自分を売り込むのは格好悪い?
これまでにこのウェブサイトでは、さまざまな自己PRのためのアプローチ方法をご紹介してきました。自分という存在を世に知らしめ、料理の腕やセンスを武器に楽しくワクワクするような仕事を得るにはどうすれば良いか。あと少しでチャンスがつかめそうなポジションにいる人ほど、客観的にそれを認識することができず、もがいてしまうことが多いというのはすでにたくさんの事例でお伝えしてきた通りです。
前回は「自分を売り込むための効果的な資料作り」について考察しましたが、今回はそれよりももっと根源的なことについて考えてみたいと思います。それは、「自分を売り込むとはどういうことなのか」について。
料理を仕事にするフリーの人の中には、主宰する料理教室の生徒数が増えないことや、雑誌やテレビでの活躍のきっかけさえ見出せないこと、企業やブランドとの接点をつかめないことに悩んでいる人が大勢いることでしょう。そんな時、よく聞くのが「私は引っ込み思案で売り込みなんて出来ないから」「私は押しが弱いから」という“自己分析”。その背景にあるのはおそらく、幼い頃から「人を押しのけてまで前に出るなんてみっともない」と厳しかった両親の存在や、「私は私は」と押し出しが強い(ように見える)同業者への密かな嫌悪感があるのではないでしょうか。特に前者の「前に出るのはマナー違反」という、日本独特の古きゆかしき美徳は、フリー稼業にとっては無意識のうちに大きな足かせになっていることも多いものです。
しかし、自分を売り込むことは本当に格好の悪いことなのでしょうか? それはきっと違います。おそらく自分を売り込むことが苦手なのではなく「周りが引いてしまうような強引な方法で自分を売り込むこと」ができないだけ。でも、そんな必要はありません。昨今、テレビや雑誌で活躍が目覚ましかったり、企業やブランドと組んで知名度も稼ぎも上げている料理家というのは、意外に「私が私が」という典型的な自己押し出し型の人は少ないものなんです。
では、活躍出来ている料理家というのはどのような方法で自分を売り込んでいるのでしょう?
売り込むのではなく「私と仕事すればメリットがありますよ」と示す
ストレートな言い方をすると、活躍中のフリーの人というのは、料理家に限らずシェフでもスタイリストでも「わかりやすい売り込みはしない」ものです。では、売り込みをあまりしないのに売れっ子になっているのはなぜか? 彼らは自分の言動やこれまでの事例、SNSやウェブサイトなどを駆使して、「私と一緒に仕事をすればいいことがたくさんありますよ、収入増に繋がる可能性が見つけられますよ」というメッセージをたっぷりと発信しています。いわば、過去の仕事例やSNSでの投稿が、モノを言わない彼らの“影の宣伝部長”を務めてくれているのです。しかも、それらの力は絶大です。料理家本人は特に営業活動も行わず、毎日目の前にある仕事に邁進しているだけなのに、知らないところで過去の仕事例やSNSを見た人々が興味を持ってくれ、次々と新しい仕事の話を持ちかけてくるのですから。