鯛のポワレ

人気店のシェフに2つのレシピを教えてもらう連載企画。旬の食材を使ったレシピと、プロの技のレシピをご紹介していきます。3月は、東京ミッドタウン日比谷にあるフレンチ『モルソー』のオーナーシェフ・秋元さくらさん。今回は、プロの技のレシピ「春の鯛のポワレ ふきのとうのフォンドボーのソース」を教えていただきました。

今が旬の鯛のポワレにふきのとうを使った大人の味わいのソースを合わせた、おもてなしにもふさわしい一皿は、これぞフレンチと呼びたくなる美しさです。シンプルなだけに焼き方の技術がモノを言うポワレと、絶品ソース作りのコツを教わります。

「ポワレは弱火で皮目から焼き、7割ほど火が通ったところで、ひっくり返す直前でもう一度強火にして、皮目を香ばしく焼くのがコツです。弱火だと身に水分が残っている状態なので、しっかり蒸発させて皮をパリッとさせます。火を止めてひっくり返したら、余熱で仕上げると、皮はパリパリ、身はしっとり、絶妙の仕上がりになります」

オリジナルのソースは、ふきのとうを使うことで、かすかに舌に残る苦味を楽しめます。
「ソースは、香味野菜とバターを炒め、白ワインなどのアルコールを加えて煮詰めるのが基本。今回は春の味覚、ふきのとうを使って、ほんのりとした苦味をプラスしました。白ワインもフォンドボーもたっぷり使って煮詰めているので、コストはかかりますが、やはり風味が格別です。ソースに使う白ワインは、ソーヴィニヨンブランやシャルドネなど、香りが強すぎないものがおすすめです。気をつけたいのは、アルコール分をしっかり飛ばすこと。そうしないとイヤな酸味が残ったソースになってしまいます。しっかり煮詰めることでワインの風味だけが残り、バターと合わせても軽やかな味わいになるので、焦らず加熱してください」

玉ねぎは70℃に温めたスチームオーブンで40分蒸す。「70℃は最も玉ねぎの甘みを引き出す温度。蒸すことで、玉ねぎはくたくたにならず、食感を残しつつもしっかりと甘みを引き出すことができます」

ソースを作る。鍋ににんにくとバターを入れて弱火で加熱し、香りが出て泡立ってきたら、ふきのとうを加える。「今回、ふきのとうは塩ゆでしたものを使いましたが、苦味を生かしたい場合は生のままでもかまいません。にんにくは色づかないように注意してください。ふきのとうは油と相性がいいので、バターをしっかりと吸わせて」

ワインを加えて煮立たせる。「白ワインは泡がぼこぼこと立つよう、しっかりと煮立たせることが大切です。このプロセスが甘いと、酸味が残って酸っぱいソースになってしまいます」

フォンドボーを加えて煮詰めたら、バターを加えて溶かす。「水分と油だけになったらフォンドボーを投入して、強火で煮詰めて旨味を凝縮させます。仕上げにバターを加えますが、風味づけの役割なので、溶ければOKです」

器に、玉ねぎを置いて上からソースをかけ、鯛のポワレをのせてあら塩(マルドンの塩を使用)を振る。ハーブミックスとうるいを飾る。「塩は、岩塩やフルール・ド・セルでも結構です」

絶妙な火加減で仕上げられた鯛のポワレと、幾重にも重なる旨味のソースが抜群の相性です。えも言われぬ初めての美味なるソースは、ふきのとうが味の深み出しに一役買っています。とはいえ、一度塩ゆでしているから、ほんのりかすかに苦味をまとった程度なので、老若男女問わず好まれそう。

2021年03月18日

レシピ作成
秋元さくらさん
調理時間
20分 ※内準備時間0分

材料4人分

調理時間

20分 ※鯛、玉ねぎ、ふきのとう、うるいの下準備の時間は除く

材料

鯛(3枚におろす)
1尾
新玉ねぎ
1/2個
ふきのとう
2個
にんにくのみじん切り
小さじ1/2
バター
30g
白ワイン
100ml
フォンドボー(市販品、KISCOを使用)
150ml
ディル
少々
セルフィーユ
少々
イタリアンパセリ
少々
うるい
少々
適量
オリーブ油
適量
エキストラバージン油
少々

手順

下準備

  1. 1

    鯛は塩を振って30分ほどおき、表面の水分を拭き取る。

  2. 2

    玉ねぎは横に2cm厚さに切る。70℃のスチームオーブンで40分蒸す。

  3. 3

    ふきのとうは、塩ゆでしてみじん切りにする。

  4. 4

    うるいは、長めに切って水にさらしておく。くるりと丸まる。

作り方

  1. 1

    鯛は、身側のみ塩少々を振る。フライパンにオリーブ油適量を入れ、鯛の皮目を下にして入れ、強火で焼く。

  2. 2

    上から押さえながら皮をまっすぐに焼きかため、弱火にして7〜8分焼く。身に7割ほど火が入ったら強火にし、皮目をパリッと焼いたら、火を止めてひっくり返す。フライパンに入れたまま、余熱で火を通す。

  3. 3

    鍋に、にんにくのみじん切りとバター15gを入れて弱火で熱し、じっくり香りを出す。泡が立ってきたらふきのとうのみじん切りを加えて炒める。白ワインを注いで強火でアルコール分を飛ばしたら、フォンドボーを加えて煮詰める。仕上げに残りのバターを加えて溶かし、塩少々で味を整える。

  4. 4

    器に、たまねぎ、3のソース、2の鯛、塩少々、ハーブミックスとうるいを飾り、仕上げにエキストラバージン油をかける。

撮影/田尻陽子 取材・文/岡井美絹子

「モルソー」秋元さくらさん
6年間、日本航空の客室乗務員として働いたのち、調理師学校へ。元々はイタリアのマンマの味に憧れがあったが、料理を学ぶうちにフランスの豊かな郷土の魅力や、高い調理技術や料理の美しさに惹かれてフレンチの道へ。卒業後は、白金の「オー・ギャマン・ド・トキオ」や白金台の「モレスク」などで腕を磨く。2009年にソムリエである夫とともに、目黒にフレンチレストラン「モルソー」をオープン。店名は、フランス語で“かけら”の意味。お客さまの日常のひとかけらになれたら、という思いが込められている。2018年、東京ミッドタウンの開業と同時に移転。料理番組を中心にメディアでも活躍中。

SHOP INFORMATION
店名:モルソー
住所:東京都千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷2F
Tel:03-6550-8761
営業時間:11:00~15:00(14:00LO)、18:00~23:00(22:00LO)
定休日:なし(商業施設に準ずる)
HP:http://morceau.pinoko.jp/

※3/26(金)から4/22(木)まで、伊勢丹新宿店B1F「キッチンステージ」で秋元シェフのメニューを提供予定。ご提供内容は3/26(金)に更新される下記HPよりご確認ください。
HP:https://www.kai-group.com/fun/kitchen_stage/