「私、頑張ってる!」のベクトルが正解かどうかを考える
「kai house club」では現在、約1200名もの料理教室主宰者の方に登録していただいています。北海道から沖縄まで、1200教室! しかも、現在国内にはその3倍を超える料理教室が存在しているのではないかと言われており、個人的なサークル活動も合わせると、その数は想像もつかないほど。本当にたくさん、「料理を教える人」と「料理を教わる人」が存在しているわけです。
さて、今これを読んでくださっている方の大半は、料理教室を主宰していたり料理を本格的に勉強していたり、いわば食への興味好奇心が旺盛な方だと思います。食を、生きがいや喜びとして考えているのはもちろん、願わくばビジネスとしても充分収益が得られるようにしていきたいとお考えではないでしょうか。
かつては、料理教室が良妻賢母となるための花嫁修業としてとらえられていた日本ですが、今では状況は大きく変わりました。日本だけでなく世界的に先進国ではウェル・ビーイングの考え方が支持されるようになり、充実した人生を生きるためには食は当然大切にすべきもので、結果、「料理なんて興味なし」と言い切ってしまうのは、性別に関係なくなんとなく格好の悪いことだと考える人が増えています。実際、海外ではビジネスエグゼクティブたちが足しげく料理教室に通う光景が珍しくなく、日本を訪れる海外旅行者たちもこぞって築地(今では豊洲になりましたが)や合羽橋を目指し、食材やプロ仕様の調理道具が日本土産としても喜ばれるようになっています。
さて、そんな時代にあって、料理教室を営んでいるみなさんは「料理に携わる人」として生きています。そこでひとつ考えていただきたいのは、ご自身が料理を伝える相手というのは、想像する範囲よりも実はずっと離れたところにもいて、教室に通ってくれる近所の生徒さんと同じくらい真剣に、そういった人々の存在も視野に入れてビジネスを行うべきなのだということです。
今、なんとなく行き詰まりを感じていて、未来に思い描いている自分の理想像が「少人数の仲良したちと細々と楽しく料理教室をやっていられたらそれで十分満足」などではなく、料理教室を大きくしてスタッフを雇って経営するような企業に育てたい、もっとメディアに出たい、著者本を出版したい、企業やブランドと共に商品開発に携わりたい、レストランからアドバイザーとして副収入を得られる程度になりたい……といったところにある場合は、即刻、戦略の見直しをお勧めします。これまで、必死にいろいろ頑張ってきたと自負しているならなおさらです。なぜなら、その結果として今があるわけで、この状況を一度見直してじっくりとプロファイリングしない限り、今後を打破するきっかけはつかめないからです。「頑張ってるのに」と思う人ほど、そのベクトルが見当違いの方向を向いていることはよくある話なのです。