売り込み資料が必要になる時、それは……
これまでにも何度か、「成功する料理家」とはどういう存在なのかについて、お伝えしてきました。身の回りのごく狭いコミュニティーに心から愛される料理教室を運営するのは素晴らしいことです。しかし、ここではもう少しビジネス寄りなサクセスを狙うためにはどんな策があるかを考えています。具体的な例を挙げるとすれば、こんな感じです。
- 入会待ちの生徒が引きも切らず、常にレッスンは大盛況。レッスン料で十分な収入を上げている。
- メディアからの出演依頼が多く、テレビや雑誌での活躍が多い料理家として顔を知られている。
- 企業や自治体などからビジネスタイアップ要素の強いレシピ考案を頼まれることが頻繁で、そのための打ち合わせや出張も多く、それに伴い収入も増えた。
もしあなたが上記のような活躍を目指す料理家であるならば、世間に対して自分を上手に売り込むことが必要となります。しかし、「売り込み」という言葉を聞いただけで躊躇してしまう料理家は、決して少なくありません。
「料理家のためのデジタル塾」の連載でもお伝えしている通り、今やフリーで働く人たちにとっても自己PRのメイン手段は“フェイスtoフェイス”の対面型ではなく、SNSに代表されるデジタル交流が主体といっても過言ではない時代です。不特定多数の人々から検索されやすく、検索されたときに好感を抱いてもらえるようなインスタグラムのプロフィール画面を常に更新しておく、あるいは自身のウェブサイトに、信頼感を持ってもらえるようなビジュアルイメージや過去の仕事実績を公開しておくことは、一見、待ちの姿勢でいるようにも見えますが、実はかなり攻めのスタンス。
もちろん、実際にレッスンを体験した生徒やイベントであなたの料理を口にした初対面の人々による「口コミ力」にも期待が出来ます。しかし、いかんせん、実際に会って会話を交わした人が媒介となって、メディアや企業との仕事につながるまでにはけっこうな時間がかかります。
さて、話を「売り込み資料」に戻しましょう。努力を続けたおかげでデジタル環境での自己PRは効果が出始め、長く地道に続けている料理教室は口コミでも高評判。そんな状況になるとしばしば声をかけられるようになるのは、「近い将来開催する食のプロジェクトに料理家としての人材を探しており、推薦したいのでPR資料をください」というような案件です。「私という人材に値する仕事がもしあれば、いつでもお声がけください」というスタンスで漠然と作って配るような自己紹介資料であれば、上記に挙げたように、きちんと仕事実績を列記したウェブサイトなりプライベート感を出しすぎていないSNSなりがあればそれで充分ですが、具体的な案件に向けて売り込み資料が求められる場合、これを作成するには少々作戦が必要です。なぜなら、これらの資料は学生や社会人が就職活動を行う際の履歴書と同等のものであり、しかもこの資料は今後も別の形で仕事をもたらしてくれる可能性も秘めているからです。