伊勢海老観月盛

人気店のシェフに2つのレシピを教えてもらう連載企画。旬の食材を使ったレシピと、プロの技のレシピをご紹介していきます。今回は、西麻布にある和食店『伊勢 すえよし』の料理人・田中佑樹さん。プロの技のレシピ「伊勢海老観月盛」を教えていただきました。

美しい朱塗の丸盆に盛り付けられた、衣が異なる丸い4種類の揚げ物。今回ご紹介していただく「伊勢海老観月盛(いせえびかんげつもり)」は、秋の風流な行事にぴったりの料理です。

「日本らしい秋の風物詩といえば、十五夜があります。そんな十五夜から着想を得たのがこの料理。お月見にお供えする月見団子を、4種類の饅頭で表現しました。伊勢海老、れんこん、かぼちゃを、それぞれ異なる衣で揚げて、見た目も楽しい逸品に。れんこんとかぼちゃの饅頭は、独特の食感がクセになると思いますよ。お店では、9月の献立の強肴としてお出ししている人気の品です」

作り方で気をつけるポイントはありますか?

「伊勢海老は、あおさのりとアーモンドスライスの衣で風味と食感の妙を楽しんでもらいます。あおさのりをまぶしすぎると、海苔の風味が前面に出過ぎるので気をつけてください。高温で表面をカリッと香ばしく、中はレアに仕上げるのがポイントです。伊勢海老は、生でも焼いてもおいしいですが、とくに揚げるのが個人的に好きですね。伊勢海老が手に入らない場合は、車海老でもおすすめです」

伊勢海老に薄力粉をまぶすときは、ところどころにまぶすのがポイント。まんべんなく粉をつけてしまうとあおさのりがくっつきにくくなるので注意。

れんこんは、粗めと細かめのみじん切りにすることで、食感のコントラストを楽しむ。包丁で細かく切るのが難しければ、フードプロセッサーを使ってもよい。

れんこん饅頭のたねがゆるければ、片栗粉か上新粉を加えて調節する。片栗粉なら、カリッとした食感に、上新粉ならもちもちした食感になるので、好みで。

かぼちゃ饅頭のたねは、スプーンで14gずつにし、かぼちゃの皮とパンプキンシードの種(*)が入った衣のバットに落とす。*店では、生のかぼちゃの種を、130~140度のオーブンで30分ローストしたものも使用している。

丸く形を整えて、衣をまんべんなくまぶす。

れんこん饅頭とかぼちゃ饅頭はしっかり火を通したいので、先に揚げ油に投入する。火が中まで通ったら、伊勢海老を加える。

伊勢海老は加熱しすぎると身がかたくなるので、10秒ほど揚げればOK。すぐに網で引き上げる。

香ばしさと香りを堪能する伊勢海老、もちもち食感のれんこん饅頭、ほっとする甘さのかぼちゃ饅頭。どれもあともうひとつ、とつい手が伸びる味わいです。香り豊かな無濾過生原酒といただくのもオツです。

2020年08月20日

レシピ作成
田中佑樹さん
調理時間
60分 ※内準備時間0分

材料作りやすい分量

伊勢海老(さばいたもの)
一尾分
あおさのり
適量
薄力粉
適量
てんぷら粉
適量
アーモンドスライス
適量

れんこん饅頭

れんこん
100g
A
├上新粉
5g
├餅粉
5g
├片栗粉
5g
├薄口醤油
2.5cc
├みりん
2.5cc
└塩
少々
片栗粉
適量

かぼちゃ饅頭

かぼちゃ
150g
B
├薄力粉
45g
├上白糖
45g
├濃口醤油
4.5cc
└塩
少々
パンプキンシード
適量
揚げ油
適量
あれば海老塩
適量

手順

  1. 1

    伊勢海老は、9〜10gに切り分ける。

  2. 2

    1の半量は、薄力粉、あおさのりの順にまぶす。残りは、水で溶いたてんぷら粉、アーモンドスライスの順にまぶす。

  3. 3

    れんこん饅頭を作る。れんこんは、30gを粗みじん切り、残りはみじん切りにする。3〜6分ほど水にさらして、よく水気を拭き取る。

  4. 4

    3をボウルに入れ、Aを加えてよく混ぜ、一口大に丸めて片栗粉をまぶす。

  5. 5

    かぼちゃ饅頭を作る。かぼちゃは1cm幅に切って皮を厚めにむき、さらに端から小さく切る。蒸し器で7分加熱し、熱いうちにフードプロセッサーにかけるか裏ごしして、なめらかなペースト状にする。

  6. 6

    かぼちゃの皮とパンプキンシードは細かく刻み、バットに入れておく。

  7. 7

    ボウルに5を入れ、Bを加えてよく混ぜる。一口大に丸めて、6の衣をまぶす。

  8. 8

    180℃の揚げ油で、4のれんこん饅頭と7のかぼちゃ饅頭を揚げる。火が中まで通ったら、2の伊勢海老を入れ、10秒経ったらすべて網に上げて、油をきる。

  9. 9

    器に8を盛り、あればえび塩を添える。

撮影/田尻陽子 取材・執筆/岡井絹美子

伊勢すえよし 田中佑樹さん
料理屋を営む父の背中を見て育ち、「4歳のときには自分で目玉焼きを作った」という根っからの料理人。高校卒業後、服部栄養専門学校で勉強し、卒業後は京都の老舗料亭『菊乃井』で4年間修業。その後カナダへ留学し、バックパッカーで世界一周の旅へ。現地の飲食店で働きながら食への興味を深める。帰国後、地元・三重県にある父親の店で働きながら生産者の元へ足を運び、故郷の豊かな食文化の魅力に触れる。2015年に独立し、西麻布に『伊勢すえよし』をオープン。

SHOP INFORMATION

店名:伊勢 すえよし
住所:東京都西麻布4-2-15 水野ビル3F
Tel:03-6427-2314
営業時間:12:00~15:00、17:00~20:00入店
定休日:日