牡丹海老のコンフィ

人気店のシェフに2つのレシピを教えてもらう連載企画。旬の食材を使ったレシピと、プロの技のレシピをご紹介していきます。1月は、恵比寿にあるイタリアン『sel sal sale(セルサルサーレ)』のシェフ・濱口昌大さん。今回は、プロの技のレシピ「牡丹海老のコンフィ 根セロリマヨネーズ」を教えていただきました。

主な材料は、牡丹海老と根セロリといたってシンプルなのに、見栄えも味わいも期待以上の仕上がりにしてくるのが、濱口昌大シェフです。

「目指しているのは、一口目で“美味しい!”と言われる料理です。頭で考える美味しさにはしたくないんです。このレシピは、海老と根セロリという2つの素材をどこまで美味しく仕上げるか、そんな挑戦から始まりました。全く異なる食材のつなぎ役になったのが、塩。うちでは、山口県の百姓庵の天然塩を使っています。うまみが強いので、野菜そのものの美味しさを引き出してくれます」

この料理の美味しさを左右するのが、牡丹海老の火入れと根セロリの香りです。
「微妙に火が入ったようなレアに近い食感で仕上げる海老は、温度管理が大切です。40〜44℃をキープしながら、じっくり加熱してください。根セロリは、皮が香りが強いので、水から煮出して出汁をとることで、余すことなく使います。香りは人の記憶に残り、食欲をそそりますよね。あと、メインではないのですが、昆布ブラックオリーブパウダーも、ぜひ作ってみてください。オリーブと昆布という、イタリアと日本をそれぞれ代表するうまみ食材をかけ合わせたら、相乗効果でいい味に。アクセントになりますよ」

どこか飄々とした雰囲気もありながら、その内面は実に実直。キレイに書き記されたレシピノートが、料理への熱量を表しています。
「レシピは毎年正月に振り返って、ブラッシュアップしています。美味しかったものは翌年も採用しています。」

牡丹海老を40℃に熱したオリーブ油で加熱する。「低温の油で加熱することで、身はねっとりとした半生状態に仕上げながら、甘みを引き出すことができます。油にも海老のいい風味がついているので、炒め物に使うなど活用してください」

根セロリクリームを作る。「玉ねぎは、旨味の役割。素早く旨味を引き出すことができるよう、繊維を断ち切ってスライスしておくことがポイントです。あとで白いマヨネーズと合わせるので、白く仕上げて焦がさないようにしましょう。全体に油が回って、ツヤが出てくればOK。玉ねぎの甘みが最高点になった証です」

スライスした根セロリを加えて炒める。「根セロリは香りの役割なので、長時間炒める必要はありません」

バランスを見ながら盛り付ける。「余力があれば、足の殻は低温で揚げて、塩を振って食べるとおいしいですよ」

低温でゆっくり火を入れたからこそ実現した、舌の上でとろけるようなねっとりとした口当たりの牡丹海老は、濃厚な甘味も抜群です。まろやかな根セロリのクリームの芳しく上品な香りとともにいただきましょう。

2021年01月26日

レシピ作成
濱口昌大さん
調理時間
60分 ※内準備時間0分

材料1人分

牡丹海老(殻付き)
1尾
オリーブ油
適量

根セロリクリーム

根セロリ
100g
500g
玉ねぎ
25g
少々
オリーブ油
適量

マヨネーズ

卵黄
18g
マスタード
8g
2g
白ワインビネガー
5g
オリーブ油
150g
六分立ての生クリーム(38%)
183g

昆布ブラックオリーブパウダー

ブラックオリーブ
10g
昆布
乾燥させたブラックオリーブと同量

仕上げ

オリーブ油
少々
少々
貝割れ菜
少々
レモンの皮
少々

手順

  1. 1

    牡丹海老のコンフィを作る。鍋にオリーブ油(海老がかぶるくらい)を入れて40℃に温め、牡丹海老を入れて蓋をし、10分加熱する。ざるに上げ、粗熱がとれたら頭をとって殻をむき、身は食べやすい大きさに切る。

  2. 2

    根セロリクリームを作る。根セロリは皮をむき、鍋に分量の水とともに入れ、20分加熱して出汁をとる。ざるで皮をこす。

  3. 3

    玉ねぎは繊維を断ち切るようにスライスする。皮をむいた根セロリは2〜3mm厚さの半月切りにする。

  4. 4

    フライパンにオリーブ油を熱し、3の玉ねぎと塩を入れ、甘みを引き出すように炒める。透き通ってきたら根セロリと塩を加え、油が全体に回るまで炒める。2の根セロリの出汁を全量加え、材料がかぶるくらいまで水を足し、20分くらい煮る。火が通ったら、ミキサーでなめらかになるまで攪拌し、裏ごしする。

  5. 5

    マヨネーズを作る。ボウルに、油以外の材料を入れて泡立て器で混ぜ、オリーブ油を少しずつ加えながらその都度よく混ぜる。ハンドブレンダーがあれば簡単。

  6. 6

    昆布ブラックオリーブパウダーを作る。ブラックオリーブは耐熱容器に並べ、ラップをかけ、700Wで2分加熱し、取り出してペーパータオルで出てきた水気を拭き取る。この工程を、オリーブが乾燥するまで様子を見ながら繰り返す。目安は3回くらい。乾燥させたブラックオリーブと、これと同量の昆布をミルサーに入れて粉状にして出来上がり。

  7. 7

    根セロリマヨネーズを作る。4、5、生クリームを合わせ、よく混ぜる。

  8. 8

    器に、7をスプーンで円状に敷き、1の牡丹海老の身と頭をのせる。身に塩とオリーブ油をかけ、6の昆布ブラックオリーブパウダー、貝割れ菜、レモンの皮をあしらう。

撮影/田尻陽子 取材・文/岡井美絹子

濱口昌大さん
1979年、大阪生まれ。25歳で「リストランテ ルクソール」のマリオ・フリットリ氏に師事。その後「六本木農園」でシェフに就任。2010年に渡伊し、一つ星店「リストランテ ソットラルコ」で修行。イタリアの食文化や哲学に影響を受け、ヨーロッパや北欧各国を巡る。帰国後、2014年に、池尻で「セルサルサーレ」を開店し、2017年に恵比寿へ移転。飲食コンサルタント、また、料理専門学校「レコールバンタン」の講師としても活躍中。

SHOP INFORMATION
店名:sel sal sale
住所:東京都恵比寿西1-16-7 1F
Tel:03-6416-5230
営業時間: 18:00~23:30LO
定休日:日