ピエール・エルメの「パン・デピス」

もうすぐ待ちに待ったクリスマス。今月は、この時期に作っていただきたいフランスの伝統的なクリスマス菓子を、フランス生まれの世界的パティシエのレシピでご紹介します。

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フランス伝統のクリスマス菓子「パン・デピス」

クリスマスに欠かせない食べ物といえばケーキ。日本では華やかにデコレーションされたクリスマスケーキが一般的ですが、ドイツの「シュトレン」をはじめ、イタリアの「パネトーネ」、イギリスの「クリスマスプディング」など、世界にはその土地ならではのケーキやお菓子があります。今月は、フランスの伝統的なクリスマス菓子「パン・デピス」を、パティスリー界のピカソと称されるフランス人パティシエでショコラティエのピエール・エルメさんに習います。

フランスでは12月になると、パティスリーやベーカリーのほか、マルシェなどにも並ぶ「パン・デピス」。“スパイスのパン”という意味がある伝統菓子で、パンのようなものからケーキに近いものまで、各地でさまざまなパン・デピスが作られています。

粉に数種類のスパイス、はちみつ、牛乳を混ぜて作るのが一般的ですが、今回は伝統を重んじながら常に新しい発想で革新的なお菓子を生み続けるピエール・エルメ・パリらしいアレンジレシピを特別に公開してくれました。

伝統の味を極めたモダンなパン・デピス

5種類のスパイスをたっぷり入れて作るパン・デピス。そのうちスターアニスは、温めた牛乳に浸して香りを移します。時間があるときは、冷たい牛乳とスターアニスを密封容器やジッパー付ポリ袋に入れ、冷蔵庫で一晩置いてもよいでしょう。

粉類やスパイス以外のはちみつ、グルコースシロップ、バター、牛乳は、温めてから混ぜるのがポイント。こうすることで生地がゆるくなり、焼成前の成形の際にのばしやすくなり、作業性が高まります。

生地は、しっかりとかたさのあるゴムベラを使い、大きめのボウルで混ぜると混ぜやすいそう。均一に混ぜることを心がければ、難しいテクニックは要りません。卵とバターを加えるときは、きちんと乳化するように回数を分けて混ぜましょう。

できた生地を、パレットナイフを使って均一な厚さの正方形にのばしていきます。この作業の前に、少量の生地を調整用として別にしておき、正方形に整えたときにできた穴や生地が足りない部分に使うと、上手に作業できます。

生地を焼くときは、個々のオーブンで焼き加減が変わるため、様子を見ながら焼成時間を調整しましょう。焼いた生地はマーマレードを塗って切り分け、5層になるように重ねていきます。また、マーマレードはお好みのコンフィチュールに変えてもおいしいそうですが、水分の多いものは避けてください。

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スパイス香るフランスの伝統クリスマス菓子、「パン・デピス」。フランスでは素朴な焼き菓子として知られていますが、今回はピエール・エルメ・パリが伝統を尊重しつつもチャレンジ精神を発揮し、オレンジを主役に据えたアレンジで仕上げました。

2018年12月3日

レシピ作成
ピエール・エルメ・パリ
調理時間
90分 ※内準備時間30分

材料約14×5.5cm 2台分

ライ麦粉(セーグル)
60g
強力粉(カメリア)
20g
コーンスターチ
11g
ベーキングパウダー
4.8g
カソナード
10g
1.2g
はちみつ
90g
グルコースシロップ(水あめ)
30g
シナモン(パウダー)
2.4g
ジンジャー(パウダー)
2.4g
カルダモン(パウダー)
1.2g
クローブ(パウダー)
0.27g
スターアニス
1g
牛乳
40g
全卵
50g
バター
35g
オレンジセミコンフィ
90g
オレンジマーマレード 
140g

グラサージュ・ショコラノワール(作りやすい分量)

コーティング用チョコレート(ヴァローナ社のパータグラッセノワール)
400g
ブラックチョコレート(ヴァローナ社のベルチュールアラグアニ・カカオ分72%)
160g
ぶどうの種油(サラダ油)     
40g

手順

下準備

  1. 1

    軽く温めた牛乳にスターアニスを入れ、そのまま30分ほど置いて香りを移しておく。

  2. 2

    ライ麦粉、強力粉、コーンスターチ、ベーキングパウダーを合わせてふるっておく。

  3. 3

    オレンジセミコンフィを3mm角に刻んでおく。

  4. 4

    天板に32×32cmにカットしたオーブンシートを敷いておく。

作り方

  1. 1

    はちみつとグルコースを合わせ、電子レンジで温めて少しゆるくする。

  2. 2

    ボウルにふるった粉類、カソナード、塩を入れ、1を加えてゴムベラで混ぜる。ある程度混ざったら溶いた全卵の半量を加えて混ぜ、シナモン、ジンジャー、カルダモン、クローブを加えてさらに混ぜ合わせる。

  3. 3

    残りの卵を加え、しっかりと混ぜる。スターアニスを取り除いた牛乳を電子レンジで少し温めてから、3回くらいに分けて加えながら混ぜる。

  4. 4

    バターを電子レンジで温めてクリーム状にし、3に加えて混ぜる。そこに刻んだオレンジコンフィを加えて混ぜ合わせたら、生地の完成。

  5. 5

    オーブンシートを敷いた天板に生地をのせ、パレットナイフで均一の厚さにのばしながら、28×28cmの正方形に成形する。

  6. 6

    180℃に予熱しておいたオーブンで、13分焼く。焼き上がった生地はオーブンから取り出し、完全に冷ます。

  7. 7

    6を作業台に置き、ナイフを使って右端から6cmのところで切り離し、28×22cm(A)と28×6cm(B)の2つの長方形に切り分ける。Aの長方形の表面にオレンジマーマレードを均一に塗る。

  8. 8

    マーマレードを塗った大きい方の生地の長辺(28cm)が半分の長さ(14cm)になるように2等分し、できた2枚の生地を上下に重ねる。これで2層の生地の14cm×22cmの長方形になる。

  9. 9

    同様にして、長辺(22cm)が半分の長さ(11cm)になるように2等分し、上下に重ねて14×11cmの4層の生地にする。

  10. 10

    7のBの長方形を半分の長さ(14cm)になるようにカットし、9の上面に並べて置き、5層のケーキ生地にする。Bの2枚の生地の境目をガイドに、5層の生地を2等分し、約14×5.5cmの2台分の生地とする。側面の凹凸をナイフで整えたら、冷蔵庫で冷やし固める。

  11. 11

    グラサージュ・ショコラノワールを作る。すべての材料を耐熱ボウルなどに入れ、電子レンジで加熱して溶かし、均一になるまで混ぜる。10をバットなどに入れた網にのせ、上からグラサージュ・ショコラを流しかける。チョコレートが固まる前に、パレットナイフを使ってオーブンシートの上に移す。

撮影/大木慎太郎  取材・文/江原裕子

料理家紹介
ピエール・エルメさん
パティシエ・ショコラティエ。1961年、4代続くフランス・アルザスのパティシエの家系に生まれる。14歳でガストン・ルノートル氏に師事し、そのキャリアをスタート。1986年に「フォション」のシェフパティシエに就任。1998年、世界第1号店となる「ピエール・エルメ・パリ」を東京・赤坂のホテルニューオータニ内に初出店。2001年にはフランスの第1号店をパリ6区にオープン。2007年にレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエ、2016年に世界のベストレストラン 50アカデミー「世界の最優秀パティシエ賞」を受賞するなど、数々の受賞歴を持つ。国際的なプロ菓子職人協会「ルレ・デセール」の副会長としても活躍。

SHOP INFORMATION
「ピエール・エルメ・パリ 青山」
住所: 東京都渋谷区神宮前5-51-8 ラ・ポルト青山 1・2F
URL: https://www.pierreherme.co.jp/
電話番号: 03-5485-7766
営業時間:11:00~20:00(イートイン1F/L.O.19:30、2F/L.O.19:00)、2F/土のみ11:30~
定休日: 不定休


撮影/三嶋義秀

著書紹介
『ピエール・エルメが教える焼き菓子ブック』(旭屋出版MOOK)
21世紀のパティスリー界を先導する第一人者、ピエール・エルメさんの焼き菓子を、家庭で再現できるレシピ本。写真を多用したわかりやすい解説で、初心者でもエルメさんのおいしさに挑戦できます。サブレ、パウンドケーキ、ダックワーズ、フィナンシエなどの伝統的な味に加え、バラのフレーバーとフランボワーズを組み合わせた「マドレーヌ イスパハン」、塩気のあるブラックオリーブがアクセントの「サブレ ア ロリーヴ ノワール」など、ピエール・エルメらしいレシピも多数掲載。