
この日の料理は、秋山シェフによる完全オリジナルで、まだ店では出ていない生まれたてほやほやのレシピに基づいて作られました。前菜のかぶとビーツのサラダにはフレーバーオイルを使うドレッシングとしてチョコレートが用いられており、2品目の鴨のローストにはカカオとはちみつのキャラメリゼがたっぷりと施され、デザートのチョコレートのワッフルとアイスクリームには、それこそ惜しみなくふんだんにカカオを使用。もちろん、すべて「ダンデライオン・チョコレート」のシングルオリジンチョコレートが使われています。
一皿一皿、料理がサーヴされるごとにFCCの料理家たちの間からは歓声が。そして、各自一生懸命、料理写真の撮影とメモを取り、一口味わってはまたメモを取り……と大変な忙しさ。それもそのはず、一般客と違って料理を生業(なりわい)にしている参加者たちにとっては、目の前の料理は単なる「おいしい一皿」ではありません。そこにある要素のひとつひとつが、明日からのレッスンに活かせたり、今後雑誌やテレビなどで料理を展開する際のヒントになる可能性もたっぷり。アイデアソースの塊を、目でも舌でも記録にも残しておくのが、料理家たちの常なのです。
この日のサラダは、ちょうど旬を迎えた根菜、かぶとビーツが主役。じっくりとローストすることで、カカオが醸し出すナッティーな風味と極上のコンビネーションを演出していました。使われたチョコレートは、「サンフランシスコ・デ・マコリス ドミニカ共和国」。ナッツや優しいスパイスの香りを持つチョコレートで、「これがドレッシングだなんて!」と、テーブルのあちこちで感嘆の声が上がりました。また、料理に添えられたフォカッチャを浸すためのオリーブオイルにも、その場にいた全員が反応。オリーブオイルだけでなくカカオニブが入っていて、大人っぽい苦みとカリッとした楽しい食感を添えて食事を盛り上げます。
メイン料理の「鴨のロースト カカオとはちみつのキャラメリゼ ごぼうフォンダン」。しっとりバラ色に焼き上げられたやわらかな鴨肉の断面とは裏腹に、肉の表はきっちりとカカオとはちみつでキャラメリゼされており、フォークの先でふれるとコツンと軽い手ごたえを感じるほど。これをクシャっと崩して鴨肉にまとわせながら食べると、食感と鴨肉の滋味あふれる味わいに陶然としてしまいそう。添えられたごぼうのフォンダンがソース替わりになっているのも、粋です。この料理に使われたチョコレートは、「アマナライ インド」。スパイスの役を担うものとしてチョコレートが使われており、フルーティーで酸味のあるテイストを生かしていました。