肉料理のスペシャリスト直伝、家庭でもおいしく作れるステーキ
まだまだ熱い肉ブーム。なかでも赤身肉は、脂肪が比較的少なく、良質なタンパク質、鉄分が豊富な、おいしくて体にうれしい食材として認知されるようになり、食べる機会が増えたという人も多いのではないでしょうか。今月は、肉料理ファンに愛され、東京・銀座に店を構えること17年のフレンチビストロ「マルティ グラ」のオーナーシェフの和知徹さんに、家庭でもっと肉を食べたくなるレシピを教えてもらいましょう。
第1回目に学ぶのは、「厚切りシャリアピンステーキ」。こちらは、すりおろした玉ねとにんにくをステーキ肉の表面にまぶして焼き、炒めたみじん切りの玉ねぎをソースとして添える一品。1936年(昭和11年)に来日したロシア人声楽家のフョードル・シャリアピンが、滞在先の帝国ホテルでの食事の際、歯の調子が悪かったためにやわらかいステーキをリクエストしたことで考案され、その名が付いたといわれています。
肉をやわらかく、極上の食感にする魔法のレシピ
シャリアピンステーキのポイントは、焼く前の肉を玉ねぎが持つ、タンパク質を分解する酵素の力でやわらかくすること。ただし、マリネしすぎると肉特有の食感が失われるため、漬け時間は30分、香りづけが目的なら15分程度に留めましょう。また、下味の塩こしょうは肉の厚みに応じてパーセンテージを変え、3センチを超える場合は肉の分量の1%、それ以下は0.9%が適量です。
ソースにも玉ねぎをたっぷり使用。みじん切りにした山盛りの玉ねぎを、時間をかけてじっくりと炒めていきます。この手間を惜しまないことで、材料と配合はシンプルながら、ごちそう感あふれるソースに仕上がります。
30分ほど炒めた玉ねぎは美しいあめ色に。甘みとうま味がギュッと凝縮された濃厚ソースの完成です。
ステーキ肉の焼き時間を左右するのは、大きさではなく厚さ。今回ご紹介するのは、500グラムで3センチ厚のステーキ肉の焼き方なので、厚みに応じて焼き時間を調整しましょう。また、バターで焼くことで風味が付き、焦がすことなくキツネ色をキープできますが、お好みでオリーブオイルに変えてもOK。