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自分を売り込まずに売り込む方法

スキルアップ
2019年02月12日
「控えめでいるのが美徳」という日本的教育のもとで育てられた、いわゆる「お嬢様」的な人が多いと言われる、料理研究家。しかし「のんびり楽しく料理教室を続けていたが、いつの間にか教え子や知人の料理研究家がどんどん企業やメディアの人たちと仲良くなり、雑誌やテレビで見かけるようになって悶々としてしまう……」というのもよく聞く話です。「自分から売り込むなんて苦手だし出来ない」と思っていませんか? そんな悩めるフリーの料理研究家がどうすれば良いかを考えてみました。 >>売り込みベタな人のためのPR資料作成術 >>企業やメディアに愛される料理家の秘密 >>正しい自己紹介の方法とは

逆に言えば、売り込み下手で自己PRに自信のない人も、だからといって無理をする必要はないということなのです。必要なのは、もう少し戦略家になること。自分という人材が、相手にとって(ここが重要です)どんなメリットを与えられるかを具体的にわかりやすい数字や実績などで示せること。そのための材料作りを日頃からきちんとやっておくことが大切です。
意外に効果が高く、そして今日からでも始められる「売り込まずして効果的に売り込むコツ」をいくつかここでお伝えしましょう。

売り込まずに売り込む方法1. ありあまる情熱は言葉以外で証明する

「売り込みは苦手」と感じている人の多くは、ガツガツするのはお行儀悪い、という認識をお持ちでしょう。それはビジネスシーンでは正しいことです。ただ、そんなつもりはなくてもついつい、大好きな料理のこととなるといつものテンションを上回り、水を得た魚のように夢中で語ってしまうこと、ありませんか? SNSなどはいくらでも自分の言葉で自分を表現できてしまうので、まさにあふれる情熱をノンブレーキで世界にぶつけてしまっているかもしれません。
もし上記のようなことに覚えがある場合、今日から少し作戦を変えてみませんか? 例えば、「パンが好きという情熱は誰にも負けない」という思いを口にしたり文章にしたりするのではなく、淡々と実績に変えていくというような。次から次へと創作するパンを生徒に教えているうちにレパートリーが1000を超えたとか、日々季節の食材を用いたパンを焼き、それを美しいビジュアルと静かな言葉でインスタグラムやブログで投稿し続けていたら、サムネイルが多彩な作品集になっていた、とか、例を挙げるならそういったことです。どれほど言葉少なにしていても、それらを目にした人はあふれる情熱を感じてくれるでしょうし、その才能を生かした仕事もたくさんあるのではないでしょうか。

売り込まずに売り込む方法2. 世の中の流れを貪欲に知る努力をする

こんなことが売り込みにつながるの?と思われるかもしれませんが、何よりも効果があるのがこの方法かもしれません。フリーで働く人は、自らが属する業界の情報には敏感です。おそらく、これを読んでくれている方も、最近話題になっている調味料や新しくオープンしたレストラン、人気の料理本などのことは、誰よりも詳しいことでしょう。
しかしその一方で、「他の業界のことは何も知らない」という人が多いのも事実。けれど、ここに大きなビジネスチャンスがあります。というのも、自身の業界にいくら詳しくても、同時に、そこにはライバルの同業者がひしめき合い、皆が必死にチャンスをつかもうと手ぐすね引いているわけで、これから活躍していこうと考えている人が飛び込むにはなかなかハードルの高い世界です。ドボンと飛び込んで、多くのライバルたちとゼイゼイ言いながら死闘(?)を繰り広げるよりはおそらく、「まだ台頭する料理家はいないけれど、今後多くの人々に望まれるであろうジャンル」を探す方が近道になるかもしれません。
ここで必要になるのが、専門外の情報です。
少し脱線しますが、思い出していただきたいのは「タニタ食堂のレシピ」の大ヒットです。健康機器のメーカー「タニタ」が、運動不足やダイエットに悩む社員に向けて社員食堂で提供していた料理をレシピ本にして出版したところ、空前の大ヒットとなり映画化までされました。レシピ本は500万部に迫る勢いで、現在では全国に「タニタ食堂」がフランチャイズチェーンとして展開されているのは多くの人々の知るところです。いくつかのきっかけが複合的に重なったのでしょうが、「美味しくて健康的に無理なく痩せられる食事は、現役世代のサラリーマンに支持されるだろう」と考えた最初の人物こそ、目指すべき姿です。自分が作りたい料理はいったん視野の隅に置き、必要とされるジャンルは?求めている人々はどんな層?という問いを持ってみてください。敏感に世間の情報を追っていれば、その糸口に気付けるかもしれません。

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写真/Unsplash