特集記事

趣味と仕事の境界線はどこにある?

スキルアップ
2019年05月10日
「小さい頃から料理が好きで、趣味が高じてこの世界に」。この道に就いた理由を問われると、おそらくほとんどの料理家が疑いもなくこう答えているのでは? もちろんそれ自体に正解も不正解もありません。しかし、同じような理由で料理を生業(なりわい)にしていながら、売れっ子とそうでない人との差は歴然。そこにある違いとは何なのでしょうか。実は、「趣味が高じて」と言いながら、「趣味のまま」でいるうちは仕事にはなりません。趣味と仕事の境界にある歴然とした違いを考察してみましょう。 >>料理家こそ自分マーケティングが大切! >>効率的に人脈を築くにはこんな方法がおすすめ >>企業やメディアに愛される料理家の秘密

ライバルがどれほど多いか、把握することから始めよう

日本には現在、約7000ほどの料理教室が存在すると言われています。しかし、教室を主宰していないものの料理を仕事にしている人や、SNSやブログなど、実際に人と対面することはないけれど料理メソッドを世に伝え続けるような人もいます。そしてもちろん、レストランやカフェなど、料理を他人に提供することで金銭を得ている飲食店の数たるや、まさに星の数ほど。つまり、現在国内には、「料理」というファクターを使って仕事をしたり自分を世に表現している人が想像をはるかに上回る数で存在しているということになります。
そして、そのほとんどの人々について言えるのは、料理が好きだということ。中には好きすぎて悩みが尽きない状況に陥っていたり、逆にアーティストの域にまで達してしまっているような人もいるかもしれません。が、料理が嫌いなのにこの道に入った人はおそらくいないはず。元は嫌いだった人が面白さに目覚めて志したり、幼い頃から手作りのお菓子を周りに配っては喜んでもらっていたり、かつて必ず「料理が趣味」だった瞬間があったはずです。
「Kai House Club」に所属している約1200名の料理教室主宰者もそれは同様のことでしょう。
「先生はどうして料理教室を開こうと思ったんですか?」
「さぁ……。趣味が高じてずっと料理を作っているうちに、いつの間にかこうなっていたんですよね」
そんな会話が、日本全国津々浦々で日々繰り返されているわけです。
料理が趣味。それは素晴らしいことです。主婦向け雑誌やテレビでは、毎日のように、作り置きおかずや簡単レシピ、食材の使い回し方やマンネリにならない調理法が紹介されていて、裏返せばそれは「料理とは手間のかかる義務労働だ」と考えている人が大変多いということを示しています。
なのに料理教室主宰者のみなさんは、料理が大好きであるばかりか、その素晴らしさを人々に伝えようとまでする崇高な目標を持っている。生徒や身の回りの人が、あなたが教えたり作ったりする料理で幸せを感じたり人生を好転させたりしているのであれば、胸を張って自分に自信を持つべきです。
しかし今回、あえて考えたいのは「趣味のままで歩き続けていないだろうか?」ということ。料理教室をもっとたくさんの人々に利用してもらって盛り上げたい、料理を通じて企業やメディアと仕事がしたい、自身の料理を料理本や番組で発信していきたいと考えているのにうまくいかないようなら、もしかしたら今もまだ、あなたにとって料理は趣味のままなのかもしれません。

1 2 3 4 5

写真/Unsplash