居酒屋フレンチのモダンおつまみ
食欲の秋に、「モダンおつまみ」をテーマにした逸品レシピを教えてくれるのは、東京・神楽坂のビストロ「BOLT au crieur de vin(ボルト オー・クリヨー・ド・ヴァン:以下、ボルト)」の仲田高広シェフ。銀座のフレンチビストロ「マルディ グラ」や四谷(※当時は恵比寿)の「レスプリ・ミタニ ア ゲタリ」で腕を磨き、フランス、オーストラリアで研鑽を積んだ若き実力派で、帰国後は赤坂の名酒場「まるしげ夢葉家」で居酒屋料理を経験。2017年に独立し、居酒屋スタイルのアットホームな店内で、本格フレンチをベースに和のエッセンスを加えた創作料理を提供しています。
料理とアルコールのペアリングも得意で、ワインをはじめ、日本酒、焼酎、ウイスキーまでを取り揃える仲田シェフ。今月は特別に、レシピに合わせたおすすめのお酒も教えてもらいます。
第一回目に習う「なすのなめろう」は、フレンチ風にいうと「太刀魚のキャビア・ド・オーベルジーヌ添え」。「キャビア・ド・オーベルジーヌ」はフランスの家庭料理で、種をキャビアに見立てたなすのペーストのこと。魚ではなく野菜であるなすを叩いてなめろうと名づけたユニークなメニューです。
今回は太刀魚を使用していますが、こちらは季節の魚でOK。その際、魚の種類に合った下処理を行ってください。「太刀魚の場合は、皮目を焼き切る必要があります。少し塩をふってなじませてからバーナーで軽く火であぶるか、バーナーがなければフライパンの強火で皮の面だけ焼いてください。生だと食感がかたいのですが、あぶると歯切れが良くなる。少し仕事をしてあげた方が、トロッとしたなすとの一体感が生まれます。もっと手軽に作りたいなら、刺身用の柵(さく)を使うのもおすすめです」
細部までていねいに仕事をして、最高の食感を引き出す
なすは炭化させるようなイメージでしっかりと焼きましょう。表面を焼き終わった段階ですでに中まで火が通っているので、裏面を焼くのは皮を焼き切るため。自宅のキッチンがIHの場合は、魚焼きグリルを使用してください。
流水で皮をむいたなすは、ねっとりした食感を持たせるため、なすの水分は残し、余分な水分のみ取り除きます。ペーパータオルなどで水気を取ったなすは、包丁で粗く刻んでラフに叩いてペースト状にしていきます。
ソースのベースとなるミントは、ペパーミントではなくスペアミントを選びましょう。メントールを主成分とするペパーミントに比べ、スペアミントの風味はやわらか。清涼感の中にほのかな甘みを感じます。「ソースの材料として、お好みでナッツを加えてもおいしいですよ」
おすすめのペアリングは?
「なすのなめろう」に合うアルコールとして、仲田シェフがおすすめするのは日本酒や焼酎といった和のお酒。「レモン汁とミントを加えたまったり感のあるなすには、酸がしっかりとしていて、強い辛口で、キレのいい日本酒。余韻があまり長すぎないものがいいですね。お店では、刈穂の『超弩級 気魄の辛口』をお出ししています。または、その対極にある少しの酸に甘みがあるお酒と合わせてもおいしいですよ」