シュークルート

世界3大料理のひとつ、フランス料理。誰もが認める魅惑の料理を生んだこの国には、各地方で育まれた郷土料理があります。今月は、フランス北東部・アルザス地方の料理を日本で忠実に再現し、食を生業とする人達にファンの多い、東京・浅草橋の名店にアルザスを代表する名物料理を習います。

冬に恋しくなるフランス・アルザス地方の煮込み料理

ボルドー、ブルゴーニュと並び、フランス有数のワイン産地として知られるフランス・アルザス地方。ドイツとスイスに隣接するフランスの北東部に位置し、かつてドイツに統治されていた歴史があり、フランスとドイツの両国から影響を受けた独自の文化を形成しています。

12月の「プロに教わる逸品レシピ」は、クリスマスツリー発祥の地としても知られるアルザスの郷土料理にフォーカス。アルザス由来の料理とワインを日本で本格的に楽しめるお店として定評のある、東京・浅草橋「ブラッスリー ジョンティ」で厨房を任されている料理人の斉藤光さんに、家庭で作れるアルザス料理の極意を教えてもらいました。

第1回目に習うのは、アルザスを代表する郷土料理「シュークルート」。スパイスと一緒に塩漬けして乳酸発酵させた千切りキャベツを「シュークルート」と呼ぶこともありますが、そのキャベツを使った煮込み料理を指すのが一般的です。アルザスの家庭の味として親しまれているシュークルートは、日本の肉じゃがやおでんのような存在なのだとか。隣国ドイツのザワークラウトとよく似ていますが、肉のほかに魚を使ったレシピもあるのがシュークルートの特徴です。今回は、王道のお肉のシュークルートを手ほどきしてもらいましょう。

酢は加えず、乳酸発酵させて作る塩漬けキャベツ


フランス語で“酸っぱいキャベツ”を意味するシュークルートは、日本の漬物のように塩漬けをして、常温で乳酸発酵させて作ります。キャベツが浸かるくらいの水分が出てきたらでき上がりのサインです。キャベツが浸かる量の水分(発酵液)と共に保存容器に移し、冷蔵庫で保存しましょう。「発酵液は、次回シュークルートを作るときに活用できます。発酵液500ccを小鍋で一度沸騰させてから完全に冷まし、最初に材料をボウルに入れるときに一緒に混ぜるだけ。これで、より味わい深いシュークルートになります」

キャベツは収獲時期や固体によって味はもちろん水分量も異なるため、塩漬けキャベツの仕上がりも変わります。このため、具材を煮込むときはふたを少し開け、様子を見ながら火加減や加熱時間を調整しましょう。ソーセージが破裂しないように注意しながら、肉類をジューシーに仕上げていくのがポイント。

ブイヨンの水分がなくなり、具材に火が通ったら完成です。お皿に盛るときは、キャベツを下に敷き、肉やじゃがいもをのせましょう。アルザスワインと合わせて、お召し上がりください。

フランス・アルザス地方の家庭の味、「シュークルート」。スパイスをたっぷり入れて自家製発酵させたキャベツと、数種の豚肉で煮込んだ「ブラッスリー ジョンティ」の看板メニューです。

2018年12月10日

レシピ作成
「ブラッスリー ジョンティ」斉藤光さん
調理時間
105分 ※内準備時間60分

材料2人分

シュークルート(発酵キャベツ)
160g
豚バラ肉の煮込み
350g
オニオンソテー
15g
じゃがいも
1個
ソーセージ
1本
ベーコン
40g
豚ブイヨン(※「豚バラ肉の煮込み」の作り方参照)
30g

シュークルート(発酵キャベツ)(作りやすい分量)

キャベツ(太千切り)
1玉(約1kg)
15g
クミン
適量
クローブ
適量
ローリエ
適量
ジュニパーベリー
適量

豚バラ肉の煮込み(作りやすい分量)

豚バラ肉
1kg
500g
40g
砂糖
5g

オニオンソテー

玉ねぎ(細切り)
1/2個
ラード(※「豚バラ肉の煮込み」の作り方参照)
適量

手順

下準備/シュークルートを作る

  1. 1

    寸胴鍋もしくは大きめのボウルにキャベツを入れ、塩、スパイス類をまぶしてよく混ぜる。表面をラップで覆ってから重しをして、夏場で3日程度、冬場は1週間程度、常温に置いて発酵させる。

  2. 2

    水分が上がってきたら保存容器に入れ替え、キャベツが浸かるくらいの水分に浸けたまま冷蔵庫で保存する。

下準備/豚バラ肉の煮込みを作る

  1. 1

    ソミュール液を作る。水、塩、砂糖を鍋で沸かし、火を止めて完全に冷ます。保存容器などに適当な大きさにカットした豚バラ肉を入れ、肉が完全に被る量のソミュール液を注ぎ、ふたをして冷蔵庫に24時間置く。

  2. 2

    別の鍋に1の豚肉と水500ml(※分量外)を入れ、弱火で沸騰させないように注意しながら、2時間かけてじっくり火を通す。火が通ったら肉を取り出し、できた煮汁をブイヨン(※具材の煮込みに使用)とする。ブイヨンは冷まし、浮いたラードは別にとっておく(※オニオンソテーに使用)。

作り方

  1. 1

    オニオンソテーを作る。フライパンに「豚バラ肉の煮込み」を作ったときにできたラード適量と玉ねぎを入れて熱し、玉ねぎが茶色く変色しない程度の火加減で、ゆっくり炒め煮にして甘みを出す。

  2. 2

    じゃがいもは皮つきのまま茹で、中まで火を通す。冷めたら4等分に切る。

  3. 3

    鍋にシュークルート、豚バラ煮込み、1のオニオンソテー、2のじゃがいも、ソーセージ、ベーコン、「豚バラ肉の煮込み」を作ったときにできた豚ブイヨンを入れ、ふたをして火にかける。沸騰したらふたをずらし、水分を飛ばしながら煮込む。具材に火が通ったら完成。

撮影/大木慎太郎  取材・文/江原裕子

愛用道具
シンプルな形状ながら口径の広さ、鍋の深さ、傾斜のある側面、熱や蒸気が対流しやすいドーム状のガラス蓋と、細部にこだわった「o.e.c. ミニマ 卓上鍋23cm」(貝印)。熱伝導のいいステンレス鋼材を採用し、フライパンとしても使える深さがあり、ハンドルを含む鍋全体が耐熱仕様でオーブンに丸ごと入れられるなど、幅広く活用できます。

料理人紹介
斉藤光(サイトウ ヒカル) さん
1970年、新潟県生まれ。20代で料理人を志し、イタリア料理店で経験を積んだ後、2010年に「ブラッスリー ジョンティ」に入店。サービスから厨房までを経験し、今やアルザス料理を知り尽くしたスペシャリスト。現在は厨房を任され、オーナーでソムリエの富田裕之さんと共にお店を盛り上げる。

SHOP INFORMATION
店名: ブラッスリー ジョンティ
住所: 東京都台東区浅草橋2-5-3
URL: http://b-gentil.com/
Tel: 03-5829-9971
営業時間: 11:30~14:45(L.O.14:00)/18:00~23:00(L.O.22:00)、土日祝12:00~15:45(L.O.15:00)/18:00~22:30(L.O.21:30)
定休日:水曜日・第3火曜日
エリア: 東京・浅草橋