蓮根もちと煮穴子菊花あん

人気店のシェフに2つのレシピを教えてもらう連載企画。旬の食材を使ったレシピと、プロの技のレシピをご紹介していきます。10月は、赤坂にある日本料理店『赤坂 おぎ乃』の料理人・荻野聡士さん。今回は、プロの技のレシピ「蓮根もちと煮穴子、菊花あんかけ銀杏」を教えていただきました。

蓋をとった瞬間に広がる香りと景色に、思わず歓声が上がる、「蓮根もちと煮穴子、菊花あんかけ銀杏」。食通からも絶賛される味わいは、こだわりの素材はもちろん、丁寧な下ごしらえにあります。

「蓮根は、土の質によって性質が異なります。今回使った加賀蓮根は、でんぷん質が多いので、もちもちした食感が特徴です。蓮根もちには最適ですよ。穴子は、味わいを左右する下処理が大切ですので、霜降りの温度とぬめりをしっかりとる、このポイントを押さえてください。また、出汁は何よりも香りが大切ですので、削り立ての鰹節を使って一番出汁をとっています」

数々の名店で腕を磨いてきた荻野さんですが、それぞれの店で学んだことが今の自分に生きていると言います。
「原点は京都ですね。技術はもちろんですが、豊かな自然に育まれた日本の四季やおもてなしの大切さ、しつらえの心といったものを実感しました。東京では逆に、都会の中でどのように世界観を創り上げるかということや、カウンターならではの料理の見せ方を学びました。その両方を表現できるのが、自身の強みだと思っています。日本料理というと敷居が高いと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、リラックスして過ごせる居心地のいいお店を目指しています」

穴子の下処理をする。「沸騰した湯だと温度が高すぎて、身が皮ごと縮れてしまうので、85〜90℃の湯を用意してください。まな板に置くときは、頭側を下にして置いて湯を流すと、身が薄い尾の方に火が入りすぎることがありません」

皮の上を軽く包丁でこそげると、臭みの原因となるぬめりが取れる。

卵の素は、卵黄に油を少しずつ加え、泡立て器でもったりするまで混ぜる。目安は5分くらい。「卵の素はコクを出したいときに使います。鶏肉のミンチに加えるとふわっとした食感になります」

白ごまは香りと旨味が引き立つので、鍋で乾煎りしてからすり鉢で半ずりにする。すりおろした蓮根や葛粉などを加えて混ぜ合わせる。葛粉を入れるととろっとした食感がプラスされる。

蓮根もちは、火にかけて混ぜると粘りが出るので、焦がさないように注意。「蓮根もちは、蒸すよりも、火にかけながら鍋で練る方が好みの柔らかさに調整しやすいです。穴子と同じくらいの食感にしたいので、柔らかめに仕上げてください」

蓮根もちの形を整える。指の関節を使って鹿の子模様をつける。

べっこう餡は薄めのとろみをつける。「水溶き葛粉を入れたら、一度しっかり沸かすのがポイントです。粉っぽさがなくなります」

器に、れんこんもち、穴子の順に盛り、べっこう餡を張る。ぎんなん、わさび、柚の皮をあしらう。

もっちりとした蓮根もちとふっくらした穴子に、艶やかなべっこう餡をまとわせた美しい一皿です。秋を感じさせるぎんなんをあしらって、季節の訪れも味わいましょう。

2020年10月13日

レシピ作成
荻野聡士さん
調理時間
50分 ※内準備時間10分

材料2~3人分

卵の素(作りやすい分量)

卵黄
1個
塩 (撮影では、うず塩(赤)を使用)
0.6g
サラダ油
60ml

蓮根もち(作りやすい分量)

加賀蓮根
1kg
白ごま
小さじ1
葛粉
大さじ1
卵の素
大さじ1
少々
揚げるときの葛粉(または小麦粉)
適量
揚げ油
適量

穴子(2〜3人前)

穴子(おろしたもの)
150〜200g
A
├水
500ml
├酒
100ml
├濃口醤油
75g
├みりん
75g
└砂糖
30g

べっこう餡(2〜3人前)

出汁
240ml
みりん
20ml
濃口醤油
20ml
水溶き葛粉
適量

仕上げ(2〜3人前)

菊花(黄色、紫色)
各適量
ぎんなん
6〜9個
柚子の皮
少々
わさび
少々

手順

下準備

  1. 1

    卵の素を作る。ボウルに卵黄と塩を入れ、泡立て器で混ぜる。油を少しずつ加えながら、もったりするまで泡立て器で混ぜる。

  2. 2

    穴子の下処理をする。流しにまな板を斜めに立てかけ、穴子の皮目を上にし、85〜90℃の湯をかける。氷水に落として、包丁でぬめりを取る。

作り方

  1. 1

    下処理した穴子は、鍋に入る大きさに切る。鍋にAと穴子を入れて中火にかけ、落とし蓋をする。煮汁が少しポコポコと煮立つくらいの火加減を保ちながら、約15分を目安に煮る。火から下ろして、鍋の中でそのまま冷ます。

  2. 2

    蓮根もちを作る。軽く炒ったごまをすり鉢に入れ、半ずりにする。

  3. 3

    2のすり鉢にすりおろした蓮根、卵の素、葛粉の順に加え、その都度よく混ぜ合わせる。最後に酒を加えてよく混ぜる。

  4. 4

    3を鍋に入れ、中火くらいの火加減で、絶えず木べらで混ぜる。まとまりが出て、ほどよい柔らかさになったら、バットに上げる。粗熱がとれたらラップをする。

  5. 5

    べっこう餡を作る。鍋に出汁、みりん、醤油を入れて煮立て、水溶き葛粉で薄めのとろみをつける。

  6. 6

    4は、鹿の子模様をつけて形を整える。薄く葛粉をまぶし、180℃に熱した油できつね色に揚げ、油をきる。ぎんなんは、透き通るまで揚げる。

  7. 7

    柚の皮は、2〜3mm角のごく細かい角切りにする。菊花はさっとゆでる。穴子はスチームオーブンで温め、両端を斜めに切り落とし、器に合わせて切る。

  8. 8

    盛り付ける。器に、れんこんもち、穴子の順に盛り、べっこう餡を張る。菊花、ぎんなん3つ、わさび、柚子の皮をあしらう。

撮影/田尻陽子 取材・文/岡井美絹子

「赤坂 おぎ乃」オーナーシェフ・荻野聡士さん

1987年生まれ。高校卒業後、京都の名門「嵐山 吉兆」で8年間修行を積み、「銀座 小十」で5年、同系列の「銀座 奥田」で料理長に就任。2020年3月に独立し、「赤坂 おぎ乃」をオープン。その実力は早くも話題で、予約は数ヶ月先まで埋まっている。父は片岡鶴太郎氏。

SHOP INFORMATION

店名:赤坂 おぎ乃
住所:東京都港区赤坂6-3-13
Tel:03-6277-8274
営業時間:17:30~23:00
定休日:日