気温が少しずつ下がり、爽やかな空気に包まれる秋。夏の間はお休みしていたオーブンの出番です。今月は、旬のフルーツをたっぷり使ったベイクをお届けします。
コーヒータイムのベストフレンド! 毎日食べても飽きないベイク
スコーンやマフィン、パウンドケーキ、クッキー、タルトなど、オーブンで焼きっぱなしのお菓子「ベイク」。素朴だけどしみじみとおいしいベイクは、ここ数年でお菓子の人気ジャンルとして確立。専門店も続々と登場しています。
そんなベイクブームの先駆けとなったのが、東京・初台の「SUNDAY BAKE SHOP」。週3日だけオープンし、開店前から行列ができるおかし屋として、その人気と知名度は全国区。今月は、こちらのお店を営む嶋崎かづこさんに、店頭に出回り始めたりんごを使った秘伝の「トレイベイク」の作り方を教えてもらいましょう。
「トレイベイク」とは、イギリスで親しまれている天板や四角い型を使って焼いたお菓子のこと。焼き時間が短く、使用する道具も少ないことから、イギリスの家庭でも手軽に作られています。嶋崎さん直伝の「りんごのトレイベイク」は、サクサクした全粒粉のクッキーの生地に、ブラウンシュガーでやさしいコクを与えてカルダモンの風味を加えたケーキ生地、さらにフラップジャックを重ねた3つの層からなり、ザクザクでどっしりとした食べ応え。さまざまな食感や味わいを楽しめて、一切れのなかにいろんなおいしさがつまっています。
好みの食感を極める
底に敷くクッキー生地は、フードプロセッサー、手、カードと3つの道具を使って作ります。まずはフードプロセッサーで材料をざっくり混ぜ合わせ、バターが軽く全体に行き渡って大きなダマが所々にできた程度のところでスイッチを止めます。その生地を指でバターを粉類にもみ込むように混ぜたら、仕上げにカードで生地を切っては重ねるを繰り返し、食べたときのサクサク感を出します。
ケーキ生地は、卵と生地を複数回に分けて順番に加え混ぜ、卵をきちんと乳化させながらひとかたまりにつなげていきます。生地作りのほとんどの工程を、ホイッパーで行うのがSunday Bake Shop流。「ホイッパーを使うと生地が混ぜやすく、またよく混ぜることで生地がつながって焼いたときに目のつまった私好みの食感になるので、いつもこのやり方にしています。逆に、ヘラなどでサクサク混ぜると生地のつながりがやわらかくなり、日本のケーキのようなやさしい食感になりますよ」
ホイッパーで混ぜているケーキ生地につやが出てきたらゴムベラに持ち替え、底からすくうように混ぜて生地を整えましょう。仕上げのこのひと手間が、理想の食感を生み出します。
表面に散らした「フラップジャック」もイギリスではおなじみのお菓子。オートミール、バター、シロップで作る簡単焼き菓子で、家庭の手作りおやつの定番のひとつです。オートミールは粒の大きいジャンボオーツを使うと、さらにしっかりした歯ごたえに。また、りんごは紅玉やあかねなど、酸味のあるものがおすすめ。
ベイクは一見シンプルですが、生地の混ぜ方や複数の技法の組み合わせ、素材のフルーツやスパイス使いで、個性豊かで魅力あふれるお菓子になります。巧みな素材合わせとテクニックが満載のこちらのレシピで、ベイクの奥深い世界に触れてみてください。