水晶鯛のすまし

季節を映し出す、椀盛り

江戸懐石近茶流の嗣家で日本料理家の柳原尚之さんが講師を務める、10月のプロに教わる逸品レシピ。最終回は、お椀物の「水晶鯛のすまし」を作ります。

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柳原さんが伝える近茶料理は、文化文政から続く江戸懐石で茶心を配した料理道といわれ、季節感のある材料を吟味し、盛りつけの風情、器のあつかい、さらには膳組作法までも大切にしています。

今回作る「水晶鯛のすまし」は、葛たたき(葛打ち)にした鯛や車海老を椀だねにした上質なお椀。葛の衣をまとった食材につややかな透明感が出ることから、水晶椀とも言われています。

葛たたきは、魚介類や鶏のささみなどに下味をつけ、葛粉または片栗粉をまぶしてから茹でる日本料理の調理法。食材につるんとしたなめらかな食感を与えるとともに、うま味を閉じ込め、だしに素材の味が移るのを防ぐことができます。

鯛のサクに包丁で切れ目を入れながら、等間隔に切ります。きちんと手入れをした切れ味のよい包丁を使うと、切り口がきれいです。

切れ目を入れた鯛の表面全体に薄塩をふってから、葛もしくは片栗粉をふります。切れ目も広げ、刷毛を使って薄化粧をするようにまんべんなくまぶします

鯛や車海老を茹でる下煮汁には、だしをとったあとの昆布を使用します。昆布で味付けするのではなくうま味を逃がさないのが目的で、昆布がない場合はうま味調味料で代用できます。ふっくらと茹でたら、ほかの具材とともにお椀に美しく盛り付けましょう。また、鯛に飾る青柚子は、季節が終わったら黄柚子を使用してください。

葛粉や片栗粉をまぶした白身魚のつるんとした口当たりが魅力の葛たたき椀。お祝い事など特別な日も相応しい一品です。

2018年10月15日

レシピ作成
「江戸懐石近茶流嗣家」柳原尚之さん
調理時間
45分 ※内準備時間0分

材料4人分

鯛(皮付き)
一冊
車海老 
4尾 
片栗粉または葛粉
適宜
干ししいたけ
4個
昆布
1枚
そうめん
1把
青柚子
適宜
梅肉
適宜

本汁

だし
4・1/2カップ
小さじ1
淡口しょうゆ
小さじ1

手順

下準備

  1. 1

    干ししいたけは、前日から水で戻しておく。

作り方

  1. 1

    鯛は皮をつけたまま横長に置き、右から等間隔で包丁目を2本入れて3本めで切り落とし、これを繰り返す。車海老は頭と背わたをとり、殻をすべてむく。

  2. 2

    それぞれに薄塩をして、5分おいて味がなじんだら、刷毛を使って片栗粉を全体的にまぶす。

  3. 3

    水にだしを取った後の昆布を入れて、2番の昆布だしをとり、塩小さじ1を入れて沸かす。

  4. 4

    3が沸いたら少し火を弱め、海老を1尾ずつ入れて茹で、水晶をまとったような透明感が出て、海老の芯まで火が入ったら取り出す。同様に鯛も一切れずつ茹でる。

  5. 5

    干鍋に煮汁Aを合わせ、戻した干ししいたけを入れ、汁気がなくなるまで煮る。

  6. 6

    そうめんは、たっぷりの熱湯で茹でる。

  7. 7

    沸かしただしに、塩と淡口しょうゆを加えて本汁を作る。

  8. 8

    器にそうめん、海老、鯛、干ししいたけを盛りつけ、梅肉と千切りにした青柚子を鯛の上に飾り、熱々の本汁を張る。

撮影/平松唯加子  取材・文/江原裕子

愛用道具
「SELECT100 あくとり&かすあげ」(貝印)は、一般的な網タイプよりも洗いやすくて丈夫なステンレス板製。鍋に沿う形状でかすあげ機能とあくとり機能を兼ね備え、すくったアクを洗ったあとに鍋の中の具材もすくえます。

魚の三枚おろしや骨付き肉の下ごしらえにぴったりの「関孫六 フレキシブルナイフ」(貝印)。刃がしなり、骨に沿った切り分けがしやすいのが特徴。野菜や果物の皮むきにもおすすめです。

料理人紹介
柳原 尚之(ヤナギハラ ナオユキ)さん
1979年、東京都生まれ。江戸懐石近茶流嗣家(しか)、「柳原料理教室」副主宰。「近茶料理(近茶流)」を継ぐ家に生まれ、祖父・敏雄氏、父・一成氏より和の基本を伝授される。大学在学中は発酵食品学を学び、しょう油会社の研究員、帆船のキッチンクルーを経て、現在は一成氏とともに東京・赤坂「柳原料理教室」にて日本料理、茶懐石の研究指導に当たる。また、英語で和食を教えるなど、日本料理をグローバルに広げる活動も行う。