人気店のシェフに3つのレシピを教えてもらう連載企画。旬の食材を使ったレシピ、思い出のレシピ、人気のまかないレシピの3品を教わります。1月はイタリアンやフレンチをベースに旬の素材を生かす料理『クラージュ』の大井健司シェフ。3番目のテーマ“まかない料理”はトスカーナの幻の店にいた頃によく作っていたという「オルツォット」。プチプチした麦を鶏や野菜の出汁で炊いた、身体にもやさしい味わいです。幻の店、というのも気になります。
「クラージュ」シェフ・大井健司さん。
鶏や野菜の旨味と修業時代の思い出がぎゅっと詰まった、麦のおかゆ
今は無きトスカーナの銘店「レ・トレ・ルネ」で修業していた頃、休日になると大井さんが寮で同僚と作っていたのがオルツォット。レストランでよく余る麦とレンズ豆をベースに、その時期の野菜を使って作る麦のおかゆのような一皿です。「当時肉は買えなかったので、豆が肉の代わりでした。豆自体の美味しさを知ったのも、このときかもしれません。チーズやバターをプラスしてコクを加えます。イタリアでは、野菜は種類が豊富で季節によっていろんなものを使います。旬の野菜をたっぷり入れると、味わいに変化が出て楽しめます。日本で作るときは、麦はもち麦がおすすめ。イタリアで食べていたような、プチプチした食感になります。いまでもこれを食べると、当時を思い出して懐かしくなります。仕上げに加えるトマトは生の酸味を生かしたいので、火を入れ過ぎないように注意してください」。
では早速、作り方を教わっていきましょう。
小鍋にみじんぎりしたにんにくとオリーブオイルを入れて弱火で加熱する。香りが立ったらごぼうを加え、透きとおるまで炒める。ブロードを加え、茹でたもち麦とレンズ豆を加える。
中火で4~5分煮たらパルミジャーノレッジャーノ(粉末)を加え、混ぜながらさらに火にかけて水分を飛ばす。麦がもったりしてきたら塩で調味しバターを加え、弱火で溶かし混ぜる。
溶けたら鍋を火から外してトマトを加え、軽く混ぜる。混ぜすぎるとトマトの酸味が消えて全体がトマト味になってしまうので注意。
器に盛り、仕上げにディルをあしらう。
大井さんがこの日使った料理道具。o.e.c. 片手鍋 18cm (ふた付)、o.e.c. マイティー・スパチュラ(赤) です。