということは、注意した方がよいでしょう。

ビジネスの場で失敗してしまったら。お詫び・謝罪の3原則

ビジネスシーンで大失敗! となったとき、どう振舞えばよいのかパニックになるかもしれません。遅刻やミス、勘違いによる失敗など、明らかにこちらに非があると認め、許しを請いたいと思うのであれば、とにかく臆することなく即座にお詫びすることです。失敗した後のお詫びの三原則は、一般的に言って下記のパターンがおすすめです。

  1. すぐに直接お詫びする
  2. 直接会えない場合は、電話かメールで連絡を入れる
  3. そのあとの対応策を誠意をもって提案する

何度もお伝えしますが、お詫びに成功法則はありません。しかし、ビジネスシーンでお詫びの心を伝えるための最低限の三原則というものがあり、それが上記の3つです。

まずはタイミング。失敗したらすぐ、が基本です。これは、少々自分にとって無理があっても、あるいは先方が相当忙しいと思われる場合でも「とにかくすぐに」が大原則。「先方も忙しそうだから、落ち着かれてから連絡する方が礼儀にかなっているかも」「自分がこのようなバタバタした状況で電話しては、かえって迷惑かも」などと思う必要はありません。「お詫びは即座に」が正解です。連絡をして「後にしてくれ」と冷たく言われてしまってもいいのです。「すぐに対応した」というその事実が、すでにお詫びの心を表しているといえます。

次に電話かメールです。電話は、相手の表情が見えないので不安ですが、メールだと相手が読んでくれたかどうかが分からず、それも不安材料に。詫びる側は相手の怒りや失望をきちんと肌で感じる方が、その時は痛手でもあとから楽になることもあります。また、メールや留守番電話の場合は、あとからでも読めたり聞いたり出来るので、急いでいても考えて形に残さないといけません。上述のとおり、言い訳や理由は端折ったほうが気持ちが相手に伝わります。

最後に「対応策の提案」。これは言い換えれば「このようにするので許してください」という代償の提供です。ビジネスのことなので、金銭面や時間、労力など、どこかで相手の損失に対して対価を支払う必要が生じているかもしれません。今後、自分の仕事のチャンスを失ってしまうことを考えれば、ここは冷静になって、相手に今後も自分と付き合いたいと思ってもらえるか、考えて提案できるとよいでしょう。

 

シーン別お詫びの仕方① お客様や生徒へのお詫び

比較的懇意に付き合っていたお客様や企業関係者、教室の生徒へのお詫びであれば、すでに人間関係はある程度築けているということを前提に、直に会うか、もしくは電話をし、温度感が伝わるようなお詫びの仕方が効果的です。ことの経緯についてはなるべくシンプルに伝え、どちらかというと、相手の話に耳を傾け、言い分をきちんと話してくれたなら、お詫びの心が伝わっている証です。途中で話の腰を折ったりせず、真摯に向き合うようにし、「本当に申し訳ない」という気持ちを肉声で伝えてみるのがよいでしょう。

 

シーン別お詫びの仕方② メールでお詫びする方法

ビジネス書などを参考にするのは、お詫びの場合は逆効果かもしれません。なぜなら、そこに並んでいる文言は、果たしてふだんのあなたが口にしている言葉に相応しいものでしょうか。日常使わない表現をとってつけたようにメールの中に見つけてしまうと、怒っている相手がさらに不信感を募らせてしまうことにもなりかねません。

メールでお詫びを入れる際も、基本的には会ったり電話したりする時と同様、言葉は少なめでも構いません。必要なのは、詫びる側の本心の言葉がつづられていること。また、メールのどこかに必ず「取り急ぎメールでお詫びをお伝えする失礼をお許しいただきたいのと共に、早々にお会いしてきちんとお詫びしたい」と、メールでの連絡が不本意である旨も伝えることです。電話や直接会ってお詫びした後に、「何度も恐縮しながら、改めてメールでも一言お詫びを」と付け加えるのも良いかもしれません。

やってはいけない、お詫びの後のこんなことあんなこと

思い悩んで過ごした期間を経て、ようやくきちんとしたお詫びが出来た、あるいは、相手がなんとかお詫びの気持ちを受け入れてくれた様子………。ホッとした瞬間にやってしまいがちなNG、それは、第三者にいろいろと話してしまうこと。フリーで仕事をしている場合、つい自分と相手の距離感のみにしか気が回らなくなることも多いのですが、実は大変狭い業界だったりします。気がゆるんだあまり、「失敗しちゃった~」と軽く話した相手が、お詫びした相手とつながっている可能性だって十分に考えられます。

また、たとえつい話した相手が親しい人であっても、「ビジネスの失敗を軽く話す人なんだな」と一度思われてしまったら、その後の仕事に多少なりとも影響してしまうかもしれません。お詫びをするという行為は、相手と自分との間に発端はマイナス要因であったとしても強い関係を結ぶのと同義です。そんな関係性を他人に軽々しく話したりするのは厳禁。お詫びをするということは、その後もその気持ちを心のどこかにずっと持ち続けるということです。今後、自らの経験に行動を律してもらうためにも、お詫びしたその後も責任を持って行動するのがビジネスパーソンとしての嗜みと言えそうです。

まとめ

「お詫び」なんて、できればしないでいる方が精神的には楽に決まっています。しかし、どれだけ気を配って生きていても、たくさんの人々と付き合って仕事をしているうえでは、いつ何時、思わぬトラブルに巻き込まれてしまうかもしれません。不本意ながら、誰かに迷惑をかけてしまったり信用を失いかけてしまう可能性だってあります。そんな時、なるべく人を傷つけず、また、必要以上に自分を貶めることなくお詫びが出来、その結果、築き上げた信頼関係を修復できれば、その人の「お詫び力」は本物です。いざという時、正しく振舞えるように、もう一度周りを見渡してみませんか。

写真/Unsplash

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