ポルトガル南部名物、豚肉と貝を合わせた郷土料理
ここ数年、料理家たちがその食文化を知るためにこぞって訪ねている国があります。それが、スペインと大西洋に面したポルトガルです。日本と同じく魚介類を多く食べ、またカステラや天ぷらなど日本にはポルトガルにルーツを持つ食べ物が数々存在するなど、両国の食文化には高い親和性があります。
今月は、そんなポルトガルの家庭料理を中心に、本場の味をカジュアルに楽しめる東京・富ヶ谷のポルトガル料理&ワインバー「クリスチアノ」のオーナーシェフ・佐藤幸二さんに、ポルトガル料理の魅力がわかる3品を教えてもらいましょう。
第1回目は、ポルトガル南部・アレンテージョ地方の郷土料理、「豚とあさりのアレンテージョ風」です。国土の一部が海に面したポルトガルでは、料理に魚介類をよく使いますが、アレンテージョ地方では豚肉料理も名物になっています。日本人にはなじみの薄い肉と貝の組み合わせは、豚とあさりのうま味の相乗効果で飽きのこないしみじみとしたおいしさです。
伝統調味料で味に深みを与える
最初のポイントは食材の切り方。豚肉は、ひと口大よりもやや大きくカットしましょう。「豚肉は気持ち大きめにカットして、合わせるじゃがいもよりも存在感を出した方がおいしいですよ」と佐藤シェフ。カットした肉は調味料と合わせて冷蔵庫に一晩寝かせ、下味を付けます。
下味用に使った赤いペーストは、ポルトガルの伝統調味料「マッサ・デ・ピメンタオン(以下:マッサ)」。マッサは、赤パプリカを塩漬けにして発酵させたもので、凝縮したパプリカの甘みと爽やかな後味が特徴です。ポルトガルでは、日本人が醤油や味噌を使う感覚で使用されていて、肉料理のほか魚料理、炒め物、パスタなどでも活躍します。
火加減は常に中火で。弱火にすると豚肉から水分が出てしまうので、中火を保って手早く調理しましょう。
仕上げにフライドポテトを投入したら、具材の形を崩さないように注意しながら、じゃがいもにスープをよく吸わせるように混ぜ合わせます。このとき、一旦具材をフライパンの片側に寄せてヘラで軽く押さえ、逆側を下に傾けてスープを溜めたところにじゃがいもを投入すると、うまく吸わせることができます。