料理のプロフェッショナルにレシピの極意を教わる連載。料理教室を主宰する「料理の先生」による、リクエスト率ナンバーワンの人気レシピを紹介します。おいしさはもちろん、生徒たちに愛される理由が満載のメニューに隠れた秘密を探ります。
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大人も子どもも喜ぶ夏のおやつを手作り
パイにタルト、スコーン、マフィン、パウンドケーキ、クッキーなど、素朴で食べ飽きることのないベイク。材料をざっと混ぜて焼いたらホームメイド感あふれるおやつに、フルーツやナッツをたっぷり入れれば日持ちがする気の利いた手土産に、上質な小麦粉やバターを使って丁寧に焼き上げれば風味豊かなプロの味にと、作り方次第でバラエティ豊かな表情のお菓子に仕上げることができます。
東京・世田谷でアメリカンベーキング教室「just baked!(ジャスト・ベイクド!)」を主宰する中村紫乃さんも、ベイクの魅力を伝える料理家のひとり。元フランス菓子職人という経歴を持つ中村さんは、従来の素朴さや作りやすさはそのままに、より洗練された味とルックスにアップグレードしたアメリカ菓子を提案し続けています。
今回、夏を盛り上げてくれるお菓子として披露してくれたのが、「BAKED ALASKA(ベイクド・アラスカ)」。こちらは、ケーキ生地の上にアイスクリームをのせてメレンゲで包み、表面をバーナーで焼き色をつけたデザートです。アイスはいろいろなフレーバーが揃う市販品を利用し、生地は手作り。味と見た目の良さはキープしながら、手をかけなくてもそれが変わらない部分は上手に省く。家庭での再現性を重視した、中村さんならではの工夫が光るレシピになっています。
「底に敷くケーキ生地は、クリームチーズベースのパウンドケーキ。チーズが香り、これだけで食べても、十分楽しめる完成度になっていると思います。生地を焼く時間がなければ、市販のスポンジ生地や丸いクッキーなどで代用できますし、アイスは1人前サイズのカップアイスを使えば、そのまま取り出して生地にのせるだけ。生徒さんには、“それほど手間がかかっていないのに、レストランのデザートのように見えるのがうれしい”と、喜ばれました」
さらに、「クリームチーズのパウンドケーキがおいしすぎて、それだけを思う存分食べたい」「アイスのフレーバーを変えれば、いろいろな味が楽しめる」「大人数で集まるときは、大きめのアイスにデコレーションしてアイスケーキにしても素敵」といった、ワクワクが止まらないコメントが多数寄せられたそうです。
さて、極寒のアラスカをアイスに見立てて名づけられたという「ベイクド・アラスカ」ですが、アイスが恋しい季節に作るからこその気温と湿度が気になるところ。でも、事前に工程をきちんと把握しておき、手早く段取りよく作業すれば、途中でアイスが溶けてしまうような事態は避けられるといいます。
「最初にケーキ生地にアイスを重ねたパーツを作り、冷凍庫でしっかり凍らせておく。取り出すのは、イタリアンメレンゲを塗る直前に。アイスと生地は、イタリアンメレンゲで完全に覆い隠せば、バーナーの火で溶けることもありません。また、盛り付け用の皿はそばに置いておき、完成品をさっと移してすぐにサーブできるようにするのも、ちょっとしたポイントです」
大容量のアイスを使うときは、アイススクープやディッシャーなどですくってドーム状の1人分に整え、もう一度冷凍庫で冷やし固めてから使うこと。また、メレンゲをバーナーで焦がすときは、バットやトレイの上で作業すること。皿にのせてからバーナーを使う場合は、火が皿に直接当たらないように注意しましょう。
材料2人分
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お好みのカップアイスクリーム(1人用サイズ・75~110ml)
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2個
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アングレーズソース
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適量
クリームチーズパウンドケーキ
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バター(食塩不使用)
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40g
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クリームチーズ
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55g
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グラニュー糖
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70g
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粗塩
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0.75g (小さじ1/8)
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全卵
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55g
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薄力粉
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70g
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ベーキングパウダー
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1.5g (小さじ3/8)
イタリアンメレンゲ
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卵白
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40g
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グラニュー糖
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50g
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水
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30g
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粗塩
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ごく少量
アングレーズソース(作りやすい分量)
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牛乳
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80g
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バニラビーンズ(種とさや)
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適量
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卵黄
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1個分
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グラニュー糖
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15g
手順
下準備
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1
ケーキ生地を焼くパウンド型(16×10×高さ6cm)に紙を敷いておく。もしくは、マフィン型にベーキングカップを敷いたものでも代用可。
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2
オーブンを180℃に予熱しておく。
作り方
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1
クリームチーズパウンドケーキを作る。常温に戻したバターとクリームチーズ、グラニュー糖、粗塩をボウルに入れ、ハンドミキサーの高速でダマが残らないよう混ぜたら、全卵を加えてさらに混ぜる。
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2
薄力粉、ベーキングパウダーを粉ふるいや網などでふるいながら加え、ハンドミキサーの低速もしくはゴムベラで、粉っぽさがなくなるまで混ぜ合わせる。用意した型に流し入れ、180℃のオーブンで40~45分焼く。
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3
焼いた生地を冷ましたら、8mm程度の厚さにスライスする。アイスのサイズに合わせ、丸い型で抜く。
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4
アイスをカップから取り出し、3の上にのせ、冷凍庫に入れておく。
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5
アングレーズソースを作る。鍋に牛乳とバニラビーンズを入れて火にかけ、沸かす。ボウルに卵黄、グラニュー糖を入れてホイッパーですり混ぜたら、沸騰した牛乳を加えて混ぜる。ボウルの中身をすべて鍋に戻して弱火にかけ、ゴムベラで絶えず混ぜながら、とろみがつくまで炊く。網で濾しながらボウルにあけ、氷水を当てて冷やす。
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6
イタリアンメレンゲを作る。鍋に水とグラニュー糖を入れて火にかけ、117~120℃に煮詰める。ボウルに卵白と粗塩を入れ、煮詰めたシロップを熱いまま少しずつ加えながら、ハンドミキサーで角が立つくらいまで泡立てる。
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7
4を冷凍庫から出し、全体を覆い隠すようにスプーンの背でイタリアンメレンゲを塗る。バーナーで全面に焦げ色をつけたら皿に移し、アングレーズソースを添える。
撮影/大木慎太郎 スタイリング/小坂桂 取材・文/江原裕子
PROFILE
中村紫乃(ナカムラ シノ)さん
東京都出身。東京都港区に三代続くフランス料理店に生まれ、大学卒業後に一般企業勤務を経てお菓子の道へ。「ル・コルドン・ブルー東京」にてフランス菓子を学び、「ダロワイヨ・ジャポン」「パティスリー・マディ代官山」での修業時代にはコンクール入賞も経験。その後、“毎日でも食べたい” アメリカ菓子に出合い、2008年よりアメリカ菓子教室「just baked!」を主宰。今のアメリカの味も伝えるべく、定期的に渡米して各地のベーカリーを巡り、訪れた店は100軒以上。
LESSON INFORMATION
教室名:just baked!(ジャスト・ベイクド!)
身近な材料と季節のフルーツを使った、アメリカンベイクの教室。レギュラーレッスンは基本を学べる「本科」とアドバンスの「研究科」の2コース。季節の行事などをテーマにした単発レッスンや体験レッスンも不定期で開催。今のアメリカ、ベーカリーのエッセンスも加えたお菓子とテーブルセッティングが、お菓子作り初心者からフランス菓子経験者、アメリカ好きまで、幅広い層の生徒たちに支持されている。
エリア:東京都世田谷区
URL: http://justbaked2008.wixsite.com/justbaked