鳥取産大山どりのポーピエットパネ

人気店のシェフや料理家に、自慢のレシピを教わる連載企画。プロならではの素材や調味料の選び方、組み合わせ、活かし方には、学ぶべきポイントが満載です。

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家庭で作れるプロの味。ヘルシーで上質なチキンコートレット

東京・浅草駒形のフレンチレストラン、「ナベノ-イズム」の渡辺雄一郎シェフに学ぶフランス料理。最終回は、メイン料理「鳥取産大山どりのポーピエットパネ」を習います。

「ポーピエット」とは薄切りの肉や魚に詰め物をして火を 通したもの、「パネ」はパン粉をつけて調理したものを指します。今回のレシピでは、細かく刻んだりつぶしたりした複数の食材を混ぜて作ったファルスを、鶏肉で包んで揚げ焼きに。「ファルスは、鶏のお腹の中をイメージしました。鶏もも肉のミンチ、鶏の内臓、鶏が食べている穀物、卵などを混ぜ合わせています」

渡辺シェフが好んで選んでいる鶏肉が、鳥取県の銘柄鶏「大山(だいせん)どり」。親である種鶏の育成から精肉として出荷されるまで、厳しい基準の下で生産されるこちらの肉は、キメが細かく、クリアな肉の味が楽しめるそうです。今回使用したひき肉も、家庭用ミンサーを使って大山どりのもも肉から作りましたが、市販のミンチでもおいしくできます。

このレシピの肝となるのがファルス。鶏のハツとレバーは、臭みをやわらげて味に深みを出すため、数種類のお酒と調味料で作ったマリネ液に浸けておきます。こうして下処理した内臓、ミンチ、炊いた五穀米を、フライパンで調味しながら順番に炒めます。

炒めた肉類とご飯はボウルに移し、氷水をあてて粗熱をとります。そこに、あらかじめ茹でておいた卵をつなぎとして加え、パセリも混ぜて仕上げましょう。

できたファルスを、ささ身に包んでいきます。ささ身はタンパク質が豊富で、脂肪が少ないヘルシーな部位。筋を取って開き、叩いて薄く伸ばしてからファルスを包み、上から押さえて形を整えましょう。「胸肉は繊維が粗く、叩くと割れてしまうため、ささ身が扱いやすくて最適です」

衣をつけたささ身は、少ない油で揚げ焼きに。「ささ身は、油の温度が低いうちに入れるのがポイント。高温になってからだと、肉が縮んでしまいます。また、揚げ油に太白ごま油を使うと、酸化しにくく、カラリと揚がりますよ」。『ズワイガニとアボカド、林檎のアンサンブル』でも使った太白ごま油。食材の味を邪魔しないことから、ナベノ-イズムでは、食材を焼いたり揚げたりするときには、いつもこの油を使用しているそうです。

冷前菜、温前菜、メインと習ってきた渡辺シェフのレシピは、いかがでしたか? 難易度はちょっと高めかもしれませんが、完成した料理はどれも会心の出来になるはず。プロの技をじっくり学んでみてください。

鶏の4つの部位を巧みに使った、チキンのコートレット。ハツ、レバー、もものミンチで作ったファルスをささ身で包んで揚げたチキンカツは、上質で感動的な味わいです。

2019年02月18日

レシピ作成
「ナベノ-イズム」渡辺雄一郎シェフ
調理時間
210分 ※内準備時間120分

材料4人分

鶏ささ身
4本
薄力粉
適量
パン粉
適量
適量
こしょう
適量
太白ごま油
太白ごま油
【卵液(以下の材料を混ぜ合わせる)】
・溶き卵
1個分
・生クリーム
大さじ1
・牛乳
大さじ2
・マスタード
小さじ1

ファルス

鶏ももひき肉
200g
鶏ハツ
30g
鶏レバー
60g
バター
大さじ1
にんにく(みじん切り)
小1個
五穀米(炊いたもの)
300g
卵(沸騰後、7分間茹でたもの)
1個
パセリ(みじん切り)
適量
ナベノソース(※材料欄、下部参照)
大さじ1
適量
黒こしょう
適量
【 A(マリネ液)】
・マデラ酒
小さじ1
・ブランデー
小さじ1
・日本酒
小さじ1
・トレハロース
1つまみ
・エスプレット唐辛子
1ふり
・ガーリックパウダー
1ふり

ソース

バルサミコ酢
大さじ3
みりん(あれば熟成本みりん)
大さじ3
ナベノソース(※材料欄、下部参照)
大さじ2
フォン・ド・ヴォー
大さじ3
くず粉(水で溶く)
適量
バター
大さじ3
焦がしバター
大さじ2
黒こしょう
適量

ブーケガルニ

タイム、ローリエ、パセリなど(お好みで)
適量

※ナベノソースについて

「たまりしょうゆ」、もしくは、「しょうゆ・みりん・水を同量で割り、煮切ったもの」でも代用可。購入先はページ下部を参照。

手順

下準備

  1. 1

    ファルスの鶏ハツと鶏レバーは粗みじんに切り、Aを混ぜ合わせたマリネ液に、2時間ほど浸けておく。

作り方

  1. 1

    ファルスを作る。フライパンにバター、にんにくを入れて熱して香りを出し、マリネしたハツとレバーを加えて炒める。さらに鶏ひき肉を入れて炒め、ポロポロになったら五穀米を入れ、ナベノソース、塩、黒こしょうで味を整える。

  2. 2

    1をボウルにあけ、氷水にあてて粗熱をとり、粗みじんにつぶした卵、パセリを加えて混ぜる。

  3. 3

    ソースを作る。鍋にバルサミコ酢、みりん、ナベノソースを入れ、火にかけて5分ほど煮詰める。フォン・ド・ヴォーを加えて沸騰させ、水溶きくず粉で濃度をつける。バターを入れ、ハンドブレンダーなどでよく混ぜ合わせ(モンテ)、焦がしバター、黒こしょうを加えて混ぜる。

  4. 4

    鶏ささ身は筋を取り、切り込みを入れてラップに挟み、肉たたきや包丁の背などを使って薄く伸ばす。塩・こしょうをふり、下味をつける。

  5. 5

    ささ身の片面に薄力粉をまぶし、真ん中に2のファルスを適量のせ、二つ折りにして包む。表面全体に薄力粉、卵液、パン粉を順に付ける。

  6. 6

    フライパンに太白ごま油を入れて熱し、温度が上がる前に5を入れ、揚げ焼きにする。衣に焼き色がついたら取り出し、油を切る。

  7. 7

    半分にカットして皿に盛り、ソースを掛ける。お好みで、ハーブを束ねてタコ糸などで縛ったブーケガルニを添える。

撮影/川上輝明  取材・文/江原裕子

愛用道具
使う分だけ、肉や魚のミンチが自宅で作れる「イタリア製 ミンサー」(貝印)。ハンドル式で、細目と粗目のアタッチメントを使い分けることにより、好みの粗さに挽くことができます。野菜や豆などもミンチできるほか、付属のフランクフルトサイズ用ノズルを使えばソーセージ作りにも活躍します。

関連商品
調理に使用した「Nabeno-Sauce(ナベノソース)」は、ナベノ-イズムが開発したオリジナルソース。渡辺シェフ自身が素材から厳選し、青森県産りんご、淡路島産玉ねぎ、香味野菜などを、ワイン、日本酒、しょうゆなどと合せて、特別なレシピでじっくり煮込みました。肉や魚はもちろん、野菜などとも相性抜群で、和洋中さまざまな料理に合う万能調味料です。
購入はこちらから

シェフ紹介
渡辺雄一郎(ワタナベ ユウイチロウ)さん
1967年、千葉県生まれ。1988年、大阪あべの辻調理師専門学校を卒業後、同フランス校に進学。二ツ星クールシュヴェル「ル・シャビシュー」にて研修。リヨン「ラ・テラス」、東京「ル・マエストロ・ポール・ボキューズ」を経て、「タイユヴァン・ロブション」に入店。以降、ロブション・グループ各店で腕を磨き、2004年に東京・恵比寿「ジョエル・ロブション」のエグゼクティブシェフに就任。2016年、東京・浅草駒形に「Nabeno-Ism(ナベノ-イズム)」をオープン。

SHOP INFORMATION
店名: Nabeno-Ism(ナベノ-イズム)
住所: 東京都台東区駒形2-1-17
URL: http://www.nabeno-ism.tokyo/
Tel: 03-5246-4056
営業時間: ランチ12:00~15:00(L.O.13:30)、ディナー18:00~23:00(L.O.21:00)
定休日: 月曜日、不定休あり
エリア: 東京・浅草