
メール、電話、会って話す。コミュニケーション能力に優れている人であれば、このどれもがそれほど苦痛ではないかもしれません。ですが、逆にコミュニケーションが苦手、という人にとって最も苦手なものは電話という場合は多いものです。なぜかといえば、電話はリアルタイムでコミュニケーションが進行するにも関わらず、相手の表情や心情を察することが難しいから。マナー違反を知らない間にしてしまう可能性が多いのです。
メールであれば、よくよく考えて、タイミングを見計らって送ることができ、相手も都合の良いタイミングで受信して目を通してくれます。会って話す場合は、たとえ沈黙に陥ることがあっても相手がにこやかな表情を浮かべているならば、それほど焦ることはありません。ですが、電話の場合は? 会ったこともない相手と話す時、歓迎されているのか拒否されているのか、実は面倒だと内心思いながらこちらの話に付き合ってくれているのか、判断もつかずに途方に暮れてしまう……というのが、「電話が不得手」という人の正直な気持ちでしょう。
たとえ、他人とおしゃべりするのが好きな人でも、ビジネスの場に慣れていない学生などは、似たような感覚を持つようです。就職活動をしていた時分、志望企業に電話をする際のどうしようもない緊張感を思い出す人も、多いのではないでしょうか。メールやチャットだといくらでも他人と仲良くなれるのに、電話だと、敬語の使い方がわからないとか、相手の出方を気にしすぎるとかでパニックになってしまうのです。
ビジネス電話の意外なマナー。声にも表情がある
もし、たった一つだけビジネスシーンでの電話のコツを挙げるのであれば、それは「笑顔で話す」ことかもしれません。相手は受話器の向こうにいて、自分の顔は相手に見えないとしてもです。お手本は一流企業のクレーム処理電話窓口。電話でのコミュニケーションマナー教育が徹底されています。テレビのCMなどで、保険会社の電話窓口の女性などがにこやかに対応する姿を見たことがあるでしょうか。「あれはCMの世界だから、多少大げさにしているのよね」と思いますか? 実は、あながち嘘でもないのです。電話をかけてくる相手は、顧客であったり今後顧客になる人であったり、いずれにしても大切な相手です。そして、そのほとんどが切羽詰まった状況にいたり、何かに憤慨していたり、困っていたりするというスペシャルなシチュエーション。そんな相手に対応する際の基本は「落ち着いた朗らかな口調」です。
もちろん、事故処理対応の電話窓口などであれば、「朗らか」というのはないかもしれません。が、基本的に人間は緊張するとふだんより口調がキンキンと高くなったり、あるいは低く暗い感じになってしまうことが多いので、「朗らかに話す」ことを自分に命じて、話を進めることが肝心です
電話をするときは「手元に筆記具」がお約束
次に必要なのが電話の小道具。手元にメモと筆記具を準備してからかけることがビジネスの場では必至です。プライベートでも、話の途中で記録すべき言葉が出ることは多々あります。電話の途中で相手の話をさえぎって「しばらくお待ちください、メモを取ってきますので」などと言うのはNG。最初から手元に準備しておきましょう。