料理教室を主宰する人気料理家の「とっておきの一皿」をご紹介する連載。教室でも生徒さんから大好評だったオリジナルレシピや、自身にとっても思い入れの深い一品をお届けします。毎日の食卓からおもてなしにまで活躍する、季節感やトレンドを感じられる自慢の味をぜひ試してみてください。
魚の骨からとった出汁がほっとする味わいの家庭料理。
子供向けの料理教室「こびとの台所」を主宰するうえだのりこさんが教えてくれたのは、思い出の味「ギョハン(魚飯)」。魚の骨からとった出汁で魚の身や野菜を一緒に煮た汁物で、うえださんにとっては懐かしの味わいなんだそう。
「生まれは愛媛県の八幡浜市というところで、海の幸にも山の幸にも恵まれた立地でした。魚は市場で買ったり、おすそ分けでいただいたりと肉より魚が中心の食卓でした。我が家では、夏は冷汁、冬はギョハンというくらい、定番の味。自宅以外では食べたことがなかったから、郷土料理というわけではなく、我が家の味ですね。詳しい由来はわかりませんが、冷蔵庫が普及していなかった時代に食べきれない魚を、あれこれ料理して食べていたときの名残だと思います」
美味しく作るポイントはありますか?
「口当たりがよくなるように、魚の身には骨が残らないよう、丁寧に取ることくらいでしょうか。魚を丸ごと焼いて、身をはずし、取り除いた骨と頭を昆布出汁で煮出したしょうゆ味の魚の澄まし汁、という簡単な家庭の味で、おもてなしの料理ではありませんが、しみじみした味わいです。魚の骨からとった出汁がやさしい味わいで、そのままおかずとして食べることもあれば、ぶっかけ飯にして食べることもあります。魚は白身魚なら何でも相性がよく、天ぷらや練り物のじゃこ天(地魚のすり身を揚げた愛媛の名産品)を加えても美味しいです。野菜もほうれん草やきくらげなどお好みで入れてかまいませんが、ごぼうからはいい味が出るのでぜひ入れてほしいですね」