自然の恵み–カカオと鬼灯

人気店のシェフに3つのレシピを教えてもらう連載企画。旬の食材を使ったレシピ、思い出のレシピ、お店で人気のまかないレシピの3品をご紹介していきます。3月は、銀座にあるフレンチガストロノミーレストラン『Thierry Marx(ティエリーマルクス)』のシェフパティシエ江藤英樹さん。今回は、思い出のレシピ「自然の恵み–カカオと鬼灯」を教えていただきました。

思い出のレシピということで、江藤シェフが紹介してくれるのが、人との思い出が紡いだ心に残る一皿です。
「主役に使った“カミーノベルデ”は、僕が以前から食材を巡る旅をし、食材にフォーカスして活動している中で、ジャーナリストの方にご紹介いただいたのがこのエクアドルのクーベルチュール。エクアドルにのみ存在するフレーバーカカオの希少品種であるナショナル種です。作っているのは、現地在住の高橋力さんという日本人で、ご本人も大変魅力的な人柄なんですが、もちろんチョコレートも本当に美味しくて、華やかで酸味と深みのある味わいが秀逸です。ただ一般には入手しにくいと思うので、その場合はカカオ70%程度のクーベルチュールチョコで代用します。ヴァローナ社のものだと、グアナラがおすすめです。チョコレートはとにかく乳化をしっかりさせることが美味しさを左右するポイントです。クイックブレンダーなどを活用すれば簡単です」

この美味しいチョコレートに合わせるのは、江藤シェフも絶賛する、北海道日高町の鬼灯(ほおずき)。
「この鬼灯は去年の夏に出会ったのですが、数矢昭市さん、80歳が作っているんです。が、世の中に流通していなかったんですよ。鬼灯って食べられることを知らない人もいるんですよね。こんなに美味しい鬼灯があることを知ってもらいたくて今回はコンフィチュールにしてみました。カミーノベルデに負けない味の濃さと深さがあって、一緒に食べると新しい美味しさに出合えると思います。

生産者の方の思いやこだわりをしっかり汲み取り、生産者と産物への感謝の気持ちと尊敬、食材の背景にある自然まで感じていただけるようなデセールを作っていきたいと思っています」

ソルベショコラを作る。チョコレートを加えたらクイックブレンダーでよく乳化させるのがコツ。

クランブルショコラを作る。全ての材料を合わせて卓上ミキサーで混ぜたら取り出し、ゴムベラでほぐすようにして混ぜて細かくし、オーブン用シートを敷いた天板に広げる。

ビスキュイショコラを作る。全卵は湯せんにかけて人肌程度に温めると、卵黄の表面張力が弱まって泡立ちやすくなるが卵のタンパク質が固まってしまわないように、途中で湯せんからはずすこと。

写真のように、羽で生地をすくうと、リボン状になれば完成。

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サックサクの小気味良い食感のチュイールショコラ、シルクのようななめらかさのクレムーショコラ、口の中で儚く消えていくソルベショコラなど、多彩な食感のショコラを一皿に詰め込んだショコラ好きにはたまらないデセール。鮮烈なみずみずしさと甘酸っぱさが印象的な鬼灯のコンフィチュールが、ショコラの魅力を底上げします。

2020年03月31日

レシピ作成
江藤英樹さん
調理時間
60分 ※内準備時間0分

材料約10皿

ソルベショコラ

160g
グラニュー糖
35g
水あめ
10g
カカオパウダー
7.5g
カミーノベルデ
50g

クランブルショコラ

無塩バター
250g
粉糖
250g
アーモンドパウダー
250g
薄力粉
202.5g
カカオパウダー
47.5g

ビスキュイショコラ

全卵
225g
グラニュー糖
150g
薄力粉
68g
カカオパウダー
50g
アーモンドパウダー
50g
無塩バター
38g

チュイールショコラ

グラニュー糖
200g
卵白
125g
無塩バター
75g
薄力粉
100g
カカオパウダー
45g
カカオニブ
適量

クレムーショコラ

30g
グラニュー糖
45g
卵黄
27.5g
牛乳
76g
生クリーム35%
152g
ショコラ(撮影ではカミーノベルデを使用)
100g

コンフィチュールフィザリス

鬼灯
900g
グラニュー糖
300g

トッピング

金箔
適量
コポーショコラ
適量
カカオニブ
適量
ノワゼット
適量

手順

  1. 1

    ソルベショコラを作る。水、グラニュー糖、水あめを鍋に入れ、泡立て器で混ぜながら火にかける。沸いたらカカオパウダーを入れてもう一度沸かす。水あめが溶ければよい。

  2. 2

    1をボウルに入れ、カミーノベルデを加えてクイックブレンダーにかける。パコビーカー(冷凍粉砕調理器・パコジェットの専用ビーカー。なければ手持ちの容器で代用)に入れて冷凍する。

  3. 3

    クランブルショコラを作る。全ての材料をボウルに入れて卓上ミキサー(なければ泡立て器)ですり混ぜる。全体が混ざったら、卓上ミキサーから取り出してゴムベラで混ぜ、オーブン用シートを敷いた天板に広げる。165度に予熱したオーブンで約15分焼く。焼き上がったら網にのせ、粗熱をとる。

  4. 4

    ビスキュイショコラを作る。粉類は全て合わせてふるっておき、バターは温めて溶かしバターにする。

  5. 5

    ボウルに全卵とグラニュー糖を入れ、湯せんにかけて泡立て器で混ぜながら人肌に温める。温まったら卓上ミキサー(なければハンドミキサー)で泡立てる。

  6. 6

    5の生地がすくうとリボン状になったら、4の粉を混ぜ、ゴムベラでさっくり混ぜ合わせる。最後に溶かしバターを加えて混ぜ合わせ、鉄板にのせたオーブン用シートを敷いた型に流し入れる。

  7. 7

    180度に予熱したオーブンに6を入れ、約20分焼く。

  8. 8

    チュイールショコラを作る。ボウルに卵白とグラニュー糖を入れて泡立て器で混ぜ、溶かしバターを加える。

  9. 9

    8にあらかじめふるっておいた薄力粉とカカオパウダーを加え、泡立て器でよく混ぜる。

  10. 10

    天板にオーブン用シートをのせ、9を薄く伸ばし、カカオニブを散らす。170℃に予熱したオーブンで約4分焼く。取り出して熱いうちにシートごと丸めてセルクルで止め、粗熱が取れたらはずす。

  11. 11

    クレムショコラを作る。まず、鍋に水とグラニュー糖を入れて火にかけ、グラニュー糖が溶けたら火からおろす。溶きほぐした卵黄を加えて、なめらかになるまで混ぜ合わせる。

  12. 12

    牛乳と生クリームを温めて11に注いだら、82℃くらいまで温めてショコラを加える。クイックブレンダーで乳化させて容器に入れ、冷蔵庫で冷やす。

  13. 13

    コンフィチュールフィザリスを作る。鍋に鬼灯とグラニュー糖を入れて中火にかける。途中ゴムベラで混ぜながら、水分が少なくなってきたら弱火にして煮詰めていく。全体の加熱時間は約45分が目安。

  14. 14

    皿に、クレムーショコラをのせて中央をスプーンで少しへこませ、クランブルショコラを散らし、へこませたところにソルベショコラをのせる。カットしたビスキュイショコラ、半割りにしたノワゼットを周りに盛り付け、コンフィチュールフィザリスを添える。チュイールショコラ、カカオニブ、金箔をトッピングする。

撮影/菊池陽一郎 取材・文/岡井美絹子

江藤さんがこの日使った道具。左から順に、泡立てや混ぜる作業に使いやすいカーブと深さのSELECT100 ボウル21cm、6種類のアタッチメントが付いたKai House SELECTクイックブレンダーDX、耐熱素材で使い勝手がいいo.e.c. マイティースパチュラ(赤)

『Thierry Marx』シェフパティシエ・江藤英樹さん

辻調グループフランス校卒業、『BEIGE Alain Ducasse TOKYO』、『DOMINIQUE BOUCHET TOKYO』シェフパティシエ、『SUGALABO』シェフパティシエを経て、2016 年 9 月『Thierry Marx』のシェフパティシエに就任。「人を笑顔にしたい」という思いを込めて、日々スイーツと向き合っている。

SHOP INFORMATION

店名:Thierry Marx(ティエリーマルクス)

住所:東京都中央区銀座5-8-1 GINZA PLACE7F

Tel:03-6280-6234

営業時間:17:30~20:30LO(土日祝11:30~14:00LO、18:00~20:30LO)

定休日:無休