新緑の風情にあふれたごちそうちらし寿司を学ぶ
プロの料理人たちがその巧みな技と経験に基づく新しい発想で、家庭でも再現できるスペシャルメニューを披露してくださるこの企画。5月にご登場いただくのは、東京・渋谷区富ヶ谷の人気和食料理店「七草」店主、前沢リカさんです。旬の野菜を使った、体にやさしくしみじみと味わい深い料理を得意とする前沢さんは、入手しやすい食材や調味料を使いながらも、アッと驚く組み合わせでハッとする味に仕上げる名人。第1回目となる今回は、芽吹きの季節から初夏への移り変わりを感じる「みどりのちらし寿司」を作ります。従来のちらし寿司の概念を覆し、緑の野菜のみをワントーンで散らすちらし寿司は、おいしいものを食べ尽くした大人たちにこそ喜ばれるごちそうになるでしょう。
食材の自然な美しさに感動を覚える「みどりのちらし寿司」は、新緑の季節の庭を思わせる凛とした佇まい。それぞれの野菜に合った適切な下処理と調理をすることで、イキイキとした表情や食感、味わいを引き出します。春には菜の花やこごみを散らし、夏には薄切りのゴーヤや茹でたいんげんをのせれば、それぞれの季節に合った野菜のちらし寿司に仕上がります。すし飯にのせる野菜はクレソン、きゅうり、スナップえんどう、ズッキーニ、そら豆、木の芽の5種類。ひと口に緑の野菜といっても形も大きさもいろいろなので、印象の異なる野菜を複数混ぜると味わいも表情も豊かになります。すし飯にはアナゴやしいたけ、かんぴょうを混ぜて、野菜中心でも十分な食べ応え。
ズッキーニは、等間隔で3つの切り込みを入れた輪切りにします。切り離さない程度に2mm幅に包丁を3回入れ、4回目で切り落としましょう。切りたては普通の輪切りに見えますが、ゆでると切り口が際立ち、表情が生まれます。