
人気店のシェフに3つのレシピを教えてもらう新連載がスタートしました。思い出のレシピ、お店で人気のまかないレシピ、そして旬の食材を使ったレシピの中から、ひと皿ずつ紹介していきます。10月のゲストにお迎えするのは東京のレストランシーンをリードし続ける『アロマフレスカ』の原田慎次シェフ。イタリアンの名店『ヂーノ』にて19歳でスタートさせたキャリアの中から、今回のお題「旬の食材を使ったメニュー」として選んでくれたのは仔羊のパスタ包みです。ハーブやスパイスをまとった仔羊は、パーティシーズンのおもてなしにぴったりです。
銀座『アロマフレスカ』のメインダイニングに立つ原田慎次シェフ。
香りをまとった、贅沢な仔羊
秋の食卓で歓声があがるようなレシピをお願いしますというお題に応えて、原田さんが提案してくださったのは、旬の栗を添えた仔羊。表面を焼き固めた仔羊を、ローズマリー、クミン、粗塩を混ぜ込んだ香り高いパスタ生地でくるんで焼く、という大胆な一品です。「パスタ生地は、材料を混ぜ、手で混ぜてのばすだけ。とても簡単なので、お子さんと一緒に作るのもおすすめです。きれいにのばそうとか、ちゃんと練ろうとしないで、気軽に作ってみてください」(原田さん)焼いた仔羊をパスタ生地で包むだけという一見シンプルなレシピながら、時間をかけて丁寧に焼くことで肉にじわじわと香りや風味が移り、味わい深い一皿に仕上がります。では、原田シェフに作り方を教えて頂きましょう。
仔羊に塩胡椒をしたら、フライパンにラードを熱して、脂をかけながら表面を焼きます。この日のラムはオーストラリア産。「サラダオイルやオリーブオイルなどでも良いですが、動物はやはり同じ動物性の脂で焼いたほうがうまみが増します」。
このあと、仔羊はガスコンロの近くなど温かい場所に置いて休ませておきます。その間に作るのが、もうひとつの主役、パスタ生地。強力粉、水、卵、ローズマリーの葉、オリーブオイルを加えて混ぜ合わせます。
両手のひらを使い、生地そのものの重力をいかしてのばしていきます。
のばした生地にクミンシードをたっぷり敷き詰め、仔羊とローズマリーの枝をのせて、生地で包みます。
生地と生地の継ぎ目は、指でつまんでキュッと押すようになじませながら留めます。
仔羊を焼いたフライパンを洗わずに残しておき、同じフライパンで生地の表面を焼き固めます。岩塩の濃い塩分で生地がだれやすくなるのを防ぐためです。
栗と一緒に耐熱皿にのせ、230度のオーブンで焼くこと約15〜20分。そして、火から下ろしてさらに約15〜20分、余熱の力で肉をしっとりやわらかくします。「肉の大きさや生地の厚みによって、加熱時間は調整してくてみてください」。両手で生地を割ったら、ご覧の通り!いい香りとともに、おいしそうに焼けた仔羊が。栗は、引き続きオーブンに入れたまま20分焼きます。
原田シェフがずっと愛用しているという貝印の包丁。刃先が丸く短くなるほど使い込まれています。
ロゼ色の美しい断面が映えるように盛りつけます。色よく焼けた栗を散らし、パスタ生地も添えて華やかにします。「お客様にはパスタ生地はかなり塩辛いですよとお伝えするのですが、それでも食べてみたいという方がほとんどです(笑)。ローズマリーとクミンが効いていて、これはこれですっごく美味しいです」
仔羊を焼くのに使用したのは、人気のo.e.c.シリーズから、鉄製のフライパン。2.3ミリの厚めの底で、ステーキやブロック肉をおいしく焼き上げます。取っ手は耐熱性があるので、そのままオーブンに入れて調理ができます。
撮影/中村香奈子