鶏レバームースとりんごのタルティーヌ

料理を職業にしているプロフェッショナルは、どんなところに気を配って日々のレシピを完成させているのでしょうか? 話題店や人気レストランのシェフ、料理人の方たちにその秘密を教えてもらう連載。華やかな完成形はもちろん、材料選びや作り方など、そこかしこにプロならではの技が光ります。

秋にうれしい赤ワインに合うおつまみ

国内外から訪れる観光客で連日賑わいを見せる東京・浅草。その喧騒から離れた観音裏と呼ばれるエリアが、食通たちに注目されているのをご存知でしょうか? 今月は、観音裏ブームの火付け役ともいわれるレストラン「MICRO BISTRO Pétanque(マイクロビストロ ペタンク)」のオーナーシェフ、山田武志さんに、深まる秋にじっくり味わいたいワインに合うおつまみを教えてもらいましょう。

山田シェフは、六本木「ザ・ジョージアン・クラブ」、在ハンガリー日本大使館の公邸料理人、パリ「ザ・キッチン・ギャラリー」、銀座「グレープ・ガンボ」料理長、「ワインショップ&ダイナー フジマル浅草橋店」の初代料理長を経て、2017年4月に東京・浅草に自身の店「マイクロビストロ ペタンク」をオープン。瞬く間に人気店となり、2018年6月には初のレシピ本「小さなビストロ『ペタンク』ワインが旨い絶品つまみ」(世界文化社)も出版されました。

第1回目に習うのは、「鶏レバームースとりんごのタルティーヌ」。ふわっとなめらかなレバームースは、レバーの独特な風味が苦手な人でもこれならおいしく食べられるというマイルドなコクが魅力の一品です。

なめらかに、軽い口当たりに仕上げるレバームース


鶏レバーペーストの材料を混ぜるときには、冷たい素材があると分離してしまうため、バターは室温に戻し、ベシャメルソースが温かいうちに混ぜ合わせましょう。もし分離してしまったら材料を一旦ボウルに移し、湯せんにかけるとつながります。

鶏レバーとベシャメルソース、バターが乳化したら全卵、卵黄、生クリームとブランデーを加えます。このとき、ムースに余分な空気が入らないようにフードプロセッサーでひと混ぜしたら完了です。口当たりがなめらかになるように2回裏ごしをして、型または耐熱容器に流し入れましょう。

タネは加熱しすぎるとすが立ってしまうため、指定の加熱時間が過ぎたらオーブンから取り出し、型を振って様子を見て、固まっていなかったら徐々に加熱時間を増やすようにしましょう。できたムースは冷蔵庫で5日程度保存が可能。空気に触れると色が変わってしまうため、変色した部分は取り除いて食べてください。

おすすめのペアリングは?

今月は、山田シェフに習う料理に合うおすすめワインを、数々の高品質かつユニークな銘柄を世に送り出しているオーストラリアワインから選んでもらいます。

「鶏レバームースとりんごのタルティーヌ」とのペアリングとして、山田シェフが選んだのは、軽やかなおいしいぶどうの風味が感じられる赤ワイン「セーヴ・アワー・ソウル・サグランティーノ」。「イタリア系品種のぶどう・サグランティーノを使用していて、見た目には濃い色をしていますが、果実味が凝縮されて、酸味もあるバランスのとれたワインです。なめらかで軽いレバームースのコク、甘すぎないりんごのコンポートのさわやかな風味を、赤玉ねぎのマリネの酸味をアクセントにして、香ばしいパンにのせて味わうタルティーヌによく合います」

バゲットにふわっとなめらかな鶏レバームースをたっぷり塗り、コンポートにした甘酸っぱいりんごをのせたタルティーヌ。レバームース、りんごのコンポート、赤玉ねぎのマリネはいずれも冷蔵庫で5~7日程度保存できるので、時間がある日に作り置きしておくと、パンさえあれば好きなときに味わえます。

2018年11月5日

レシピ作成
「マイクロビストロ ペタンク」山田武志シェフ
調理時間
90分 ※内準備時間0分

材料4人分

鶏レバームース(作りやすい分量)

鶏レバー
250g
7g
バター(食塩不使用)(常温に戻す)
200g
全卵
2個
卵黄
3個分
生クリーム
50g
ブランデー
20g
●ベシャメルソース
・バター(食塩不使用)
20g
・強力粉
20g
・牛乳
200ml

りんごのコンポート(作りやすい分量)

りんご
2個
900ml
白ワイン
100ml
グラニュー糖
300g
レモン
1/2個

赤玉ねぎのマリネ(作りやすい分量)

赤玉ねぎ
1個
グラニュー糖
20g
10g
はちみつ
30g
赤ワインビネガー
200ml

その他

お好みのパン
適量
チャービル
適量

手順

鶏レバームースを作る

  1. 1

    鶏レバーは、血のかたまり、筋、血管を取り除き、牛乳(※分量外)に漬けて一晩置く。使う前にザルにあげ、流水で洗って水気を切っておく。

  2. 2

    ベシャメルソースを作る。鍋にバターを入れて弱火で溶かし、強力粉を加えて炒め、バターと粉がなじんだら火を止め、牛乳を少しずつ加えて混ぜながらのばす。

  3. 3

    2が温かいうちに鶏レバー、常温に戻したバター、塩、白こしょうと合わせ、フードプロセッサーで混ぜる。鶏レバー、ベシャメルソース、バターが乳化したら一旦フードプロセッサーを止め、全卵、卵黄、生クリームとブランデーを加える。ここからはあまり混ぜずに、再びスイッチを入れてサッと混ぜて均一になったら止める。

  4. 4

    3を2回裏ごしして、型に流す。型を上から軽く落として余分な空気を抜き、アルミをかぶせて、下皿に型の半分の高さまでお湯を張り、150℃のオーブンで湯せんの状態にして45分加熱する。一度オーブンから取り出し、型を左右に振って固まっていなかったらさらに5分加熱する。粗熱をとり、氷水で冷やしてから、ラップもしくはふたをして冷蔵庫に入れる。

りんごのコンポートを作る

  1. 1

    りんごは皮をむいて8等分にする。鍋に水、白ワイン、グラニュー糖、輪切りにしたレモン、りんごの皮を入れて火にかける。沸騰したら弱火にし、落しぶたをして30分ほど煮る。火を止めたらそのまま冷まして粗熱をとり、煮汁ごと保存容器に入れて冷蔵庫で冷やす。

赤玉ねぎのマリネを作る

  1. 1

    赤玉ねぎは繊維に沿って5mm幅に切ってボウルに入れ、グラニュー糖、塩を加え、手でよく揉み込む。

  2. 2

    しんなりとして赤玉ねぎからねばり気が出てくるまで揉んだら、はちみつ、赤ワインビネガーを加え、しっかり和える。密封保存容器に入れ、冷蔵庫で保存する。日持ちは約一週間。

仕上げ

  1. 1

    スライスしたパンに鶏レバームースを塗り、カットしたりんごのコンポートをのせ、赤玉ねぎのマリネ、チャービルを添える。

撮影/長谷川潤 取材・文/江原裕子

愛用道具
深鍋と浅鍋に、脚の長さの異なる2つの中子がセットになった「o.e.c. W角鍋」(貝印)。鍋は、熱伝導性に優れたステンレスとアルミの三層構造で、蒸す・煮る・ゆでる・焼く・炒める・揚げるなどの基本調理ができるほか、オーブンや魚焼きグリルでも使用可能。

シェフ紹介
山田武志(ヤマダ タケシ) さん
1976年、東京都生まれ。調理師学校卒業後、東京・五反田「ヌキテパ」に入店し、田辺年男シェフの元で修業を開始。その後、六本木「ザ・ジョージアン・クラブ」、ハンガリー日本大使館の公邸料理人、パリ「ザ・キッチンギャラリー」などを経て、銀座「グレープ・ガンボ」4代目料理長に就任。2014年「ワインショップ&ダイナー フジマル浅草橋店」の立ち上げに参加し、料理長を務める。2017年4月に独立し、東京・浅草に「マイクロビストロ ペタンク」をオープン。

SHOP INFORMATION
店名: マイクロビストロ ペタンク
住所: 東京都台東区浅草3-23-3 上野ビル101
URL: https://www.facebook.com/petanqueasakusa/
Tel: 03-6886-9488
営業時間: 17:00~24:00、土日祝15:00~22:00
定休日: 不定休(Facebookにて告知)
エリア: 東京・浅草