売り込みベタな人のためのPR資料作成術【ビジネスマナー塾】

料理の楽しさやテーブルコーディネートの大切さを説くのは大の得意なのに、いざ「自分をPRしてください」と言われたら何を話していいのかわからなくなるという料理家、実はあなただけではありません。ディベートやプレゼンテーションの経験が少ないフリー稼業だと、意外に多いものです。ましてや、自分を売り込むための資料を作成だなんて、何から手を付けていいものやら……。今回はそんな「売り込みベタ」な人にすぐに役立つ、ビジネスのための資料作りについてお伝えします。

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2019年01月11日

売り込み資料が必要になる時、それは……

これまでにも何度か、「成功する料理家」とはどういう存在なのかについて、お伝えしてきました。身の回りのごく狭いコミュニティーに心から愛される料理教室を運営するのは素晴らしいことです。しかし、ここではもう少しビジネス寄りなサクセスを狙うためにはどんな策があるかを考えています。具体的な例を挙げるとすれば、こんな感じです。

  • 入会待ちの生徒が引きも切らず、常にレッスンは大盛況。レッスン料で十分な収入を上げている。
  • メディアからの出演依頼が多く、テレビや雑誌での活躍が多い料理家として顔を知られている。
  • 企業や自治体などからビジネスタイアップ要素の強いレシピ考案を頼まれることが頻繁で、そのための打ち合わせや出張も多く、それに伴い収入も増えた。

もしあなたが上記のような活躍を目指す料理家であるならば、世間に対して自分を上手に売り込むことが必要となります。しかし、「売り込み」という言葉を聞いただけで躊躇してしまう料理家は、決して少なくありません。

料理家のためのデジタル塾」の連載でもお伝えしている通り、今やフリーで働く人たちにとっても自己PRのメイン手段は“フェイスtoフェイス”の対面型ではなく、SNSに代表されるデジタル交流が主体といっても過言ではない時代です。不特定多数の人々から検索されやすく、検索されたときに好感を抱いてもらえるようなインスタグラムのプロフィール画面を常に更新しておく、あるいは自身のウェブサイトに、信頼感を持ってもらえるようなビジュアルイメージや過去の仕事実績を公開しておくことは、一見、待ちの姿勢でいるようにも見えますが、実はかなり攻めのスタンス。

もちろん、実際にレッスンを体験した生徒やイベントであなたの料理を口にした初対面の人々による「口コミ力」にも期待が出来ます。しかし、いかんせん、実際に会って会話を交わした人が媒介となって、メディアや企業との仕事につながるまでにはけっこうな時間がかかります。

さて、話を「売り込み資料」に戻しましょう。努力を続けたおかげでデジタル環境での自己PRは効果が出始め、長く地道に続けている料理教室は口コミでも高評判。そんな状況になるとしばしば声をかけられるようになるのは、「近い将来開催する食のプロジェクトに料理家としての人材を探しており、推薦したいのでPR資料をください」というような案件です。「私という人材に値する仕事がもしあれば、いつでもお声がけください」というスタンスで漠然と作って配るような自己紹介資料であれば、上記に挙げたように、きちんと仕事実績を列記したウェブサイトなりプライベート感を出しすぎていないSNSなりがあればそれで充分ですが、具体的な案件に向けて売り込み資料が求められる場合、これを作成するには少々作戦が必要です。なぜなら、これらの資料は学生や社会人が就職活動を行う際の履歴書と同等のものであり、しかもこの資料は今後も別の形で仕事をもたらしてくれる可能性も秘めているからです。

 

資料作りは迅速に。でもいきなり着手するのは厳禁!

ライバルの中から選ばれるための売り込み資料作りについて、具体的に考えてみましょう。案件は目の前にあって、しかも早々に提出が求められているとき、どうするのが正解でしょうか? 実は「いきなり着手は厳禁」です。つまり、パソコンに向かってまずは自分の経歴を書き始めて、というようなことにでは、あまり意味がないということ。

期日も迫っていてそんな悠長に構える余裕がどこにあるのか、と思う人も多いかもしれませんが、ここはグッとこらえてしっかり考える作業から始めてみましょう。何について考えるかというと、自分についてです。パソコンはいったん脇に置いて、準備するのは紙とペン。思考を落ち着かせるために必要であれば、熱いお茶もポットで用意した方がいいかもしれません。そのうえで、フリースタイルで構わないので、下記の項目について考えて好きなように紙に書き出してみてください。

資料作りのコツ1 その仕事で求められている要素はなに?

売り込みのための資料、となると、とかく自分を表現することにばかり気をとられてしまうのが人の常ですが、成功する人はまず「相手の利点」から理解しようと試みるといいます。この場合であれば、このプロジェクトになぜ料理家が求められているのかを徹底的に考えてみること。イベント開催のための集客が目的なのか、新製品開発のためのご意見番として料理家が必要なのか、料理経験のない男性が主体のプロジェクトで料理がテーマになっていてクライアントが手も足も出ない状態であるのか、などをプロファイルすることによって、自分が最もアピールすべきポイントが見えてくるはずです。

資料作りのコツ2 見ず知らずの相手に納得してもらえる具体的なセールスポイントは何?

次に考えなければならないのは、実際にクライアントに会う前に相手の手に渡ってしまうこの「売り込み資料」に、どんな内容を載せると最大限の力を発揮するだろうかという点です。魅力的だと言われるその笑顔も料理教室の生徒から愛される屈託のなさも、ここには掲載することができません。また、仕事に対する思いはあふれるようにあるものの、ビジネスの場で提供する資料であれば、あまり感情的な応募動機を記すのは得策ではありません。……となると、提出書類に記載して正解なのは、見ず知らずの誰が読んでも「この料理家は実力があって信頼できそう」と思えるような、具体的な事項です。クライアントの目的がイベント開催の集客であれば、「料理学校での客員講師を長年務めているので、生徒や卒業生にも呼びかけができる」ということが評価されるかもしれません。健康長寿を狙う新しい食品開発のために料理家の意見が聞きたいということであれば、昔取得した「管理栄養士資格」はおそらく、抜群の効果を発揮することでしょう。具体的であり客観的な評価であること、相手にとってメリットになること、の2点を念頭に、短くまとめるのがポイントです。

資料作りのコツ3 説得するために添付するべき資料は何?

文章やデータだけの売り込み資料は間違いではありませんが、さらにここに添えられる効果的な添付資料がないかも考えてみましょう。今回の案件に共通点が感じられるような過去の事例写真や、自身の著書や制作物で案件に通じるようなタイプのものがないか、記憶の洗い出しをしてみてください。

 

いざ、着手。A4横書きが基本フォーマット

じっくり熟考した上で完成させた手書きの草案を元に、今度は誰もが閲覧しやすいよう、プロフェッショナルな資料作りに着手しましょう。資料のフォーマット形式に決まりはありませんが、相手が企業やメディアであることを前提に考えるなら、提案書やプレゼン資料などはA4横書きにするのが現状では一般的です。パソコンで作成する際はさまざまな文書形式が選べますが、これも最も一般的で誰でも手軽に見やすいことを考えるとPDF形式にまとめるのが無難です。内容についてたっぷり考慮したものであれば、多少見た目が無難であっても問題ありません。逆に、多色使いで飾りたてた文書であったりすると、仕事を任せるのに不安を抱かせてしまうことにもなりかねません。

使用する文書作成ソフトはパワーポイントなどが一般的。ワードでもエクセルでももちろんOKですが、最後に提出用に保存する際にはPDF形式を選ぶようにすればよいでしょう。

結論から書くこと、長くなりすぎないこと

自分を売り込むための資料に、長々とした最初のあいさつや〆の文章は必要ありません。手紙ではないので、いきなり本題に入ってもかまわないのです。

例えば、ある新製品開発のためのプロジェクトを進めるにあたって、ご意見番としての料理家を探しているクライアントが相手だと仮定して考えてみましょう。最初の1枚目は扉なので、ごくシンプルに。バランスの良い場所に大きめに「@@@@@@@社御中 @@@@@@プロジェクトの件」などと記し、あとは自分の名前をどこかに入れる程度で問題ありません。2ページ目は、いきなり結論をシンプルに書いても大丈夫です。例えば「日常的に接している30代の女性が夕食の準備で悩んでいる点は次の3点だと考えています。1.栄養的なバランスをとるのが難しい。2.短時間で美しいビジュアルに盛り付けするのが難しい。3.作るのに時間がかかると着手しにくい。管理栄養士であり30代の女性たちが多く通う料理教室を主宰する私には、彼らの悩みと解決策を同時に御社にお伝えすることが可能です」など。もちろん、適宜改行を入れ、バランスよく仕上げることはお忘れなきように。

その上で、3~4ページ目には過去に携わった仕事例で、2ページ目に掲載した「結論」を裏付けるようなものを中心に挙げます。ここには、過去事例の画像などを入れると効果的かもしれません。最終ページにはいわゆる「履歴書」的な要素を箇条書きにして入れます。昨今、住所や家族に関する個人情報などは省略してもOKとみなされることが多いのですが、料理家としての歴史を物語るようなこと、例えば出身地や卒業校、資格などは記述しておいた方がセールスポイントだとみなされます。

 

料理家が活躍できるフィールドはどんどん広がっている

さて、ビジネスライクな資料作りについての話を続けてきましたが、不得意な分野だとこれだけでグッタリしてしまう人もいるかもしれません。しかし、ここでひとつ、料理家がメディアや企業など、他ジャンルのクライアントに対してアプローチする際に意外に見落としている自分たちの優れている点について考えてみましょう。

昨今、料理に対する社会の目は大きく変わってきています。女性が結婚相手を見つけるための手段として料理教室に通っていた時代ははるか昔。現代では、男性も女性もより良い人生を生きるために、生活の質を向上させるために料理に着目するようになりました。当然、メディアや企業にしてみても、そういった“ウェルビーイング”の精神をさまざまな商品やサービスに落とし込む必要が生まれてきています。そのために、以前であれば料理のレシピを伝えるということのみが料理家の仕事であったのに、現在では料理家の仕事内容は大きく変わりました。ライフスタイル向上のための料理とは何か、一人暮らしでも孤食に陥らずに楽しんでフードと向き合うにはどうすればよいか、おしゃれで毎日が楽しくなる食卓やテーブルウエアのデザインはどうあるべきか、など、食を取り巻く環境までが商売として大きく取り沙汰されるようになっています。

料理家の手腕や知識・見識が以前とは比べ物にならないほど広く求められるようになったのには、このような理由があります。

 

料理が好きすぎて周りが見えなくなると仕事にはつながらない

料理家に対する社会からの期待値は上昇の一途をたどっています。そんな時代のムーヴメントを感じ取れる人こそ、ビジネスで成功できる料理家になれる素質を持つ人です。

料理家やパンやお菓子の研究家は、コツコツとまじめに研鑽を積み、そのままレストランやショップを開いても成功できそうな技術を持つ人が多数いますが、その一方で「料理が好きすぎる」という気持ちがビジネスでの成功を妨げている例も多々あります。「好きこそものの上手なれ」は正しい格言ですが、これほどまでに食のレベルアップが求められている今、「下手が多いところに商機あり」というのもまた事実。料理で身を立てている時点ですでにあなたの料理への愛は、相手にはしっかり伝わっています。なので、仕事に向かう時は常に一歩引いたクールな気持ちで、自分を客観的に判断できる視点を持つことをおすすめします。

まとめ

「売り込む」という行動は、現在ではあらゆる手段を用いて実施できます。「会って話せばわかってもらえる」という時代は、残念ながら終焉を迎えている様子。その代わりに、デジタルを利用すれば世界中の人に自分を一から売り込むことだって可能になりました。

そして今、人生百年時代だ女性活躍社会だと言われ、ますます個人がいきなり企業や社会との関りをライトな感覚で持てるようになり、志の高い料理家にとってはまさに、好機到来。自分という商品を待っている人は思わぬところに存在し、あなたからのダイレクトなアプローチを待っているかもしれません。自分の真の価値を見出し、向き合うためにも、売り込みのための資料作りに一度着手してみてはいかがでしょうか。

写真/Unsplash

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