人気店のシェフに3つのレシピを教えてもらう連載企画。旬の食材を使ったレシピ、思い出のレシピ、お店で人気のまかないレシピの3品をご紹介していきます。3月は、旬の素材を豪快に料理する広尾の人気ビストロ『ヨシダハウス』の吉田佑真シェフ。今回は、店で人気のまかないレシピ「厚揚げ肉じゃがのマスタード風味」を教えていただきました。なんと、ディジョンマスタードが和風甘辛肉じゃがの味をぐっと引き締めてくれるという、驚愕の事実。でもこれ、本当にごはんが進むレシピです。
和食にもガンガン使える、マスタードは気軽な調味料
独立前に「レストラン キノシタ」でスーシェフだった頃も、吉田シェフはよくスタッフのまかないを作っていたそう。
「まかない作りは、入りたての新人もスーシェフもみんな平等に当番が回ってくるようになっていて、僕も週2回は作っていました。まかないを作るのが結構好きなんです。キノシタのルールは面白くて、ランチから営業がスタートするから、当番は朝一番にキッチンに入って、先にまかないの仕込みをする。つまり、前の日から明日のまかないのことを考えてるんです。まかないだから、野菜や肉や魚の余りを賢く使ったり、あるいは魚の昆布締めで残った昆布を使ったりして、まさに家庭料理みたいな感じ。残ったものをいかにうまく使うかを考えていました。毎回10人分ぐらいなのでそれなりの量もあるから、手間もあまりかからない、火にかけっぱなしの煮込みみたいなものが作りやすい。肉じゃがは、そういう意味でも出番が多かったです」
フレンチのキッチンだと、作るものはソースなど味の濃いものが多く、日に何度も味見をしていると舌が疲れてしまう。そのため、まかないではさっぱりしたもの、あっさりしたものを食べたくなることが多かったそう。そしてもちろん、忙しい中にささっと食べ終わらないといけないため、食べやすいもの。
「意外に肉たっぷりの料理とかは、箸が進まないんです。肉じゃがも、甘辛い味付けで作りつつ、仕上げにマスタードをたっぷり加えました。マスタードの酸味でさっぱりするし、味も締まるんでご飯も進むんです。マスタードって意外になんにでも合うんですよ。揚げ物なんかにもたっぷり乗せたり。まかないの食卓では、みんなでマスタードの大瓶を回してました。あと、肉の代わりに厚揚げ豆腐を多めに入れると、軽くて食べやすくなる。大豆たんぱく質だから身体にもいい。みんなの受けもよかった。だから今でもこれはよく作ってます」
今、ヨシダハウスのまかないは2~3人のスタッフで食べているので、大量の仕込みは必要ないそうです。「余った魚の切り身で漬け丼を作ったり、余り野菜で豚汁を作ったり。うちのまかないって、普段の厨房の反動で和食が多いと思います。あと、やっぱり魚が多めかな」
では、早速作っていきましょう。
牛バラ肉は一口大に切り、塩、こしょうで下味をつけ、強火でしっかり焼き色を付け、白ワインをふる。
玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、厚揚げは一口大に切り、フライパンでざっと炒める。
砂糖、しょうゆ、水を合わせて火にかけ、煮汁を作る。炒めた牛肉を汁ごと入れ、30分あくとりをしながら煮る。
さらに炒めた野菜と厚揚げを加え、弱火で15~20分煮る。