これからの時代、お金とスマートに向き合える料理家を目指そう
料理とお金。これほど方向性の異なる言葉はないかもしれません。
料理の術(すべ)を伝えることで対価を得るのが料理研究家、あるいは料理教室主宰者の仕事ですが、レストランのようにサラダ1皿1,200円とか、フルコースディナー1人12,000円などとわかりやすく目に見える価格設定をすることができません。「どれだけ楽しく役に立つか」「どれだけ作りやすいか」「どれだけ美味しいか」など、その中身や今後のポテンシャルを評価してもらうのが料理教室なので、レッスン料に確固たる相場はなく、また、自分自身「この料金は妥当かどうか?」と問われたら、少し不安になる人も多いのではないでしょうか。
ましてや、相手が料理教室の生徒ではなく、レシピ開発や広告写真に掲載する料理制作業務を依頼してきたメーカーや代理店担当者、メディアの人間だったとしたら? 提示された金額に対し、それが安いのか高いのか、どうやって判断すれば良いのでしょうか。非常に難しい問題です。
料理研究家に限らず、フリーで働く人にありがちなのが「私、お金のことは本当に苦手で……」というタイプ。もっと言えば、ギャランティーや監修料について相手と交渉したり説明したりするのが苦手で避けたいあまり、特に理由もなく同業他者の例を鵜呑みにして金額を設定してしまったり、提示された金額に多少不満があっても「まぁ、そんなものか」と引き受けてしまい、後から次々に追加されていく業務量に悲鳴をあげたりなど、お金にまつわる悲劇は至るところで起こり得ます。
厳しい話になりますが、これからの時代、料理を生業(なりわい)としてビジネスを展開していきたいなら、「お金が苦手」だなんて言ってられません。なぜなら、「お金が苦手」というのはビジネスの世界では「仕事が苦手」と言っているのと同じだから。例え苦手でも、苦手だということが相手にわからない程度にスマートにこの話題には向き合うべきですし、双方が不愉快な思いをすることなく「いい仕事だった」という思いを共有するためには、お金のセンスを上げるのはとても大切なことなのです。