蛤と春野菜のナージュ

人気店のシェフに2つのレシピを教えてもらう連載企画。旬の食材を使ったレシピと、プロの技のレシピをご紹介していきます。3月は、東京ミッドタウン日比谷にあるフレンチ『モルソー』のオーナーシェフ・秋元さくらさん。今回は、旬の食材を使ったレシピ「蛤と春野菜のナージュ」を教えていただきました。

日増しに暖かくなり、春の息吹が立ち込めてくる3月。春の野菜や食材がお目見えし、春の訪れを告げてくれます。今回、秋元さくらシェフが選んだ主役の食材は、蛤。
「千葉県からいい蛤が届くんですよ。蛤はそれだけで十分いい出汁が出ますが、これに合わせるなら、スープに甘みがプラスされるものを使いたかったんです。春キャベツやスナップエンドウ、たらの芽など、季節が変わるタイミングで出る春の野菜がぴったりでした。それぞれの素材の良さを引き立て合う組み合わせです。蛤がない季節は、あさりやムール貝でもいいですよ」

調理工程はいたってシンプルですが、だからこそ丁寧な下ごしらえが味を左右します。
「蛤はしっかり砂抜きをすること、火入れにも細心の注意をはらうことが必要です。普通は蓋をして蒸し煮をし、自然に口が開くまで待ちますが、それより前に口を開かせてやるのがポイントです。こうすることで身はふっくらジューシー、旨味も逃げません。野菜も塩ゆでして水にさらすことで、色鮮やかにしまった味わいに仕上がります。野菜をおいしく提供してくれるレストランって、愛を感じられるなと思っているので、私自身もひとつひとつの工程を大切にしています」

蛤の砂抜きをする。ボウルの上にざるを重ね、洗った蛤を入れて、塩分濃度3%の塩水をひたひたになるまで注ぎ、アルミ箔などを被せて30分置く。「蛤はあさりと違って貝の中に砂が入っていることが多いので、砂抜きをしっかりすることが大切です。ボウルとざるで二重にしておくと、吐き出した砂が下に落ちるので、再び吸う心配がありません。ときどきボウルごと揺すってあげると、よく砂を吐いてくれます」

野菜と蛤に油がまわったら、水と白ワインを注いで一煮立ちさせる。

蛤の口を開かせる。「蛤は貝柱の力が強いので、自然に口が開くまで待っていると、身が縮んで旨味が抜けてしまいます。トングや包丁を使って、口を開けてあげましょう。あさりは口が開かないものは古いと言われますが、蛤はそんな心配はないので大丈夫です」

蛤の口をすべて開けたら、いったん取り出す。

塩ゆでした野菜を鍋に加えて温める。スープの味を確認して、薄ければ少し煮詰めるとよい。

器にバランスよく盛り付ける。蛤は身がついていない方の殻はとる。

春の訪れを感じさせる麗しい一皿です。丁寧に火入れしたからこそ、ぷっくりと膨らみ旨味を閉じ込めた蛤や柔らかな苦味のたらの芽など、素材そのものの風味を存分に堪能できます。調味料をあれこれ使っていないのに、驚くほど滋味深くやさしい味わいのスープも、一気に飲み干したくなる軽やな味わいです。

2021年03月16日

レシピ作成
秋元さくらさん
調理時間
15分 ※内準備時間0分

材料2人分

調理時間

15分 *蛤を砂抜きする時間は除く

材料

500g
にんにく
1かけ
白ワイン
100ml
200ml
スナップエンドウ
6本
春キャベツ
1/8個
たらの芽
4本
適量
エクストラバージンオリーブ油
適量

手順

下準備

  1. 1

    蛤は3%の塩水に入れ、砂抜きする。

作り方

  1. 1

    スナップエンドウは筋とヘタをとる。たらの芽は、はかまの部分をはずす。キャベツは一口大に切る。スナップエンドウとたらの芽は、多めの塩を加えた湯でさっとゆで、氷水にとって冷やし、ざるに上げる。

  2. 2

    鍋に潰したにんにくとオリーブ油を入れて火にかけ、香りが出たら砂抜きした蛤を加える。全体を混ぜて油がまわったら、キャベツを入れて軽く炒める。白ワインと水を加えて一煮立ちさせる。蛤の口は、トングなどを使って開かせ、いったん取り出す。

  3. 3

    2にスナップエンドウとたらの芽を加えて温める。

  4. 4

    器に、3の野菜と蛤を盛り付ける。

撮影/田尻陽子 取材・文/岡井美絹子

「モルソー」秋元さくらさん
6年間、日本航空の客室乗務員として働いたのち、調理師学校へ。元々はイタリアのマンマの味に憧れがあったが、料理を学ぶうちにフランスの豊かな郷土の魅力や、高い調理技術や料理の美しさに惹かれてフレンチの道へ。卒業後は、白金の「オー・ギャマン・ド・トキオ」や白金台の「モレスク」などで腕を磨く。2009年にソムリエである夫とともに、目黒にフレンチレストラン「モルソー」をオープン。店名は、フランス語で“かけら”の意味。お客さまの日常のひとかけらになれたら、という思いが込められている。2018年、東京ミッドタウンの開業と同時に移転。料理番組を中心にメディアでも活躍中。

SHOP INFORMATION
店名:モルソー
住所:東京都千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷2F
Tel:03-6550-8761
営業時間:11:00~15:00(14:00LO)、18:00~23:00(22:00LO)
定休日:なし(商業施設に準ずる)
HP:http://morceau.pinoko.jp/

※3/26(金)から4/22(木)まで、伊勢丹新宿店B1F「キッチンステージ」で秋元シェフのメニューを提供予定。ご提供内容は3/26(金)に更新される下記HPよりご確認ください。
HP:https://www.kai-group.com/fun/kitchen_stage/