料理家が仕事の人脈を築く方法【ビジネスマナー塾】

フリーで仕事をしていると、ふとどうしようもない孤独にとらわれることがあります。毎日多くの生徒に囲まれて「先生」と呼ばれ、慕われていても、果たしてそれだけでいいのだろうか……と。周りを見回せば、自らの料理教室は大盛況だというのに、さらに企業やメディアとも積極的に手を組んで活躍している料理家もたくさん。彼らが持っていて自分にないものは何? そんな人のために、今回は「仕事に生きる人脈の築き方」について考えてみましょう。

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2018年12月11日

「先生」と呼ばれる職業の孤独

料理教室を始めたころ、もしくは料理を手段に初めてギャランティーを手にしたころに、他人から「先生」と呼ばれて驚いたという人は、案外多いのではないでしょうか。料理家というものは不思議な職業で、教員免許を持っているわけでもなく、選挙に当選して議員になったわけでもないのに、ある日突然「先生」と呼ばれるようになります。他人に何かを教える立場なので「先生」であることは間違いではないのですが、「最初の頃は、呼ばれてもそれが自分に対してだと認識できなかった」と笑う料理家も、たくさんいます。

多くの生徒たちに囲まれ毎日のように「先生」と呼ばれ続けているうちに、いつしかすっかり慣れて先生業も板についてきます。最初はただの自宅のリビングルームだった教室も、今ではレッスン中だけは心地よい緊張感が漂うようになり、名実ともに料理家としての暮らしが定着してきた、そんな感じではないでしょうか。

しかし、そんな頃になってふと、孤独を感じてしまう料理家もいるといいます。「教える料理に生徒が満足してくれているだろうか」「マンネリな料理だと思われていないだろうか」「生徒がリラックスしてくれるのはいいけれど、最近はおしゃべりに興じているばかりでただのお茶会と化している感じ……」など、不安に思うことはさまざま。ただ、ひとつ言えるのは、「先生」と呼ばれる立場でありながら、料理家というのは実はとても孤独な職業だということ。多くの生徒たちに囲まれていますが、基本的には会社や組織に属さないフリー稼業なので、孤独はある意味、当然です。ただ、料理教室主宰者の場合、いろんな職種の人々とふだんから触れ合うのではなく、限られたコミュニティーの中で仕事を続けている点で、他のフリーの仕事従事者に比べて少し世界が狭くなることもあるかもしれません。

もっと広い世界とつながりたい!

料理教室の先生として活躍し、愛されているのは素晴らしいことですが、もし前述のような孤独感がずっと続いて悶々としているという場合、原因は料理教室ではないかもしれません。もしかしたら外の世界とのつながりが不足しているのかも? その孤独感は「社会ともっとつながれる実感がほしい」という深層心理が発するメッセージではないでしょうか。

一口に「料理を仕事にする」と言っても、実は料理教室の先生というのは業界の中のほんの一部。このほかにも、社会には料理を手段に活躍できて収入を得る方法がたくさんあります。メーカーやブランドと組んで、食材やキッチンツール、テーブルウエアなどの企画に参画する人、料理のノウハウをテレビや雑誌などのメディアで紹介する人、イベントやセレモニーに出張して料理を提供するケータラー、新規オープンするレストランやカフェのメニューを開発する人、映画やドラマ、雑誌の現場でストーリーに合わせた“小道具”としての料理を作る人、給食やダイエットなどに向く健康食を考案する人など、枚挙にいとまがないほどです。

昨今はSNSやブログの発達によって、誰もが個人メディアになり得る時代。その結果、世界中の人とつながって行動を起こすことが容易になりました。料理教室の先生として日々忙しく過ごしていながら、さらに上記のような他ジャンルでも料理の腕を生かして活躍することはまったく難しいことではありません。実際に、テレビで見かける有名料理家と呼ばれる人々は、著書多数でスタイリング技術にも長けていて、ライフスタイルブランドを展開したりワインイベントにゲストとして呼ばれたりなど、忙しそうに輝いています。そんなマルチタスクな料理家になれるのであれば、トライしてみてもいいのではないでしょうか。

 

フリーの人に仕事をもたらすのは、人脈と実績だけ

「料理教室はがんばって続ける。けれども、外の世界とも積極的につながって、今とは別の収入ベースを作りたい!」。そう決意したら、具体的に何から行動をスタートすればいいのでしょうか。答えはシンプルです。「人脈を築き、他人から見てもわかりやすい実績を積むこと」、これに尽きます。

後者の「わかりやすい実績」とは、メディアへの露出数やメーカー企業との仕事実績を指すので、いきなりゲットできるものではありません。実績がないうちは、まずは自分という人材がいることを世に示すために、SNSでのプレゼンスを上げる努力をしたり、企業に信頼してもらえるようなホームページを作成するなど、“地道にコツコツ系”のアプローチを続けるのがおすすめです。

しかし、前者の「人脈を築く」というのは、今日からでも実践できる大切なビジネスストラテジー。「私は料理教室運営以外にも、こんなことができる」「こんなことがしたい」という意思表明を、さまざまな場所でさまざまな人に対して積極的に打ち出すことから始まります。では、誰に対してどんな方法でこれを伝えるのがよいのでしょうか。

人脈を築く方法① 積極的に外出しないとチャンスには出会えない

料理教室を営みつつ、家族の世話などもこなしていると、毎日がとにかく忙しく過ぎていきます。そんな中で人脈を新たに築くのは、確かに難しいかもしれません。しかし、ほぼ決まった顔ぶれの中で暮らしているだけでは、新たな人脈構築は厳しいものです。もちろん、生徒からの何気ない質問にハッとした気づきがあったり、家族が何度もお代わりをするメニューに着想を得ることはあるかもしれません。しかし、これまでとは異なる世界の人と出会うことから、新たな人脈形成はスタートします。なので、多少自分にスパルタ気味になってでも、「これまでに行ったことのない場所、参加したことのない毛色のイベントやセミナーに顔を出してみる」ということを、最低でも1年間、まずは実践してみてください。

もちろん、まったく興味の持てないものに手を出す必要はありません。ポイントは、少しだけ枠を広げてみること。例えば、ワインが大好きな人であれば、最近話題になっているクラフトビールや若い感覚を持つ造り手が開催する日本酒イベントなどに参加してみるのはいかがでしょう。海外のおしゃれなテーブルウエアに敏感で毎年そういったフェスに顔を出すという人であれば、今年は有田や益子、燕三条といった国内の器や道具の産地を旅してみるとか。出版社やテレビ局が開催するライフスタイルや食材のイベントに日頃から参加しているというのであれば、少し視線を変え、自分の年齢よりは上(あるいは下)の人たちが主催するパーティーなど、「これまでの定番とは、ちょっとだけ違う部分」をねらうのがコツです。

そして、そういったところに出かける際は、名刺を持っていくことを忘れずに。初対面の人にはなるべく名刺を渡す、SNSでアカウントを交換し合うなどして、その後もつながれるようにしておくことが大事です。人脈を作るためには、たくさんの人たちと交流することになるので、ビジネスライクでクールな名刺を準備し、SNSも料理に関することだけを投稿するような仕事用のアカウントを作っておくことは必至です。

人脈を築く方法② あいさつ代わりに質問しよう

これまでとは少しだけ違う世界に顔を出すようになると、初めて会う人と話すのが億劫だと感じる人もいるかもしれません。しかし、イベントやセミナーに参加しても「見るだけ・聞くだけ」の受動的な取り組み方だと、相手の心に自分という存在を残すことはできません。人脈を築くというのは、「売り込みをする」こととは少し趣きが異なりますが、気づいてもらえない・記憶してもらえない、というのでは人脈形成にはあまり役立ちません。

ではどうすればいいのでしょう。初めて会う人と会話するなんて難しいと思う人は、相手に質問をしてみるのはいかがでしょうか。内容はどんなことでも大丈夫。食材がテーマの場所であれば、おすすめの料理法や旬、栽培方法などを聞いてみるのもよいでしょう。これまでの自分と接点が見い出せないような場所であれば、「それは、何ですか?」程度の初歩的質問でもOKです。質問に対して快く答えを返してくれる人であれば、そこから会話を始めればよいし、快い返事がもらえない場合は早々に切り上げて次にいこう、ということでまったく問題ありません。

そういう場で大切なのは、出来るだけたくさんの人と会話することではなく、「話が合いそうな素敵な人と出会えた!」という楽しい記憶を作ることです。そういった場合、往々にして相手も同じような印象を持ってくれているはずなので、今後もコミュニケートが続けられたらそれこそ最高の収穫です。

人脈を築く方法③ ひとりでも楽しんで行動できるようになろう

人脈を築くのと何の関係があるのだろうと思われるかもしれませんが、「一人で行動する」のは、仕事人脈形成のために大事なこと。前述の①や②で紹介した方法を実践するとき、できれば一人で行うほうがおすすめです。気後れするかもしれませんが、一人でイベントやセミナーに参加したり初めて会う人と会話するときというのは、相手からすればたった一人の人と対峙するので、余計なことに気をとられずに済みます。

そして、最も大切なのは、ひとりだと必要な緊張感が持続すること。家族や友人と一緒だと気が楽というのはもちろんですが、相手に自分をアピールしなくてはならない時に、同行者のせいでそれを遮られてしまったり、会話をすべき瞬間に同行者の都合で場を移らなければならなくなったりと、会話に集中できなくなる可能性があります。ふだんから「先生」と呼ばれ慣れている人であれば、一人で行動することで、教える立場から離れてモノを言ったり質問したりできるという良さもあります。

知らない人と会話するのが大好きという社交家タイプの人も、注意したい点があります。初めて会う人というのは、その人とその後どんなつながりが持てるかなど、その時点では分かりません。なのであまりにも打ち解けすぎたり、個人的な情報をさらけ出してしまうのは避ける方が無難。また、相手が大変有意義な仕事につながる可能性を持つ人だと分かった場合に、自己PRをついつい一生懸命やりすぎるのもNGです。自分をアピールすることは重要ですが、初見の場でいきなり……という方法だと、よほど上手に話が出来る人でない限り、単に「前のめりな人」という印象しか残せません。これではもったいない話。

結局、話が終わって別れた後に「楽しい人と出会えたな」とお互いにふんわりした好印象を感じられるくらい、というのが最たる成功といえそうです。

人脈を築く方法④ 後日「連絡したい」と思ってもらえる工夫を

人脈を築くのに功を奏するのは、初対面で「この人、なんだか楽しいな」という印象をお互いに持てること。そして、この好印象を「この人と仕事をしたら面白そう」という興味にシフトしてもらうには、さらなる工夫が必要です。

多くの場合、イベントやセミナーなどで会った人とその後またつながる可能性というのは、さほど高いものではありません。よって、その後に再度コネクションを作るには、事前準備と事後フォローがものを言います。ここでは料理家を対象に考察していますが、フリーで仕事をする人全般にも言えることかもしれません。

まず事前準備について。これは、実力のほどがうかがい知れる“ビジュアルボード”をいつでも見られる状態で開放しておくのがおすすめです。たとえば、インスタグラムのサムネイル画面やフェイスブックの投稿内容といったSNSをふだんから多用して、そこに挙げるトピックは家族や友人向けに発信するのではなく、会ったことのない一般ユーザーが見ても「この人の仕事内容、かっこいいな、すごいな」と思われるような内容にしておくことです。今どきのビジネスシーンでは、「売り込み」というのはソフトに、しかし明確に伝える手段を持つほうがスマートです。人当たりはやわらかなのに、SNSをのぞいてみると素敵な仕事の実例のオンパレード、という料理家であれば、おのずと仕事の相談は増えていきます。

もしSNS以外にホームページを作る余裕があるのであれば、さらにそこで信頼感はアップします。SNSのプロフィール画面にホームページへのリンクを貼っておけば、未来のクライアントが「SNSを訪れて興味を抱き→ホームページを見て実力を実感し→仕事の相談を持ちかけてくる」という理想的な流れが望めます。

そして初めて出会った後のフォローについて。これは、自分から1回は軽い連絡を入れてみる、という方法をおすすめします。会って話した時に相手と名刺交換が出来ていれば、名刺にあるアドレスにメールを。SNSのアカウントを交換したのなら、そちらに軽い連絡を入れてみる。カジュアルな感じで話が出来た相手であれば、SNSメールでも問題ありません。自分のSNSのプレゼンス力に自信がある人であれば、その方がSNSを見てもらえるのでチャンスが増えるかもしれません。

連絡するのに理由は特に必要ありません。が、不審に思われると逆効果なので、簡単なあいさつ程度の連絡を入れます。「お話ができてよかったです。私は今までこの食材(道具、器などなんでも)を用いることはなかったのですが、近いうちに使ってみますね」とか、実際に試すなどした後で「こないだ教えていただいた件、とても興味深く実践しました。結果を添付しますね」などという理由で、頑張って撮影した料理写真を送ってみるなど。

長々と文章を書くのではなく、「どうも、よろしく」という軽い内容が正解です。しかし、この事後フォローがあるかどうかで、その後のやりとりのハードルはグッと下がります。

人脈を築く方法⑤ 常日頃からたくさんの“種まき”をする

たくさんのコツをお伝えしてきました。これまでまったく人脈作りに無頓着でやってきた人にとっては、少々面倒もあるかもしれませんが、かなり世界が変わるのではないでしょうか。特に、積極的に外に出るようになると、人脈形成より先に自分自身の生活にメリハリが生まれ、他の世界の実力者たちの活躍を目の当たりにすることによって意識も変わるかもしれません。

しかし、最後に少し厳しい話を。こういった人脈づくりへの努力というのは、頑張ってやったとしても仕事に結びつくものはごく一部です。というのも、会った者同士がどれだけ意気投合しても、仕事発注のタイミングまでがびしっと揃う可能性はまた別の話だからです。偶然会って、会話を交わして互いに好印象を持ち、その後は細々とSNSなどを通じてキープインタッチの関係を続け、何年も経ってから仕事の相談があった、というのでも十分な成功例と言っても過言ではありません。

よって、料理教室主宰以外でも活躍してみたいと思ったら、これまでにお伝えしてきたようなことを、常日頃からずっとやり続ける必要があります。視野を広く、同じグループで行動するのではなくいろんな人と交流する柔軟性を持ち、自分の得意分野や希望する仕事を自分の言葉で発信し続けること、つまり“種まきを欠かさない暮らしを続けること”で、いつしか少しずつ自分の仕事の幅を広げられるようになっていく、そういうイメージを持つことが肝心です。

まとめ

かつて料理の技術を一生懸命習得した日々を思い出してみてください。「人脈」というのも、地道な努力を続けることによって習得できる仕事のための技術です。しかし、料理技術やセンスなら自分自身がコツコツ努力を積み重ねれば身に付きましたが、人脈は人間相手のことなので、一筋縄にはいきません。
これまで過ごしてきた安心できる場所から思い切って少し外に出てみると、見える景色は変わります。難しいことや、新たに覚えなくてはならないことに出合う可能性も大ですが、確実に言えるのは、新たな人脈は、仕事や収入だけでなく自分の中に隠れていた別の可能性を示唆してくれるものであるということ。人生百年時代と言われる今、自分が飛び越えられるハードルの限界を自ら決めこんでしまうのはもったいないことです。素敵な人脈を築き、成長し続ける人生を目指してみませんか。

 

写真/Unsplash

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