季節を映し出す、椀盛り
江戸懐石近茶流の嗣家で日本料理家の柳原尚之さんが講師を務める、10月のプロに教わる逸品レシピ。最終回は、お椀物の「水晶鯛のすまし」を作ります。
柳原さんが伝える近茶料理は、文化文政から続く江戸懐石で茶心を配した料理道といわれ、季節感のある材料を吟味し、盛りつけの風情、器のあつかい、さらには膳組作法までも大切にしています。
今回作る「水晶鯛のすまし」は、葛たたき(葛打ち)にした鯛や車海老を椀だねにした上質なお椀。葛の衣をまとった食材につややかな透明感が出ることから、水晶椀とも言われています。
葛たたきは、魚介類や鶏のささみなどに下味をつけ、葛粉または片栗粉をまぶしてから茹でる日本料理の調理法。食材につるんとしたなめらかな食感を与えるとともに、うま味を閉じ込め、だしに素材の味が移るのを防ぐことができます。
鯛のサクに包丁で切れ目を入れながら、等間隔に切ります。きちんと手入れをした切れ味のよい包丁を使うと、切り口がきれいです。
切れ目を入れた鯛の表面全体に薄塩をふってから、葛もしくは片栗粉をふります。切れ目も広げ、刷毛を使って薄化粧をするようにまんべんなくまぶします
鯛や車海老を茹でる下煮汁には、だしをとったあとの昆布を使用します。昆布で味付けするのではなくうま味を逃がさないのが目的で、昆布がない場合はうま味調味料で代用できます。ふっくらと茹でたら、ほかの具材とともにお椀に美しく盛り付けましょう。また、鯛に飾る青柚子は、季節が終わったら黄柚子を使用してください。