人気店のシェフに3つのレシピを教えてもらう新連載がスタートしました。思い出のレシピ、お店で人気のまかないレシピ、そして旬の食材を使ったレシピの中から、ひと皿ずつ紹介していきます。10月のゲストにお迎えするのは東京のレストランシーンをリードし続ける『アロマフレスカ』の原田慎次シェフ。イタリアンの名店『ヂーノ』にて19歳でスタートさせたキャリアの中から、思い出のひと皿として選んでくれたのは定番・カルボナーラです。シンプルなレシピながら、原田シェフならではのきめ細かいコツが随所に。あらためて、シェフに作り方を教えていただきましょう。
しっとり感を味方につけた王道のカルボナーラ
原田さんとカルボナーラの出合いは、なんと14歳のとき。「当時は本格的なイタリアンのレシピ本はまだ少なくて、たまたま見つけた本を片手に見よう見真似で家族に作ってみたのがカルボナーラでした。これが大失敗(笑)、全然おいしくなかったんです」(原田さん)。それから時は流れ、六本木「ヂーノ」(現「リストランテレーネア」)の佐竹 弘シェフのもとでイタリアンの基礎を学びはじめた原田さん。修業を積むなかで「佐竹さんに初めて褒められたのが、このカルボナーラだったんです。よく覚えています。嬉しかったですね」と思い出を語る原田シェフ。今も原田さんのカルボナーラが食べたいとリクエストする常連も多いといいます。
銀座『アロマフレスカ』のメインダイニングに立つ原田慎次シェフ。
まずは卵液を作ります。「カルボナーラは本来はとても気軽な料理。パスタを茹で始めてから、卵を割って卵液の準備を始めるくらいでいいんです」(原田さん)。さらに重要なのが水分。「自宅で作るときって、パサパサしてしまいがちでしょう?だから、卵液を作る段階で水を少し加えておくといいですよ。普段カルボナーラを作り慣れていない人でも、卵液が扱いやすくなります」。
ボウルに黄身を入れます。ひとり一個。
そこに、すりおろしたパルミジャーノ・レッジャーノを加えて混ぜます。
生クリームの分量は、試行錯誤の末、ひとり大さじ1にたどりついたといいます。
卵液に水を少し加えておくのが原田さん流。
スパチュラで手早く、丁寧に混ぜ、なめらかにします。
パスタを茹でる間に、グアンチャーレを炒めはじめます。オリーブオイルをひいたフライパンを中火〜強火で熱し、グアンチャーレを焼きます。オリーブオイルをひく理由は、しっとり感を保ったまま、グアンチャーレの余分な脂分だけを誘い出しやすくなるから。肉の柔らかい噛みごたえを残しておきたいので、あまりカリカリになるまで炒めすぎないように気をつけます。出てきた脂はすべて拭き取ってしまうのではなく、半分程度は残しておくこと。ここにパスタの鍋から茹で汁を少し取って加え、鍋肌についた旨味をまとわせます。もしグアンチャーレが手に入らない場合は?「豚バラのブロック肉に多めに塩をして、30分以上置いたものを使うほうが、肉の旨味がダイレクトに感じられて良いと思います。市販のベーコンや、燻製香のついたような製品はあまりおすすめしません」。
グアンチャーレはオリーブオイルをひいたフライパンで炒め、このくらいの色になったらOKです。脂はすべて取りきらず、半分ほど残します。
パスタの茹で汁を少しフライパンにとり、鍋肌についた旨味を湯にまとわせたら、茹であがったパスタを加えます。よく混ぜ、フライパンを傾けてこのくらいの水分量が残っているのがベスト。
卵液を加えたら、トングを使って手際よくパスタと卵液をなじませます。鍋肌にほんの少しソースがついている状態が、正しいしっとり状態のサイン。塩を少し足し、フライパンをあおるようになじませれば完成です。
深さのあるシンプルな白い器に盛り付けます。スパゲッティはひとり70グラムほど。あらびきの黒胡椒の風味も大事なアクセントです。
原田さんがこの日使った料理道具。左から、卵液を混ぜているo.e.c. ミニ マイティー・スパチュラ(黒) 、ロック式で使いやすいSELECT100 ミニトング 18cm 、人気のo.e.c. フライパン 25cm(ふた付)は原田さんも「いくつもの鍋を同時に扱わなくてはならない厨房では、短い取っ手が便利です」と絶賛です。
撮影/中村香奈子