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料理家における自分マーケティング

スキルアップ
2019年03月8日
一言に「料理研究家」といっても、本当にいろんなタイプがいます。当然、成功者と残念ながらまだそうではない人に分けられますが、その境目にあるものはいったい何なのでしょうか。料理の技術やルックスだと思いますか? どうしても自分ではその答えが見つけられないでいる人にお伝えしたいのは、「個人マーケティング」という提案。頑張っているのに成功をつかめない人に足りないのは、“策士”としての資質かもしれません。今回は、今自分を取り巻く状況をマーケティングする方法について考えてみます。 >>売り込まずに売り込む方法って? >>売り込みベタな人のためのPR資料作成術 >>企業やメディアに愛される料理家の秘密

これらはほんの一例です。実際、現在では食を仕事にする人々の業務はもっと多様化しており、タレントのように活躍する人から、ほとんどメディアに出ることはないのに高額のギャランティーを稼ぐ人まで、千差万別。しかし、多彩な料理の仕事の中でも自分は何をやりたいのかを明確に見えるように地図に表すことで、「私には、もっと社会に承認してもらいたいという潜在的意識があるのか」とか「企業やレストランなどと協力して、趣味ではないビジネスとしての食に携わって稼ぎたいと思っている」などと認識できるようになります。
要するに、最近よく耳にする「見える化」を自らの未来に対して促してみるということです。

自分マーケティングのための策 3. 「弱みと強み」をそれぞれ次のポジションに移行させる

マーケティング作業はまだ続きます。これまでの1と2をやり遂げたことで、自分の目指すべき部分と、目指さなくてもいい部分がクリアに見えてきました。次はそれらを現実的に実現するにはどうすればよいかを考えます。用意する用紙は2枚。それぞれ「今の自分の弱み」「今の自分の強み」を箇条書きに記入します。
「弱み」を書く際に気を付けたいのは、客観的な事項にとどめるようにすることです。例えば「積極性がない」と書くよりは「SNSでつながっている人の大部分が知り合いばかり」と書く方が、ビジネス面における「積極的のなさ」を表します。つまり、どうしようもない根本的でメンタルな弱みではなく、対策が取れるような弱みに置き換えて考えられるようになれば、弱みを克服するのは容易になるということなのです。ビジネスに縁がなかった人たちがよく使う言葉「コネがない」「金額面の交渉が下手」などは、「自分が目指したい企業やメディア関係者との接点を探せない」「手掛けた案件が少ないので相場が理解できず、つい相手に流されてしまう」と言い換えれば、もう少し対策が取れそうな感じがしませんか?
書き出した弱みは多岐にわたると思いますが、それらの横にはそれぞれ「具体的な対策法」を書き入れてみてください。難しければ、家族や友人などで実際に社会経験が豊富なビジネスマンに見せてみると、意外に役立つ答えがもらえるかもしれません。ご主人や、バリバリ働いている忙しそうな生徒などは、案外いいヒントをくれるものです。
最後に「強み」も同様に箇条書きにしてみてください。これも「弱み」と同様、客観的で、見知らぬ人に伝えても「それはすごい」と言ってもらえそうなことにとどめます。となると、「誰よりも料理を愛している」「生徒一人一人のことをいつも考えている」などは、とても素晴らしいことではありますがここではNG。「管理栄養士資格を持っているのでオシャレなだけではない説得力のあるレシピを提案できる」「実は私のレッスンでは私が使っている調味料や器が飛ぶようにその後売れる」「一度来た生徒が、その後高い確率でリピーターになってくれる」などが言えれば、それこそしめたもの。次にそれぞれの強みの横には「それをどのように世間に対して伝えるか」について、具体的な方法を考えて書き入れましょう。「資格を生かした料理のみを提案する新たなブログを立ち上げる」「いつも教室で売れる調味料ブランドの担当者に、何かイベントが出来ないか企画を送ってみる」など、取り組めることを考えるのは楽しい作業になりそうです。
作業が終われば、あなたの前には現在の自分の理想像や、非理想像、弱点と強み、さらにはそれらに対する一つ一つの対策リストまでが出来上がっています。これらは今後、ずっと大切に持ち続けてください。ことあるたびに見直して、都度リバイスするのもおすすめです。ただ、最初はこんなところにいた、と後から見直せるようにする方が、自分の進歩が見え、かつ実感できるのでおすすめです。
 

まとめ

夢に向かって努力したいけど、具体的に何をしていいのかわからないという方のために、自分マーケティングの初歩の初歩について考察してみました。実際に多くの企業では社内に「マーケティング部」なるものが設置され、予算も投じて様々な角度から相応のことを常に行っているので、ここでお伝えした「自分マーケティング」は、それらと比べれば比べ物にならないほど規模の小さいものです。しかし、そもそもマーケティングとは自らを客観的に眺めてジャッジを下し、どうすれば打破できるか、競合他社に勝てるかを考えることです。
これまで一人で孤軍奮闘を続けてきた人にこそ、自分をマーケティング的観点から眺めてみることで今後の歩の進め方について新たな気づきを持っていただけたら、それは本当に素晴らしいことです。せっかく料理という技と食という生きがいを持っているのですから、一度しかない人生、ちょっとだけビジネスの“策士”となって、もっと上を目指してみませんか。
 

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写真/Unsplash