甘鯛のウロコ焼き

人気店のシェフに2つのレシピを教えてもらう連載企画。旬の食材を使ったレシピと、プロの技のレシピをご紹介していきます。1月は、恵比寿にあるイタリアン『sel sal sale(セルサルサーレ)』のシェフ・濱口昌大さん。今回は、旬の食材を使ったレシピ「甘鯛のウロコ焼き かぼちゃと柚子のピューレ」を教えていただきました。

その身の甘さから名付けられたと言われる“甘鯛”と、ほっくりとした甘さが女性にも人気のかぼちゃをソースに使った、おもてなしにもぴったりの華やかな一皿。濱口さんも“今年のベスト”と名言するほど、自慢のレシピです。

「実はかぼちゃって苦手な食材だったんですよ。あの甘味が、どうも食べ疲れてしまって・・・。でも、かぼちゃの鮮やかな黄色はキレイだし、この色味を生かしてうまく使えないかといろんな組み合わせを試しました。その結果見つけたのが、柚子。柚子の爽やかな香りと味がかぼちゃの甘さをバランスよくまとめてくれました。かぼちゃの甘さによって、柚子の果汁の分量は調整してください。また、かぼちゃはコクのあるものと相性がいいので、甘鯛が手に入らないときは、ぶりなどの脂がのった魚もおすすめです」

ウロコまでおいしく食べられる甘鯛は、カリカリに香ばしく焼き上げることがおいしさの秘訣です。

「ウロコを逆立て、水で表面をしめらせてから動かさずに強火で焼くのがポイントです。料理をするときは、“同化”か“対比”を考えながらやっています。たとえば、食材が持つ甘さを引き出して同化させる、もしくは、食感のコントラストを際立たせて対比させる。こうすることで味の調和をとったり、最後まで飽きずに食べられるんですよね。今回の一皿だと、鯛のウロコのカリカリした食感、身のしっとり感、ソースのまったりさと、異なる3つの食感を入れることで、最初から最後までおいしく食べられるように計算しています。味わいの面だと、かぼちゃの甘味、柚子の酸味、柚子の皮の苦味と、さまざまな味の要素が一体となっています」

かぼちゃは、バターにかぼちゃの黄色が溶け出すまで炒めるのがポイント。「かぼちゃは加熱することでコクが出て、甘鯛の身の甘さと合います」

かぼちゃと柚子の皮を一緒に20分煮る。「柚子のえぐみを生かしたいので、あえて柚子の皮の白いワタはつけたまま加熱します。野菜から味が出るのに20分かかりますが、あまり長く煮過ぎると風味が飛んでしまうので注意してください」

鯛のウロコを指でめくるようにして逆立てる。表面を水でスプレーすることで、焼いた時にウロコが立ちやすくなる。

多めの油で、ウロコが立つまでは強火で動かさずに火を入れる。フライパンの周囲に白い煙が出るくらいの火加減をキープする。

最後に上下を返してさっと火を入れる。

ウロコが立っている状態。このまま少し休ませて余熱で火を入れる。

 

甘鯛のウロコのサクサクとした軽快な食感やしっとりとした身の絶妙な火入れ、ほどよく甘さが引き締められた、柚子の清らかな香りをまとったかぼちゃのピューレが、記憶に残るほど鮮烈なおいしさです。

2021年01月21日

レシピ作成
濱口昌大さん
調理時間
60分 ※内準備時間0分

材料4人分

甘鯛
1尾
かぼちゃ(皮と種をとる)
120g
柚子
13g
無塩バター
20g
1g
メープルシロップ
16g
150g
オリーブ油
適量

手順

  1. 1

    かぼちゃは5mm幅に切る。

  2. 2

    柚子は皮と果肉にわけ、果汁を絞る。皮は、白いワタをつけたまま5mm幅程度にスライスし、水から茹でて沸騰したらざるに上げる。

  3. 3

    鍋にバターを溶かし、1と塩を入れ、表面にさっと火を入れるように炒める。

  4. 4

    3に茹でこぼした2の皮と水を加えて加熱し、沸騰してから20分ほど煮込む。火を止めて、メープルシロップと2の果汁を加える。ミキサーで攪拌して裏ごしする。

  5. 5

    甘鯛はウロコをつけたまま三昧におろし、骨を除き、1切れ50gに切る。ウロコを指で逆立て、両面に軽く塩(分量外)を振る。水を入れたスプレーで表面を軽くしめらせる。

  6. 6

    フライパンに多めのオリーブ油を熱し、5を皮目を下にして並べる。ウロコが立ってくるまで強火で加熱し、最後に上下を返してさっと焼き、余熱で火を通す。

  7. 7

    器に4を敷き、6をのせる。

撮影/田尻陽子 取材・文/岡井美絹子

濱口昌大さん
1979年、大阪生まれ。25歳で「リストランテ ルクソール」のマリオ・フリットリ氏に師事。その後「六本木農園」でシェフに就任。2010年に渡伊し、一つ星店「リストランテ ソットラルコ」で修行。イタリアの食文化や哲学に影響を受け、ヨーロッパや北欧各国を巡る。帰国後、2014年に、池尻で「セルサルサーレ」を開店し、2017年に恵比寿へ移転。飲食コンサルタント、また、料理専門学校「レコールバンタン」の講師としても活躍中。

SHOP INFORMATION
店名:sel sal sale
住所:東京都恵比寿西1-16-7 1F
Tel:03-6416-5230
営業時間: 18:00~23:30LO
定休日:日