料理のプロフェッショナルにレシピの極意を教わる連載。料理教室を主宰する「料理の先生」による、リクエスト率ナンバーワンの人気レシピを紹介します。おいしさはもちろん、生徒たちに愛される理由が満載のメニューに隠れた秘密を探ります。
夏のホームパーティーに喜ばれる、おしゃれな大皿料理
自然と心がウキウキする夏真っ盛り。週末や夏休みを利用してホームパーティーを企画し、家族や友人と一緒にワイワイ過ごしたいという人も多いのではないでしょうか。
ホストとして自宅にゲストを招くときも、持ち寄りパーティーに参加するときも、悩ましいのがみんなに振る舞う料理選び。見た目が華やかで、ありきたりではなく、誰にでも喜ばれて、作るのにそれほど負担がかからない料理。そんなよくばりな条件を満たすレシピを教えてくれたのが、各国料理に精通した料理家の岡嶋美香さんです。
料理が好きで人と集まるのが好きだったという岡嶋さんは、料理留学でイタリアに1年、駐在でタイと中国に7年暮らした経験をもち、さまざまな国の人と食を通して触れ合ってきました。万人に愛され、食べる人に驚きと感動を与える気の利いた料理は、得意中の得意。豊富なレパートリーの中から、タイ南部の家庭料理「カオヤム」を披露してくれました。
「『カオヤム』は、タイのライスサラダ。レモングラス、こぶみかんの葉、ミントなどの爽やかなハーブ、しゃきしゃきとした色とりどりの生野菜、柑橘、干し海老、チリなどを、ジャスミンライスと一緒に盛り付けます。混ぜ合わせて食べると、酸味と辛味、そして食材それぞれの食感と香りが混然一体に。使っている食材はほぼ野菜なので罪悪感なく食べられますし、美しく盛り付ければ見栄えがするので夏のパーティーにはぴったりだと思います」
主宰する料理教室「Il Legame(イル・レガーメ)」では、“生徒たちが習ってみたい話題性のある料理”から“調理方法やレシピをものにしたい定番メニュー”、“食材や調味料の使い方を身につけたい料理”を、織り交ぜて紹介しているという岡嶋さん。「カオヤム」は、SNS映えする料理で習ってみたいと興味を引くメニューとして、またタイのフレッシュハーブの使い方とその風味を知ってほしいと、レッスンに採用したメニューだったといいます。
その狙いは見事的中し、生徒からは「色合いがきれいで、ホームパーティーで出すと歓声があがった」という声をはじめ、「爽やかなタイのハーブの香りにやられた!」「タイ料理好きでもこの料理は知らなかった」という感想が届くなど、レッスンで初めて食べたという人がほとんどで、味もルックスも深く印象に刻まれたようです。
食材はお好みでアレンジ可能で、香り、食感、色合いのバランスを考慮しながら、最低7~8種類の食材を使うとよいそうです。その際、レモングラスとこぶみかんの葉を入れると、グンとタイ料理らしい味わいになるとか。
「フレッシュなレモングラスとこぶみかんの葉は、アジア食材専門店やデパートなどで買い求める必要がありますが、このハードルさえ乗り越えれば、あとは食材を切るだけ。暑い夏に火を使わずに作れるうえ、食欲の落ちるときにも食べやすいと、夏の間何度もリピートして作ってくださった生徒さんもいらっしゃいました」
では、どんな食材を選んでも、おいしく、見栄えよく作るためのポイントは?
「まずはフレッシュなハーブを使うこと。そして、混ぜたときの味と食感のバランスがよくなるように、食材によって切る大きさと盛る量を変えること。特に、レモングラスやこぶみかんの葉は、食べたときに口に残らないように、ごく薄く切ってください。また盛り付けるときは、同系色のものが隣同士にならないように、彩りよく並べましょう。事前に時間をとって、紙やノートに食材の配置図案を描いておき、それを手本に盛り付けするのもおすすめです」