カニとアボカド、林檎のアンサンブル

プロの料理人が、その経験に基づくコツ、アイデア、新しい発想などを織り交ぜて、家庭で再現できるとっておき料理を教えてくれる連載。今月は、長い歴史と伝統が息づくフランス料理を学びます。

うっとりするような、見目麗しい前菜

2月は東京・浅草駒形のフレンチレストラン「ナベノ-イズム」のエグゼクティブシェフ、渡辺雄一郎さんが登場。渡辺シェフは、フレンチの巨匠として知られたジョエル・ロブション氏が営むロブショングループで21年間働き、そのうち11年間は東京・恵比寿「シャトーレストラン ジョエル・ロブション」のエグゼクティブシェフを務め、三ツ星を9年間守り続けた実力派。2016年に満を持して独立し、「ナベノ-イズム」を開業。最新の「ミシュランガイド東京2019」で二ツ星を獲得したほか、数々の受賞歴を誇るなど、名実ともに日本を代表するフレンチシェフのひとりです。今月は、そんな渡辺シェフが冷前菜、温前菜、メインの3品を教えてくれます。

第一回目のメニューは、冷前菜の「ズワイガニとアボカド、林檎のアンサンブル」。「甲殻類とアボカドは、間違いのない組み合わせです」と話す渡辺シェフ。さっそく作り方のポイントをチェックしていきましょう。

皮をむくと色が変わりやすいアボカドですが、火を通すことで分解酵素の働きが止まり、変色を防ぐことができます。「軽く混ぜ合わせながら加熱すると角が取れ、周囲が少し崩れてくるくらいが火入れの目安。このひと手間で、アボカドの緑が一層鮮やかに。追熟するのと同じ効果があるので、味も良くなります」。調理油には、香りがやわらかく食材の味を邪魔しない、太白ごま油を使用。

ズワイガニ、アボカドには、爽やかな酸味を与えるライムを加えました。フレッシュな果実から搾った、風味豊かな果汁を使います。

りんごは真空でマリネすると、時間を短縮できます。皮つきのまま細切りにして調味し、真空保存袋に入れて30分ほど置けば完成。りんごの変色を防ぎ、味が均一に浸透するのも、真空マリネによる大きなメリット。

素材の組み合わせや調味料の使い方、火入れなど、プロならではのテクニックが満載のこちらの料理。一通り作ってみれば、さまざまな気づきがあるでしょう。特別な日の一品として、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

素材の持ち味を、巧みな技で引き出した「ズワイガニとアボカド、林檎のアンサンブル」。彩り豊かで、カニのうま味、アボカドの濃厚な風味、りんごの酸味のバランスが絶妙です。

2019年02月4日

レシピ作成
「ナベノ-イズム」渡辺雄一郎シェフ
調理時間
90分 ※内準備時間0分

材料6cmのセルクル4個分

ズワイガニのフィリング

ズワイガニ
100g
トレハロース
1つまみ
エスプレット唐辛子
適量
オリーブオイル
適量
適量
こしょう
適量
ライム果汁
適量

カニみそのソース

ズワイガニのカニみそ
小さじ1
蜂蜜ライムヴィネグレット
小さじ1
適量
こしょう
適量

ズワイガニの殻のオイル

ズワイガニの殻
1杯分
太白ごま油
200g

りんごのマリネ

りんご
1/4個
トレハロース
1つまみ
オリーブオイル
15cc
シードルビネガー
10cc
適量
こしょう
適量

アボカドのフィリング

アボカド
1個
トレハロース
2つまみ
太白ごま油
適量
ライム果汁
適量
適量
こしょう
適量

蜂蜜ライムヴィネグレット(作りやすい分量)

はちみつ
100g
ライム果汁
50g
オリーブオイル
100g

仕上げ

ディルの葉(あれば)
適量
金箔(あれば)
適量
花穂じそ(あれば)
適量

手順

  1. 1

    蜂蜜ライムヴィネグレットを作る。ボウルにはちみつとライムジュースを入れて混ぜ、さらにオリーブオイルを加えて混ぜ合わせる。

  2. 2

    ズワイガニは茹で、カニみそ小さじ1、殻を別にしておく。ボウルに茹でたカニを入れ、トレハロース、エスプレット唐辛子、オリーブオイル、塩、こしょうで調味し、最後にライム果汁を加えて混ぜ合せる。

  3. 3

    カニみそのソースを作る。カニみそ小さじ1に蜂蜜ライムヴィネグレット小さじ1、塩、こしょうを加えて調味する。

  4. 4

    ズワイガニの殻のオイルを作る。殻と太白ごま油をフライパンで熱し、しっかり香りを出したら火を止める。

  5. 5

    りんごのマリネを作る。2mm厚にスライスしたりんごを細切りにして、氷水にサッとさらしてザルにあける。水気を拭き取り、トレハロース、オリーブオイル、シードルビネガー、塩、こしょうで調味し、真空マリネする。

  6. 6

    アボカドのフィリングを作る。アボカドは種と皮を取り除いて縦に4等分し、1ピースが10gほどになるように切り分ける。太白ごま油をしいたフライパンに皮目が下になるように並べ、塩、こしょう、トレハロースを全体にまぶし、火にかける。皮目が青く発色したらフライパンを振り、表面を乳化させる。ボウルに移して氷水をあて、ライム果汁を加えて味を調える。

  7. 7

    セルクルにアボカドのフィリング20gを詰め、形を整える(プレッセ)。皿に盛り、カニのフィリング20g、りんごのマリネ適量を順にのせ、ディルの葉、金箔、花穂じそを飾る。カニみそのソース、ズワイガニのオイルをひく。

撮影/川上輝明  取材・文/江原裕子

愛用道具
ライムを搾るときに使用したのが、「SELECT100 ミニしぼり」(貝印)。卓上に置いておけるデザインで、注ぎ口付き。人間工学をもとに設計され、ハンドルが手になじみやすいのが特長です。少ない力で作業ができ、すだちやシークワーサーなどの小さな柑橘類でも、果汁を余すところなく搾ることができます。

シェフ紹介
渡辺雄一郎(ワタナベ ユウイチロウ)さん
1967年、千葉県生まれ。1988年、大阪あべの辻調理師専門学校を卒業後、同フランス校に進学。二ツ星クールシュヴェル「ル・シャビシュー」にて研修。リヨン「ラ・テラス」、東京「ル・マエストロ・ポール・ボキューズ」を経て、「タイユヴァン・ロブション」に入店。以降、ロブション・グループ各店で腕を磨き、2004年に東京・恵比寿「ジョエル・ロブション」のエグゼクティブシェフに就任。2016年、東京・浅草駒形に「Nabeno-Ism(ナベノ-イズム)」をオープン。

SHOP INFORMATION
店名: Nabeno-Ism(ナベノ-イズム)
住所: 東京都台東区駒形2-1-17
URL: http://www.nabeno-ism.tokyo/
Tel: 03-5246-4056
営業時間: ランチ12:00~15:00(L.O.13:30)、ディナー18:00~23:00(L.O.21:00)
定休日: 月曜日、不定休あり
エリア: 東京・浅草